洋館事件⑤
目隠しを外される。
そこにいたのは裸のナターシャたちだった。
「まったく処女ちゃんたちは雰囲気を考えないから嫌ね」
ナターシャは笑った。
なんだかSっぽい笑顔だ。
「見て、ハヤテ、私たちの傷、奇麗に消えたの。それどころか。私は肌に艶が戻ったみたい。十代の肌みたいに水を弾くの」
言われてみると確かにナターシャは若返った気がする。
……って、観察している場合じゃない!
俺、手足をベッドに縛られて大の字にされている。
動けない!!
「これのどこに雰囲気があるっていうんだい!?」
「だって、ハヤテ、これぐらいしないと抵抗するでしょ。まったく、三十手前まで童貞だと防御力が高くて大変だね。でも、私みたいな年上にリードされる展開、好きなんでしょ?」
ナターシャは俺の首筋をなぞった。
あっ、大人の保健教材で見たことあるヤツだ。
本気でまずい!
てか、リザの奴、俺の情報をナターシャに言い過ぎだ!
「ハヤテさん、緊張しないで」とサリファ。
「うん、すぐに気持ちよくなるよ」とルイス。
二人は素肌のまま、俺に密着する。
こう見ると年下の二人が先輩に見える。
いや、まぁ、確かにある意味、先輩だけどさ!
結局、全員感染していたのかよ!
てか、冷静に考えれば、リザが正気を失うくらいの媚薬だ。
毒に対して、耐性がない一般人が無事なはずなかった!
「それにしてもこの岩、リザちゃんの仕業ね。ハヤテと両手でこう出来ないのが残念」
ナターシャは馬乗りになり、自分の左手を俺の右手に絡めて、恋人繋ぎにする。
「ハヤテ……」
俺の顔に、ナターシャの顔が近づいてくる。
運営さ~~ん、今日の運営さんはいつ来るんですか!?
…………駄目だ、今日、運営はお休みらしい。
あーー、これ、さすがに終わったわ。
俺の貞操、今日、死ぬんだ……
全てを諦めて体から力を抜いた時だった。
ドアが開いた。
運営は俺を見捨てていなかった。
「ごめんなさい。『束縛術式』発動」
「えっ!?」とナターシャたちが声を上げた。
三人は金縛りにあったように硬直する。
「ハヤテさん!」
シャルが俺を縛っている紐を切ってくれた。
「あ、ありがとう。でも、、どうして?」
「ナターシャさんが魔具倉庫を出る時に一瞬、微笑んだことが気になって、あとを付けたんです」
「なるほどね。さてと…………ナターシャ、サリファ、ルイス、ごめんね」
俺はシャルに頼んで、三人をロープで縛った。
「ハヤテ、結構過激なことが好きなんだね。良いよ、あんまり痛くしないでね」
とナターシャは言う。
縛られた女の子が三人、どうしよう、なんか目覚めそう。
「ハヤテさん?」
シャルが少し低い声で言った。
危ない危ない、欲望に負けるところだった。
「ちょっとの間、辛抱してね」
三人の口に布を噛ませた。
「む~~!」
三人は何かを訴えているが、今は聞く耳を持たない。
入浴剤の効果が消えるまでここにいてもらおう。
「さて、これであとは四人か……」
正直、その四人が問題だ。
集団で来れられたら、勝てる気がしない。
始めは隠れてどうにかしようとしていたけど、結局、どんな勝負だって攻める方が強いよな。
どうにか各個撃破できればいいんだけど…………
「シャル、魔具倉庫に戻ろうか。あの化け物たちをどうにかしないと……協力してくれるかな?」
「もちろんです」とシャルは答える。
俺は魔具倉庫であの四人を封じる魔具を調達する。
そして、シャルと作戦の打ち合わせをした。
少しすると階段を上ってくる足音がした。
一人だ。
俺たちは魔具倉庫のドアを開けて、人影を確認する。
ローランだった。
運が良い。
一番やりやすい相手が最初に現れた。
「シャル、計画通り行くよ」
「分かりました」
俺とシャルは廊下に出た。
反攻作戦の開始だ!




