入学試験 魔法試験2
「何事ですか?」
俺が魔法道具に感心していると教院棟から若い男性が慌てた様子で現れる。
……! あの人、エルフの人だ。
初めてみた……。
「……ブブッタ先生。何があったのか、説明してもらえるかな?」
「え、あ……。そ、その……」
問い詰められる試験官さん。試験官さんは声を詰まらせまともに言葉を発話することができない様子。
そりゃそうか。もし話でもすれば自分が不正で受験生を落としているのがバレるかもしれないんだから。
「……君、そこの受験生……ッ!?」
「はい。なんでしょうか」
「……」
「……?」
「……君は、一体何があったのか答えてくれかな」
「別に大したことは。言われた通りに試験内容をクリアするだけ魔法を放ちました。
ただ……本来届くであろう魔法が突然の突風で遮られたり、的を消し飛ばしたのに目標点数である100点にたどり着かないことには、疑問に思いますが」
「……そうか」
「ああ後、この学園の先生って、合格通知をちらつかせて不合格の女の子を手駒にしようとするんですね。
知りませんでした」
「……ブブッタ先生。今の話、本当ですか?」
「あ……ああ……」
問われたと問いに正直に答え、自分が思ったことを正直に答えるとエルフの先生はすっごい怖い表情を浮かべて、ゴミを見るような視線を試験官さんに向けながら尋ねる。
試験官さんはもう完全に言葉を発することができなくなり、血が完全無くなった真っ青な顔で俯く。
エルフの先生はため息を漏らしながら俺達の方に深く頭を下げた。
「すまなかった。君達才能溢れる受験生を見定めなくてはならない我ら教師が、不正を行い、君達を不合格に追いやってしまっていた」
エルフの先生が深く頭を下げたことで他の受験生の奴らはめんくらって惚ける。
「……もし、君達君達が許すと言うならば、もう一度魔法試験執り行わせていただけないだろうか。
もちろん、君達を正当に評価する教師も用意する。もし受けたくないと言うのであれば、合格でも構わない。
この通りだ!」
エルフの先生の誠実な態度に受験生達は困惑する。
だから代わりに生徒を代表して俺が返事を返す。
「……政党に評価するのならば、俺はそれでも構いません。
ただし、ここで受けた全員の受験生が魔法テストを受けると言うのが条件ですが」
「わかった。すぐに手配させよう。
……ブブッタ先生」
「は、はい!?」
「あなたは、今後、この学園で教師を名乗るのを禁止します。
職員会議であなたの処分決めるので、覚悟しておいてください」
「……わ、わかりました……」
エルフの先生に言い渡された宣言に試験官さんは絶望の表情を浮かべて俯いた。
エルフの先生は平民である俺達の一人一人に頭を下げて謝罪して回る。
そんな先生に好感して受験生ももう一度テストを受けようと行動を始める。
(……俺ってどうなるんだろう……)
的、破壊しちゃったんだけど……。
「君」
「はい」
謝罪を終えたのかエルフ先生が俺に声をかけてきた。
「この度は、本当に申し訳なかった」
「あなたの責任ではないので別に構いませんよ」
「そうか……。……的を破壊したのは、君で間違いないか?」
「ええ……え? 何がまずいことやっちゃいましたか?」
あの的を破壊すれば、あの試験官のズルを簡単にねじ伏せることができると思ってやったんだけど……。
やっぱ……まずかったかな……。
「……いや。受験生の中には時折、あの的を破壊できるものは現れる。だからそれは別に構わないのだが……」
「だが?」
「……あの的を破壊することができる受験生の魔力数値は『9999』を超える数値となるのだ」
エルフ先生の発言で周囲が慌ただしくざわめき始める。
それにしても……あれで9999? ドラゴンに使ってもあんまりダメージ与えることができない、あの魔法が?
「そ、そうなんですか?」
「ああ。もし、君がここで試験をやめてしまうと、ここにいる他の受験生達が自らの合格を納得しないだろう。
彼らの為に、君を合格にしたい。
構わないかい?」
「……俺個人からすればそれはありがたいのですが……いいんですか?」
「ああ。むしろ、君が合格しなかったら、他皆が自分の合格を疑ってしまう」
「……わかりました。では、その合格、確かに承りました」
「ありがとう。他の試験官にも同じように伝えるよ」
そう言ってエルフの先生は他の受験生へ目をやって頭を下げてさっていく。
……合格通知をもらったのなら、もうここにいる意味はないな。
次の試験会場は向かおうとして帽子のことを思い出した。
帽子を渡した女の子を探す。
すぐに見つかったが、彼女もこちらをじっと見つめいていた。
「帽子ありがとう」
「い、いえ……」
女の子から帽子を受け取り、その中にあるアルマを確認すると小さく丸まって眠っていた。
こいつ……。
「あ、あの!」
「はい?」
「あ、ありがとう!!」
「……試験頑張って」
「う、うん!」
お礼を言って女の子も魔法試験の再試験へ向かった。
そんな彼女を見送り、俺は次の受験会場へ向かうのだった。




