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三度目の帰還

 俺たちがリントブルムに乗り終えた頃、リザードマンの集団が到着した。


「なんだこれは!」

「貴様たちは何者だ!」

「アイラ様をどこへ連れて行く!?」


 リザードマンたちは声をあげる。


「リントブルム、飛んでくれ!」


 あまりの事態にリザードマンたちは呆然とし、判断が遅れた。


「矢だ、矢を放て!」


 しかし、その矢は俺たちに届かない。

 リントブルムが起こした風圧が矢を押し返す。


 俺たちは『ジュラディーズ』を脱出した。




『飛んだはいいが、どこへ向かう?』


 ガイエス城塞都市は…………あんまり近寄りたくない。


「すまないが、レイドアまで飛んでくれるか?」


『承知した』


 リントブルムは加速する。


 風圧の影響を受けないのは『風の防壁』があるからだろう。


「香、大丈夫か?」

「ハヤテ……すいません……また情けない姿を見せてしまいました……」


「そんな言い方をしないでくれ。香がいたから、リザは戦うことが出来たんだ」

「でも、情けないです…………前回はハヤテに、今回はリザちゃんに助けられて…………せっかく、新しい刀まで作ってもらったのにまた負けました…………」


 香は泣き出す。


「やっぱり香は馬鹿だ」


 リザは香の額をペチン、と叩いた。


「私のことを奴隷にする、って啖呵を切ったカッコイイ香はどこ行った?」

「リザちゃん…………」

「だけど奴隷は絶対嫌だ。仲間としてなら一緒にいる」

「そうですね。それがいいです」

「うん………」


 リザが急に倒れそうになる。


「大丈夫か?」

「うん、でも、疲れた。炎の魔法、扱いが大変…………」

「休みな。着いたら、起こすから」

「うん、分かった」


 リザは気絶するように眠る。

 少しして香も眠った。


「ローラン、眠そうですね」


 王女様が言う


「いえ、私は…………」


 レリアーナさんがアイラを見る。


「少なくとも今は大丈夫だと思います。俺が起きていますから、安心してください」


「すまない…………」


 起きているのは俺とアイラと王女様だけになった。


『我もいるぞ』


 ごめん、そうだな。


「大人しくなったね」


「今更騒いでも仕方あるまい。何を考えておる?」


「何も考えてない」


「そんな言葉を信じられるか? こんな強力なドラゴンすら従えておるのじゃ。我を洗脳し、戦わせるつもりか?」


「アイラ、この人は、ハヤテさんはそんなことしないと思います」


 王女様が俺のフォローに回ってくれる。


「どうしたんじゃ。シャルロッテ、お前はこの青年と今日、会ったばかりじゃろ?」


「そうなんですけど、何と言えばいいか…………私も情報量が多すぎて混乱しているくらいで…………」


 召喚盤を通して、王女様に俺の記憶が流れているはずだ。

 

 …………王女様、リザや香みたいに余計な記憶を確認してませんよね?

 お願いですから、俺の奇麗な部分だけ見てください!

 王女様にセクハラしたとかで逮捕されたくないです!


「ハヤテさんは信用できます。ちょっと行き当たりばったりでの行動もありますけど、良い人です」


「現在進行形で行き当たりばったり中じゃし、それは納得じゃな」


「まぁ、いざとなったら、一緒に東方同盟へ亡命しましょうか」


「なんじゃ、そのぶっとんだ提案は? 面白い青年じゃの」


 まぁ、とりあえず、リスネさんに相談してみよう。

 あの人なら何かいい案を出してくれるかもしれない。

 リザのこともどうにかしてくれたら、うれしいなぁ。


 リントブルムに乗り、しばらくすると夜が明けた。

 光に照らされて、レイドアの街が見えてくる。

 まだ問題は残っているが、今回もどうにか生き残り、帰って来れたことにホッとする。 




 俺はリントブルムにレイドア近郊で地上へ降りるようにお願いした。

 リントブルムがレイドアに現れたら、大騒ぎになる。

 

 カード化していたテント、食料、薬、毛布など取り出す。

「ちょっと街に行ってきます。ここで待っていてください」


 香とレリアーナさんは動けない。

 リザは万が一を考えて、一人で街へ近づけたくない。

 王女様やアイラを一人で街へ行かせるわけにはいかない。


「というわけ、ちょっと街へ行ってくるよ。リザ、みんなのことは頼んだぞ」


「うん、分かった」


 すぐにギルドへ向かう。。

 書類仕事をしているリスネさんを発見した。

 俺に気付いたリスネさんは持っていたペンを置く。


「帰ってきたのね。他のみんなは?」


 俺が一人だったからだろう。

 リスネさんは不安そうな表情になった。


「ちょっと、問題があって…………」


「…………もしかして、誰かが?」


 リスネさんの声が僅かに震える。


「あっ、誰かが死んだわけじゃないよ。でも、その…………とにかく、一緒に来てもらうことって出来る?」


「状況が良く分からないけど…………分かったわ。ちょっと待って」


 リスネさんは同僚に断りを入れ、ギルドを抜ける。

 


読んで頂き、ありがとうございます。


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