最近は、元気!
「ありがとうございやした!」
「こんにちは!」
「はいよ、いらっしゃあい!?
ア、アスト!? 出歩いて大丈夫なのか!?」
「はい! 最近妙に身体が軽くなって体調が良いんです!」
あの湖での出来事から数日。
あの日から怖い声が聞こえることも、体調も崩れることもなくなった。
元気になった自分は散歩がてら家の周りを歩き回り、今日は母さんに頼まれて買い物に来ていた。
(今日は客人が来るからちょっと豪勢に、って言ってたけど……本当にお高い肉まで買おうとしている)
それほどの知り合いなのかな?
「……楽しみ」
ーーごそごそ
「あ、そうだった」
そういえば、あの日から家族が1人増えた。
「ほら出ておいで、アルマ」
その声に従ってカバンの中から額に宝石を付けた真っ白な小動物、アルマがひょっこりと顔を出した。
「まだ買い物が終わっていないから、それが終わったら、アルマが食べれる食べ物を探そうね」
そういうとアルマは再びカバンの中に戻っていった。
……あいかわらず人が苦手みたいだ。
アルマが家に暮らすようになってから、とある問題が生まれた。
1つは自分とシルフィの関係が良好になったこと。
いつも怯えて距離を取っていたシルフィだったが、今ではすっかり良くなって自分から肩に飛んできて座って羽休めをしてくれることが増えてきた。
母さんからの話ではシルフィ達風の精霊が自ら人の肩に乗るのは信頼の証と聞いていたので実に嬉しい限りだ。
だが最近は妙にたくさんくっついてくるので嬉しい反面、どうしたらいいのかわからないという感じだ。
2つ目はアルマが自分以外に懐いてくれないことだ。
アルマは何故か母さんにはとても冷たくていつも威嚇をしている。
母さんに対していつもあんな感じなので、きっと自分以外の人に対してもそんな感じなんじゃ……と思いつつ一緒に出掛けてみたが、やっぱりそんな感じだ。
それはきっとあの怖い声の……
「君、もしかして、あの黒い影だったの?」
アルマは顔を出してこない。
返事はなしか……。
こんな感じのアルマだかこそ、もう一つの問題もアルマにある。
このアルマ、どういうわけか、全然と言っていいほどご飯食べない。全然、これっぽっちもだ。
肉や野菜や魚なんかもあげてみたが全く興味を示さない。
穀類とかも効果無しでどうするべきかと悩んでアルマが食べれるものがないかと探しに来たのだ。
「よし! これで買い物は終わり。
次はアルマの食べ物を、」
「おい! びょうま!」
母さんの買い出しが終わったので次はアルマが食べれそうなものを探そうと声をかけると、それを遮るように声が聞こえてきた。
振り返るとそこには茶色髪の男の子とその取り巻き達がいた。
「(えっと……この子は確か)村長さんのところお孫さん」
「コッペだ!
おいびょうま! おまえ、なんでこんなところいるんだ!」
「え?」
「おまえがいるとな! びょうげんきんがひろがるんだよ!」
「ままがいってたんだ! おまえいつもびょうきだって。
だからおまえがびょうげんきんなんだ!」
「さっさとでていけよ!」
「そうだそうだ!」
「はやくでていきなよ!」
「……」
……びょうま? びょうまって……病魔かな?
まあ確かに病気がちだったし、いつも横になっていたからあながち間違ってない……のかな?
首を傾けているとコッ……コ、コップン? くんがこちらに詰め寄ってきた。
「さっさとでていけよ、このびょうげんきんが!」
コップンくんは手で俺を突き飛ばし、荷物に引っ張れるようにしりもちをついた。
自分の転んだ姿を見てコップンくん達は大笑い。
俺は転んだことよりも買い物した荷物やカバンの中にあるアルマのことが気になって急いで中身を確認するとカバンの中からアルマが飛び出してコップンくんの手に噛みついた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」
「「こ、コップさま!!?」」
アルマに噛まれたコップンくんは必死になって振り解こうとする。対するアルマは強く噛み付いて決して離そうとしない。
取り巻き達も手伝おうと試みるがあまりのコップンの暴れ具合に手を出さない。
自分はそれをぼぉーっと眺めていたが、今がここからいなくなるチャンスと思って急いで立ち上がった。
「アルマ!」
自分の呼びかけを聞いたアルマはコップンくんの手を離し、取り巻きを踏んでこちらを飛びついて来た。
そんなアルマはうまくキャッチして抱き抱えると彼等がてんやわんやしているうちに彼等とは反対方向へ駆け出した。
「ああ……せっかく町まで降りてこられたのに……」
「くう!」
「『ざまぁみろ』じゃなーい!!」
もう! こんな予定じゃなかったのに〜!!!




