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クエストの内容を復唱してもらえるかしら?

「ハヤテさん、今回の特別クエストの内容を復唱してもらえるかしら?」



 リスネさんは笑顔だった。

 しかし、眉毛をピクピクさせている。


「はい、シャルロッテ王女の奪還です…………」

 俺は圧に負けて正座していた。


「うんうん、良かったわ。私がクエスト内容を間違えて伝えちゃったのかとあせちゃったわよ…………で、誰が『竜使いのアイラ』を捕獲して来いって言ったのかしら?」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 成り行きでこうなっちゃったんです」


 俺は頭を下げるしかなかった。

 ってか、捕獲って…………


「んっ? 何か言いたいことがあるのかしら?」


「いいえ、何もございません!」


「見ろ、シャルロッテ。あれが思い付きで行動した愚者の末路じゃ」


 アイラは他人事ようだった。

 あんた、当人だからな!


「それにリザちゃんが奴隷だったですって!? しかも、元主人に見つかって、リザちゃんを返せって言われているって、何よ…………それに極めつけは、国すらも滅ぼしそうなドラゴン! 何かを隠しているとは思ったけど、こんなとんでもないことだとは思わなかったわよ! なんで一気にこれだけの問題が出てくるのよ…………」


 リスネさんは頭を抱えた。 


「リスネ、お前の人脈ならどうにかならないか!? リザ君の件とアイラの件」

 レリアーナさんが言う。


「簡単に言わないでよ、この死にぞこない! というか、あんたと香さんはこの話が終わった即入院だからね。二人共の女の子なのにそんな大きな傷をいくつも作って…………で、ハヤテさん!」


 

「は、はい!」

 背筋が勝手に伸びる。


「信用できる人から宿舎を借りるから、あなたはリザちゃんとアイラさんを連れてそこで待機! シャルロッテ様はエルメック様に迎えに来てもらいます!」


「アイラは一緒に連れて行っては駄目ですか?」


「シャルロッテさま~~、面白い御冗談を言いますね。アイラさんをロキア王国の王都へ招くつもりですか? いくら、あなたでも反逆罪で首が飛びますよ」


「は、はい…………ローラン、この人がリスネさんですか、すごく怖いんですけど?」


 王女様がレリアーナさんに耳打ちする。


「聞こえてますよ」


「ひっ!」


 どうやらこの場で一番強いのはリスネさんらしい。


「でも俺とアイラが一緒で平気ですか?」

「平気も何もそんな化け物級の魔人、捕獲した本人じゃないと対処が出来ないわよ」


 捕獲捕獲って…………しかも、俺がやったと思っているみたいだけど、俺がやったのは戦闘不能になったアイラを攫っただけだ。

 …………あれ、やっぱり俺のせいか。


「儂は別に構わんぞ。その青年とハーフエルフを殺すかもしれんがな」

「そんな気、まったくないくせに」


 不敵に笑っていたアイラの頬がピクリとした。


「……何を根拠に?」


 色々とドタバタしていて指摘していなかったけど…………


「殺気なんてないでしょ」


 俺の言葉に皆が驚いた。


「ハヤテ、それはさすがにアイラを庇い過ぎじゃないですか? 私、死にかけましたよ?」


 香が指摘する。


「確かに最後は本気で殺そうとしたね。それだけは否定しないし、それに関しては俺も怒ってる。それに途中からはさすがに本気になっていたみたいだ。でも、アイラは彼女なりに何度も殺さないようにしていたよ」


「それは私たちを嘗めていたからじゃないんですか?」


「それもあるだろうけど、殺意、敵意がなかった根拠はある。一番初めに召喚盤が反応しなかった」


「あっ」とリザと香が声を漏らした。


 召喚盤は殺意や敵意を感知すると勝手に展開される。

 一番初めにアイラと接触した時、俺は自分で召喚盤を展開した。


 だからアイラに殺意や敵意がなかったと断言できる。

 


「呑気な奴じゃの。それが本当だとして、負けた今は儂に気持ちに変化があるやもしれんぞ」

「それは無さそうなんだよね」


 だって、今も召喚盤は反応しない。


「変わった青年じゃ。まぁ安心せい。おぬしは面白そうじゃ」


「でもその魔力は問題よね…………アイラさん、今の魔力で全体のどれくらいなのかしら?」


「そこのハーフエルフに酷くやられたからのぉ。回復したのは一割足らずってところじゃな」


「今の状態で一割足らずって、出鱈目な魔力量ね。そんな人が街中にいたら、他の人が怖がるわ。魔人ってだけで目を引くし…………」


「目を引くってことは人間社会にも魔人がいるのか?」


 俺がリスネさんに尋ねると、彼女は返答を躊躇った。


「魔人の奴隷なら見たことある」

 リザが言った。

 なるほど、そういうことか。


「あっ、そうか。その手があった。ハヤテ、私がしていた奴隷の首輪、まだ持ってたよな?」


 リザは何かを思いついたようだった。


「そういえば。持ってたな。忘れてた」

「あれ、設定すれば、首輪をした相手の魔力を制限できるんだ。そうすれば、アイラを…………」


「えっ? いやいやいや! それは駄目だろ! 奴隷は良くないって、あれだけ言っておいて、俺がアイラを奴隷にするとか支離滅裂だ。アイラの中身はともかく、見た目は子供なんだ。子供の奴隷とかヤバいだろ」


「ハヤテ、早口、気持ち悪い。そうじゃない。アイラ自身に設定させればいい」


 えっ、そんなことできるの?


「なるほどのぉ。おい、青年、奴隷の首輪を儂に渡せ」


「えっ、あっ、分かったよ…………」


 カード化していた『奴隷の首輪』を取り出し、アイラに渡した。


「人間はこういういう物を作るのが本当に得意じゃの、どれ……なるほどの……」


 アイラは少し奴隷の首輪をいじり、カチって自分の首に嵌めた。


「うむ、意外と息苦しくない。どうじゃ、魔力の方は?」


「上手く人並になっているわね。ハヤテさん、連れてきちゃったものは仕方ないからしっかり面倒を見てくださいね」


「なんじゃなんじゃ、首輪もされて儂は愛玩動物みたいじゃの」


 アイラはケラケラと笑う。

 この状況を楽しんでいるようだった。


 なんだろ、今まで一番達成感の無い冒険だった気がする。

読んで頂き、ありがとうございます。

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