空間移動した先には…………
屋外の出るかと思ったが、移動した先は屋内だった。
ここはどこだ?
誰かの部屋のようだけど…………
「シャルロッテ様、ここは?」
レリアーナさんの質問に王女様は答えなかった。
黙って、部屋に置かれているベッドへ近づく。
王女様はベッドで寝ている女の子に話しかける。
女の子は少しめんどくさそうに体を起こした。
なんだろう?
この子も攫われてきたのだろうか?
一緒に連れて行って欲しいということなのだろうか。
そんな風に考えていたのは俺だけのようだった。
「シャルロッテ様、これは一体どういうことですか!?」
レリアーナさんは槍と大盾を展開していた。
その表情にあったのは恐怖だった。
レリアーナさんだけじゃない。
リザは弓を構えている。
香は刀に手をかけている。
「みんな、どうしたんだい!?」
「そうか、ハヤテは魔力を感じられないんだな。今、目の前にいる竜人、化け物みたいな魔力を持っている!」
竜人だって!?
だって、目の前にいるのは人間の…………いや、人間じゃない。
頭の左右には捻じれた角が生えていた。
「眠いのぉ…………なんじゃ、こんな真夜中に来ることはなかろうに」
見た目とは不釣り合いなしゃべり方の女の子は立ち上がった。
着ていたローブを脱ぐ。
どうも俺たちの視線は気にしていないらしい。
目の前で着替えを始めた。
見た目は人間に近い。
身長はそんなに高くない。
子供、中学生くらいの見た目だろうか。
そして、肩から腕、太ももから足先までは鱗に覆われていた。
リザと比べて人間の特徴は少なかった。
「『竜使いのアイラ』…………」
レリアーナさんが震える声で言う。
「えっ!? そんな、だって…………」
リザと同じくらいじゃないか?
「ハヤテ君、見た目に騙さるなよ」
「小娘の言う通りじゃよ、青年」
アイラは不敵に笑った。
その笑い方には子供らしさが何もない。
アイラはレリアーナさんのことを小娘と言う。
俺に対しても年下と話すような言い方だ。
これは説明されるまでもないな。
よくあるやつだ。
見た目と年齢が一致していないのだろう。
「で、お主ら、何をしに来た?」
アイラはまだ眠そうだった。
「おかしなことを言うな! シャルロッテ様を取り戻す為に来たのだ!!」
レリアーナさんは声を張るが、足は震えていた。
「取り返す? シャルロッテ、戻りたいと思っておるか?」
アイラは王女様に問いかける。
その問いに王女様は…………
「ローラン、帰ってください。私はここに残ります」
王女様はアイラの後ろに回った。
「これが答えじゃ」
「嘘だ…………お前がシャルロッテ様に洗脳魔法を使ったんだ!」
「聞き分けの無い小娘じゃ。ならば、どうする、儂と戦うか? あの時、ドレイクに囲まれ、震えるだけだった臆病な騎士が」
「貴様…………!」
「レリアーナ、冷静になれ」
リザがレリアーナさんの肩を叩いた。
レリアーナさんは深呼吸をし、「すまない」と口にした。
少しだけ平静を取り戻したようだった。
「ハヤテ、正直、私たちとあの竜人だとレベルが違う。任せていいか?」
「分かった。えーっと、アイラさん?」
「なんだ、ぬしは? 不思議な雰囲気じゃの。それに儂は敵ぞ。もうちと敵意を向けたらどうじゃ? そこの小娘たちみたいの」
「なんだか、そんな気になれなくてね。駄目元で聞くんですけど、王女様を返してくれない?」
「なんだ、金の為か? 名誉か?」
「どっちもあんまり興味はないなぁ。俺はもっと自分勝手な目的の為に王女様を取り返したいんだ」
リザを救う為だ。
俺が動く理由はそこにある。
「面白い青年じゃな。しかし、見たであろう、シャルロッテはここに残りたがっておる」
アイラはシャルロッテの髪の毛を弄ぶ。
操られているのかは分からない。
今はそんなことを考えている暇はない。
「部屋を滅茶苦茶にしちゃうけど、勘弁してくれ」
召喚盤を展開する。
アイラのレベルは⑦か…………
思ったよりは低いな。
でも、ここは全力で行く必要があるだろう。
「『究極竜リントブルム』を召喚!」
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