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北の塔

 俺たちは『北の塔』呼ばれる場所を探す。


 こんな広い城だ。

 探すのは苦労すると思った。

 

 しかし、それっぽい建物はすぐに発見できた。


 城の北の部分に目立つ建物があった。

 それを見て俺は「バベルの塔みたいだ」と呟く。


 王女様の居場所の見当がついた俺たちは一旦、地下の拠点まで戻る。


「なぜだ。すぐにでもシャルロッテ様を救いに行かないと…………!」


「気持ちは分かります。でも、万全の用意で行きたいんです」


 俺は召喚盤を見せた。


 掘削や探索にソウルポイントを使い、今は2900しかない。


「ここの数字は最大で6000まで回復します。俺はこのポイントを使ってモンスターを召喚しているんです。このポイントは自然回復でしか元に戻りません。時間が必要なんです」


 レリアーナさんはまじまじ召喚盤を見る。


「そんな制限があったのか…………ハヤテ君の力は本当に特殊だな。…………回復までにはどれぐらいかかる?」


「完全に回復するのは真昼間でしょう。しかし、忍び込むなら、夜の方が良いです。奪還作戦は明日の夜決行します」


「…………分かった。焦ってすまない」

「良いんです。早く助けたい気持ちは分かります」

「作戦の決行は明日だな、なら、体を休めるべきだろう」

 レリアーナさんの言葉は最もだ。

 だとしても、こんな地下だと少し気が滅入る。

 空気の流れも悪い。


 俺はカード化していた魔具のいくつかを取り出した。

 毒を無効化する為に購入した空間浄化の魔具。

 光を放つ変わった石『輝石』。


 それに食料も取り出す。


「食べて、休んで、夜を待ちましょう」

 俺たちは交代で休息をとり、夜を待つ。



 そして、夜。


「行きますか」


 俺たちは穴から出て目的の場所を目指す。


「さて、やるか…………」


 見張りが二人いるだけだった。


「『幻惑スライム』頼んだぞ」


 夜の闇に紛れて『幻惑スライム』が見張りのリザードマンに近づく。


『幻惑スライム』は二体に分裂して、リザードマンに襲い掛かった。


 それを確認して、俺たちは塔へと近づく。

 リザードマンたちは催眠状態になっていた。


「質問をするよ。ここは北の塔か?」


「北の塔だ…………」


「この中にロキア王国の王女様はいるか?」


「どこの国か分からないが、王女はいる…………」


 リザードマンの答えに、レリアーナさんは塔を見上げた。


「シャルロッテ様、必ずお救いします…………」


 涙を浮かべていた。


「いいかい、君たちは何も見ていない。異常は何も起こってない」


「俺たちは何も見ていない…………異常は何も起こっていない…………」


 二人のリザードマンが復唱する。


『幻惑スライム』をデッキに戻す。

 ソウルポイントは100の消費。


 いざという時に『リントブルム』を召喚できるようにしたい。

 だから、ソウルポイントを5100確保する必要がある。 

 

 俺たちは北の塔の中に入った。


 塔の内部は真ん中が空洞だった。

 塔の側面に作られた螺旋階段が上まで続いていた。


「『ゴブリントレジャーズ』を召喚」


 ソウルポイントは貴重だ。

 だからって、全く使わないわけにはいかない。



 ゴブリントレジャーズ

 レベル①属性(地) 召喚コスト500

 攻撃力100 体力500

『ロマンを追い求めるゴブリンたちは今日もダンジョンを探検し、攻略する』


 本当ならもっときちんとして罠探索モンスターを召喚したいけど、召喚に使ったソウルポイントを全損なんてことになったら、詰む。


 トレジャーズっていうんだから、罠にも耐性があるでしょ?

 など、と希望的観測を含み、召喚した。


「行きましょう」


『ゴブリントレジャーズ』を先頭に螺旋階段をを上っていく。


 途中に部屋は無さそうだ。

 随分と変わった造りだが、余計な部屋がないのは助かる。


 俺たちは最上階まで一気に到達した。


「はぁ…………ちょっと待って…………」


 さすがにこの階段数を一気に登ったせいで息が切れた。


「ハヤテ、ちょっと運動不足過ぎませんか?」


 香が涼しい顔で言う。

 見るとリザやレリアーナさんもほとんど消耗していなかった。

 俺だって前世より身体能力は強化されているはずなのに…………


 この世界の人たちの運動能力が高いんだろうか。

 それとも俺の周りの女の子たちの運動能力が高いだろうか。


 息を整えて、扉を開ける。


 内部は豪勢な作りの部屋だった。

 

 部屋の中央にベッドがあり、誰かが寝ている。


「シャルロッテ様!」


 レリアーナさんが駆け寄った。


 特に罠は無さそうだ。

 さすがに拍子抜けする。

 本当に見張りが二人いるだけで、他は罠も障害も何もなかった。


「ロ、ローラン!? これは夢かしら?」


 王女様はいきなりな起こされ、驚いていた。


「夢などではありません。お救いに参りました。あの日、何もできなかった情けない私をお許しください」


「そうですか。来てしまったのですね…………」


 王女様は悲しそうな表情になった。


「シャルロッテ様は何も知らないと思いますが、戦争がはじまります」


 王女様は口を両手で覆った。


「申し上げにくいのですが、ロキア王国軍も参加します」

「それは私の命を諦めたということですか?」

「………………」


 レリアーナさんは返答できなかった。


「すいません、王女様、ここで色々と話す時間はありません」


 王女様の視線が俺の方に向く。

「あなたは?」

「冒険者のユウキ・ハヤテと言います。今回の救出の依頼をレリアーナさんから受けました。早く脱出しましょう」


「そうなのですね。…………脱出するならいい方法があります」

「良い方法ですか?」


 王女様は部屋の隅に移動した。

 少し明るいところに移動したので、王女様の姿が良く分かった。


 俺は勝手に王女様はもっと年齢が上、レリアーナさんくらいだと思っていた。

 実際は恐らく十代後半くらいだった。


 動きやすい服、そして、少しボサボサしている髪を後ろに縛っている。

 高価な装飾品もなければ、化粧すらしていない。

 それでもこの人が街中にいたら浮くと思う。

 こういうのを高貴な雰囲気と言うのだろうか。

 


「ここには空間移動の魔法陣が組み込まれています。それを起動させれば、飛ぶことが出来ます」


 王女様に言われて、俺たちも部屋の隅に移動する。


「飛びますね」と言い、王女様は魔法陣を起動させた。


 言われた通りにしたが、空間移動魔法は初めてだ。

 どうなるのだろう、と少しだけ不安だったが、一瞬だけ体が浮いたと思ったら、もう移動していた。


読んで頂き、ありがとうございます。

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