お客人は現代魔王
「それで? 妾を呼び出すなどいったいどういった要件なのじゃ?」
「聞きたいことがあってね」
この日、アストを買い物に行かせたアスカは1人のお客さんを呼んでいた。
「聞きたいこと?」
「ええそうなの。
この世界に来て数年しかたっていない私よりもこの世界について知識のあるあなたに聞きたいの
現代の魔王、女王リリン」
「……」
「はあ……あなたがそこまで言うなんて……何かあったの?」
「……私の子のことよ」
「あなたの子?
……あの『精霊の勇者』と言われたあなたが、まさか自分の子に苦戦するなんてね」
「もう……昔の話はあの子の前ではしないでよね」
「……風の狂戦士」
「もう!」
昔の事を言われて膨れっ面になるアスカ。
ついつい昔のことを思い出してリリンは笑みを溢した。
「それにしても、戦闘狂魔王を倒した1人であるあなたが、まさか息子1人に苦戦するなんてね」
「……別に、あんなことがなかったら、問題なかったんですよ。
ただ……魔力に当てられやすくて、病気がちってだけで……」
「それだけでも充分大変だと思うけどね……で? いったいどんな要件で呼んだのかしら?」
「それは……!? うそ。もう帰ってきたの? 早かったわね」
その言葉と共に窓からシルフィが窓から家の中に戻ってくる。
シルフィはアスカの肩に止まるとぷんぷんっと怒った表情を浮かべていた。
「……あのガキどもぶち殺してくる」
「なにかあったのね。やめなさい」
呆れながら入られたお茶を飲む。
と、そこで何か気になることに気づいた。
「……ねえ、シルフィはどこに出掛けていたの?」
「出掛けていた……というよりは、買い物をしているアストを見守ってもらってたの」
「……アストって、精霊に嫌われているんじゃなかったけ?」
まだ赤ちゃんの時のことを思い出したリリンはその頃からシルフィから拒絶されていたこと知っていた。
だが今のシルフィはどうだ。
あの精霊のシルフィが、拒絶していたアストのために怒っている……。
「いったいどういうこと?」
「そのことについて聞きたいの!」
「し、死精霊が魔力の譲渡に、その魔力が完成に安定していてその上魔力内積量も増大している!?」
「そうなの……」
アスカの話を聞いたリリンはあまりの衝撃に頭が追いつかなかった。
(死精霊が魔力を譲渡? は? しかもその魔力に飲まれることなく安定していて、その分の最大に魔力量も上昇????
何意味わかんないこと言ってるの?)
(わかるわ、わかるわよ〜。
私だって、この数日意味わからなくて頭が痛かったもの……)
ーーでも、その程度じゃないのよ。
リリンは落ち着くためにお茶を飲もうと手に取った時、
ーーゾクッ!?
凄まじいほどの圧。自分を簡単に飲み込んでしまうほどの力。
それが魔力であると気付くにそう時間がかからなかった。
「アスカ! 今すぐ逃げなさい!
この魔力量、間違いなく災害級の!」
「大丈夫よ」
「だいしょうぶって!」
「それよりも、今日はご飯食べていかない?
城ほど豪勢とはいかないけど、おいしいものを作るわ」
「だから、そんな悠長なこと言ってないで!」
慌てるリリン。それとは全く真逆な反応を示すアスカ。
そんな相反する2人の声を引き裂くように家の扉が開かれた。
「ーーただいま」