洋館事件⑦
「ハヤテ、感謝する。邪魔者の大半を排除してくれて助かった」
リザは腹黒い笑みを浮かべながら言う。
「おい、仲間じゃなかったのか?」
「ハヤテは私のものだ。誰にも渡さない。――おい、あとから出てきて、何、メインヒロイン面でハヤテにくっついている?」
リザはシャルに弓を構えた。
敵意が剥き出しだ。
「リザさん、私はあなたからハヤテさんを取るつもりはありません! 私は九番目で構いません!」
おいこら、その話は否定されただろ!
シャルは時々、俺の感覚では分からないことを言うな……
やっぱり、環境のせいなのかな?
「私が一番だと分かっているあたりは、どっかの香と比べて、物分かりが良いな」
いや、どっかの香って、それはもう香じゃないか?
「何度も言いますけど、何を勝手なことを…………」
気絶していた香が目を覚ました。
「当分は目を覚まさないと思ったのに凄い執念だ……」
リザは驚いていた。
「よくもやってくれましたね。この……くっ……これのせいで…………」
香はリザに迫ろうとしたが、とりもちのせいで思うように動けなくて、ジタバタする。
「抜け出せないと思うけど、念には念を入れておく」
リザは矢を構えた。
「えっ、リザちゃん、待ってくだ…………」
「魔法付与の矢、五連」
「~~~~~~~~」
香はまた声にならない悲鳴を上げて、気絶した。
「今度こそ、しばらくは目を覚まさない」
リザは俺たちに視線を移した。
「なぁ、リザ、この岩を外してくれないか? 血管を圧迫して、、左腕の感覚がないんだ。このままだと壊死するかも」
「嘘だ。私はそんないい加減な魔法を使わない。腕は圧迫していない。それは召喚盤を使えなくしているだけだ」
その通りである。
やっぱり嘘は通じない。
正直、リザが一番やりづらい。
多分、俺の手の内は全部バレている。
香やローランのように罠に嵌めるのは難しい。
そもそも、このタイミングで現れたのは俺たちに迎撃の準備をする時間を作らせない為だろう。
しかし、勝算がゼロなわけではない。
「リザ、今の君の格好はどうなっている?」
俺はリザに問いかける。
リザは一度、自分の状態を確認し、ハッとする。
しかし、すぐに首をブンブンと振った。
「わ、私の動揺を誘おうとしても無駄だ。今の私は、は、裸ぐらいで動じない!」
リザは頬を赤くした。
それは発情したからではなく、羞恥からだ。
やっぱりリザはリザだ。
根本は変わってない。
「俺は今のリザは嫌いだな」
「ハ、ハヤテ……!?」
リザは絶望した表情をする。
そんな顔をしないでくれ。
俺の決心が揺らぐだろ!
「俺は裸を見られて恥ずかしがるリザが好きだ。今みたいに恥ずかしげもなく、大股で立ったり…………」
「…………!」
リザは咄嗟に足を閉じる。
「自信のない胸を隠しもしない…………」
「…………!!」
リザは両手で胸を隠す。
「そんな羞恥の欠片もないリザは嫌いだ」
「ち、違う! 恥ずかしい! でも、今は衝動が抑えられないんだ!」
「それが分かっているなら、負けるな!」
「…………!?」
「リザ、君は本当に良いのかい? クスリなんかに負けて、俺を襲って、それが君の初めだと後悔しないかい? そんなことして、今後、俺と今まで通りに接することが出来ると思っているのかい!?」
「そ、それは…………」
「リザ、焦ることはないんだよ。。俺は逃げないから。ゆっくりやっていこう。こんなのはいけないよ」
「…………」
リザは無言で香が気絶しているトラップを飛び越えて、俺の目前に着地した。
「ハヤテさん……」
シャルが俺の服の袖を掴む。
「大丈夫だよ」と答えた。
リザは俺に抱き着く。
左腕の岩が砕けた。
「ハヤテ、恥ずかしい。見ないでくれぇ……服、貸してくれぇ……」
リザの声は震えていた。
そうだ。これがリザだ。
「分かったよ」
俺は復活した召喚盤から上着のカードを引いた。
それを実体に戻し、リザに渡す。
リザはそれを急いで着た。
「うぅぅぅ……、スースーする……」
リザは服の裾を手を押さえる。
上着を貸したが、下はサイズが合う物を持っていなかった。
以前ならリザの服も俺がカード化して、管理していた。
けれど、今はリザの部屋に専用の収納箱がある。
その為、リザが自分で管理している。
「一回、部屋に戻るか?」
俺は提案するが、リザは首を横に振った。
「ううん、急いだ方が良い。リスネはアイラを連れて行った。嫌な予感がする」
そういえば、アイラは無事だろうか?
いつもなら、どうせ大丈夫だろうと心配しない。
しかし、今は魔力を失っているので気になる。
「リスネは浴場にいる」
浴場?
なんでそんなところに?
もしかして、俺も風呂に入れて媚薬漬けにするつもりか?
とにかく、後はリスネさんだけだ。
ラスボス戦と行こうじゃないか。
俺たちはリスネさんが待ち受ける浴場に向かった。




