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宝石問題 後日談

 これはアストとオリヴィエと出会った数日後。

 世間には隠された宝石問題のもう一つの物語ーー



 〜〜〜〜〜〜



 貴族が泊まるような高級な宿屋にとある一団が訪れていた。


「……どうですか?」

「……。これをどこで……」

「売却を行うとしたところをお借りたものです」

「……その方は一体なにので?」

「……では、やはりーー」

「はい。これは間違いなく、本物のアダマンタイト鉱石にございます」


 オリヴィエはアストから譲り受けたアダマンタイト鉱石を呼びつけた鑑定士に鑑定させていた。


「これほどのアダマンタイト鉱石は見たことがありません。

 その方は、どのようにしてこのアダマンタイト鉱石を入手したのでしょうか」

「その人はカーバンクルという精霊を連れていました。

 その子に頼んでみつけてもらったのだと思います」

()()()()()

 アハハハ!! ご冗談を!

 そんなことができる人族なんぞ、いるはずがないでしょ!」

「え?」

「さあて。こんな大きさのアダマンタイトだ。

 もっとしっかりと調べて適正な金額を査定しなければ!」


 鑑定士はものすごく気合が入り、「やるぞ〜!」と張り切っていた。

 対するオリヴィエは鑑定士が言った言葉と現実で見た出来事の違いに困惑していた。


「……じょうだん?」


 抱き上げてたり、ついて歩いていたあの姿が?


「ーーまあ、話を軽く聞いただけじゃ、普通ありえないと思うでしょうね」

「! 先生!」


 本来の持ち主である1人と1匹のことを思い出しながら、そのこと自体を疑問に思っていると、1人の女性が声をかけた。


「姫様は精霊がどうやってこの世界に現れているのか知らないんだよね」

「はい」

「はあ……まったく。これだから勇者やら聖女やらを持ち上げる貴族連中は……」


 日差しまであるピッタリとした長い服を着たオリヴィエから先生と呼ばれた女性はウェーブのかかった長い茶色の髪を軽く描きながらソファに座り膝を組んだ。


 オリヴィエはその隣に腰掛け真剣な眼差しで女性を見つめる。


「精霊っていうのは、本来契約して召喚する召喚獣の一種。

 召喚には召喚に必要なだけの魔力とそれを維持し続けるだけの膨大な魔力が必要となる。先頭となればなおさらね。

 と同時に、それさえクリアしてしまえばあとはどうにでもなるのよ。

 常時召喚し続けるだけの圧倒的魔力量。底知れない果てしないまでの魔力があれば日常生活で精霊を召喚し続けることができるでしょうね」


 まあ、その分だけの魔力回復量も必要だけどね、と言ってお茶を飲んだ。


「……それで?

 あの宝石を持ってきたって人はどんな奴なの?」

「はい。名前は、アストという名前で、カーバンクルの名前はアルマと呼ばれていました」

「そう。アストにアルマ……?」


 名前を伝えると女性は首を傾けた。


「お嬢様。お尋ねしたいのですが、その、アスト、という方は……」

「はい。同い年ぐらいの男の子でしたよ」


 オリヴィエは先生にアストという人族の特徴を告げる。

 そして伝え終えると女性は考え込むように俯いた。


「……成長したから顔つきとかはわからないけど……でも髪の色と瞳の色がなぁ……。

 まさか本当に明日花(アスカ)ちゃんが引き取った子?

 でもあの子、精霊には絶対に嫌われるはずのに……」

「……先生?」

「あ、ああごめんなさい。

 どうも知り合いの子の名前に似てきたから気になってね」

「そうですか。もしかしたら同じ人物かもしれませんね」

「それだとそれで問題があるんだけど……」


 女性は頭を抱え、ため息を漏らす。

 オリヴィエはそれだといいな……というふうに笑みを浮かべていたが、ふとアストがあの鉱石を低く見ていたことを思い出した。


「そういえばアストさんはあのアダマンタイト鉱石をあまり評価していない様子だったんですよね」

「え? ああそれは、私達からしても同じ反応をします」

「どうしてですか?」

「アダマンタイト鉱石は大きければ大きいほど武器や防具の素材に使うことが出来る。

 硬く、それでいてしなやか。道具としていくらでも活用法のある鉱石です。

 ですが……魔法使いとしては、()()()()()()()()()鉱石ではありますね」

「ひつようとしない?」

「道具の素材としては必要です。

 でも、魔道具としての価値がないのです」

「まどうぐ……魔法を使う触媒や多くの民が使用する生活を便利にする道具のことですね」

「貴方様はその必要のないほど高度な魔法を行使できますがほとんどのものはそうではありません。そのため魔法を使う触媒にその属性にあった宝石を使用します。

 日常生活で使われている魔道具も同じ。火を起こすならルビーを、水を作り出すならサファイアを。そのように状況に応じて様々な宝石や鉱石が使用されるます。

 アダマンタイトもその一つ。アダマンタイト、ヒヒイロカネ、伝説のオリハルコン。これら一つでもあれば魔道具一つも国宝級に値するでしょう。

 ただ……大きさは精々、これくらいでいいです」


 そう言って指で摘めるほどの大きさを手さぶりで見せる。


「その程度の大きさでいいのですか?」

「これ以上大きなは役に立たないんだよ」

「やくに?」

「そう。

 宝石や鉱石は魔力によって形をどんどんと大きくしていくのですが、その大きくなる過程で魔力を消費して形成されていきます。

 アダマンタイト鉱石は希少かつほとんど発見例が見つからない、ありとあらゆるものに活用できる鉱石ですが、他の宝石と同じく魔力を消費して大きくなっていく鉱石。

 大きくなるにつれてその魔力がどんどんと弱っていき、魔道具としての価値も弱まっていくことでしょう。

 その特性をしっかりと理解できるものならばあの大きさのアダマンタイトはたいして価値を見出すことはない。そういう意味ではたかが、という言葉に納得がいきます」

「アダマンタイトにはそんな特性が……」

「まあ武器などに加工するならなんら問題のない希少鉱石ですがね」


 先生の説明にアストがあまり高く評価していなかった理由を理解して納得の表情を浮かべる。


「ところで〜」


 説明を終え話が区切られたところで先生と呼ばれた女性はニヤニヤとした表情を浮かべてオリヴィエの肩を組んだ。


「みょ〜〜〜〜〜にその子のことを気にしているみたいだけど……何かいいことでもあったの?」

「え!? いや、その……」


 オリヴィエは少しだけ顔を赤らめながら緊張気味に宝石の髪飾りのことを語る。


「目の前でこんなきれいなを作られて……すごく感動しました!」

「オリヴィエ様がそんな興奮するなんて……よほど気に入ったのですね」

「えへへ」


 オリヴィエの喜びように興味が出た女性はオリヴィエが貰ったという宝石の髪飾りに視線を向ける。


「ーー」


 そしてその髪飾りを見て絶句した。


「……どうしましたか? 先生」

「い、いや……」


 驚いた表情を浮かべる先生に首を傾けるオリヴィエ。

 だがそんなことにさえ意識を向けられないほどの衝撃が女性に襲いかかっていた。


(な、なによこれ!? 意味わかんない意味わかない意味わかんない!!!

 どうして、髪飾り一つに私のスキル鑑定を()()()()()()()()()が行えているの!!?

 主に付与されている能力は状態異常系の耐性のようだけど、それにしたって普通の宝石にあれだけの付与を行えば後も容易く崩れちゃうのにその傾向がない。

 それに耐えうる鉱石だって限られるはず。でも青()水色の宝石なんて……みずいろ?)


 女性は今度は付与された効果ではなく、宝石そのものをしっかりと確認する。


「……!!? うそでしょ!!?」


 女性は宝石を見つめながら立ち上がった。

 それに驚いてオリヴィエは体を小さくする。


「そんなこと普通ありえない……もしそんなことができるなら、リリンが言ったあの古代の……」

「ど、どうしたんですか?」

「……オリヴィエ様」

「は、はい」

「もし、機会があれば、その者を私の元まで連れてきていただきませんか?」

「アストさんを?」

「はい。

 その者が作った髪飾りには数え切れないほどの付与と特別な加工がされていあります」

「特別な加工?」

「それは元々あった宝石に()()()()()()()()()()()という錬金術ですら不可能な加工がされてあります。

 基盤となっているサファイアの宝石にその鉱石を混ぜ合わせることで多くの付与をしても壊れることのない強力な鉱石。オリハルコン!」

「!?」

「ドワーフですらオリハルコンを別の宝石と混ぜ合わせることはその生涯をかけても不可能だというにそれをさらに美しい造形をし、あまつさえ付与までも行なっている。

 目の前にその現物があるならば、その者はあの魔法が使えるということ。

 古代に失われし宝石を自由自在に操ったとされる伝説の魔法……宝石魔法!」

「宝石魔法……」

「姫様!」

「は、はい!」

「必ず連れてきてください。いいですか、必ずですよ。

 もしもこれだけの才能と技術力があれば、名誉伯爵……いいえ、私の推薦があれば宮廷魔導士の地位まで得られることができるでしょう。

 国家のため、是非その者とコンタクトを取ってください」

「で、ですが……」

「この才能を決して埋もれさせていけません。わかりましたね。

 ユグドエタニア王国第二王女、オリヴィエ・ユグドエタニア様」


「………」


 オリヴィエ……ユグドエタニア王国第二王女、オリヴィエ・ユグドエタニアは我が師である先生の真剣な反応に頷くことしかできなかった。

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