ラストバトル!~大攻勢~
「なんだい、それは?」
白爵の顔から笑顔が消えた。
それだけリントブルムの力が強力と言うことだろう。
「リンドブルム、あいつを倒してくれ!」
『当然だ』
リンドブルムはブレスは吐いた。
すると今まで攻撃を受け止めていた白爵が初めてリントブルムのブレスを避けた。
「避けるってことは喰らったらマズいって判断したんだな?」
俺の言葉に白爵は苛立ったようだったようで、
「念の為さ。前回は馬鹿正直に真正面から戦って負けたからね。今回は念の為、全力で用心する。そんな図体の竜の攻撃が僕に当たると思わないでくれるかな!?」
白爵は素早く動き、リンドブルムに高密度の魔力弾を乱れ打ちする。
悔しいがあいつの言う通りだ。
「リントブルムの大技を当てる為には隙を作らないと……」
「じゃったら、儂の出番じゃの」
アイラは今までに見たことのない姿になった。
スラっとした長身の体つきで、背中には翼が生えている。
「アイツの力を使うのは気に入らんが、そうも言ってられんからな」
「アイラは気を付けてくれ」
俺の言葉にアイラは頷いた。
「アイラ、私も行きます」
「香、おぬしに飛行能力は無いじゃろ?」
「考えがあるんですよ」
香はそう言って、刀を抜く。
香の愛刀『イワジュク』と『ミノワ』は魔王に折られてしまった。
現在、香が使える刀は『ナグルミ』一本だけだ。
「行くぞ、香!」
「はい!」
アイラは翼を羽ばたかせ、香は空中を飛んで魔王へ向かっていく。
「アイラは分かるけど、香はどうやって空を飛んでいるんだい?」
俺の疑問にはリザが答えてくれた。
「香は相変わらず無茶苦茶だ。自分の足元に魔力を集中させて、空を蹴っている」
そんな芸当、先祖返りした香だから出来るのだろう。
アイラと香が白爵と交戦状態に入った。
あとは二人が隙を作ってくれることを祈るしかない。
「リントブルム、隙は多分一瞬だ」
『分かっている。主は新しい必殺技の名前でも考えていると良い』
新しい必殺技の名前、って冗談で言っているのか?
『最後の攻撃になる。かっこいいのを頼むぞ』
どうやら本気らしい。
アイラと香の動きは目で終えなかったが、リンクしていたので何となく、把握できる。
アイラが接近戦を仕掛けて、香が一撃離脱を戦法を行っている。
二人とも白爵と真正面から渡り合っていた。
「君たち程度が僕の相手になると思っているのかい!?」
白爵は挑発的な言葉を言っているが、そこまで余裕があるようには思えない。
「儂と香を殺さなかったことを後悔するんじゃな!」
アイラは言いながら、高速で波動を放った。
今のアイラの波動は速く、そして威力が増していた。
白爵に何発も直撃する。
しかし、白爵は瞬時に傷を回復し、致命傷にはならない。
「魔陰流攻法ノ一『ミナカミ』!」
香が隙を突いて、白爵の首を狙う。
「それで殺せると思ったかい!?」
香の刀は白爵の首を捉えたが、首を飛ばすどころが傷を付けることすら出来なかった。
「なんて硬度ですか……!?」
「化け物め…………」
香とアイラが渋い表情になる。
「アイラ、君だってすでに化け物の領域だよ。香ちゃんもね!」
「私を香ちゃん、なんて呼ばないでくれますか。寒気がします」
香は侮蔑の視線を白爵へ向けた。
「どうだい? 分からず屋のハヤテは僕と敵対したけど、君たちは僕と一緒に来ないかい? 考えてもみなよ。君たちの力はすでに人外だ。人々の輪の中にいてもいずれは恐れられる。もしかしたら、殺されるかもしれないよ。だったら、僕と一緒に世界を壊そうよ!」
白爵は香とアイラを勧誘する。
二人は返答せず、代わりに『波動』と飛ぶ斬撃の『マストビ』を放った。
「…………そうかい、馬鹿ばっかりだね!」
白爵が香に襲い掛かる。
「馬鹿で結構です! 魔陰流奥義『カクブギョウ』!」
香は奥義で迎え撃ったが、それでも白爵は倒せない。
「何度やっても無駄だよ。君たちじゃ……」
今度はアイラの『波動』が白爵に直撃する。
「本当に鬱陶しいな!」
「刀がもう一本欲しいです。…………んっ?」
香はいつも身に着けている脇差が鼓動している気がした。
抜いてみると脇差は普通の刀と同じ長さになる。
刀身は微かに紫色の光を放っていた。。
『ほう、その刀は童の牙が使われていたか。どうやら、香を主と認め、真の姿になったらしい』
香の脳内に妖狐帝の声がした。
「…………使わせてもらいます。魔陰双流奥義『スモノノコトワリ』!」
「何度やったって…………!」
「魔陰流二刀流奥義『キンセキノフミ』!」
香は連続で奥義を使った。
さらに槍のようにした九尾の尻尾で白爵の左胸の箇所を集中攻撃する。
「だから無駄だよ!」
「それはどうじゃろうな。最大限『波動』!」
間髪入れずにアイラが追撃を加える。
アイラの一撃で香がダメージを与え続けていた白爵の左胸を貫通した。
白爵の左胸にぽっかりと穴が出来る。
「…………凄い凄い! まさか君たちがここまで出来るとは思わなかったよ! ……で、満足かい?」
それでも白爵は死ななかった。
「これくらいでおぬしが死ぬなど思っておらんよ。しかし、隙は出来たわい」
「隙だって? あの竜の攻撃なんて簡単に…………!」
白爵の言葉は途中で途切れる。
スピアが左胸に突き刺さった。
それはローランのスピアだ。
ディアス君の造形魔法で発射台を即席で作って大型弩砲の要領で打ち出した。
そして、ローランは小竜になって、空中へやって来る。
「とんだ伏兵がいたもんだ。君みたいな虫けらの存在、忘れていたよ。でも、こんな槍で僕を殺せると思ったのかい?」
「思わない。だが、その虫けらでもやれることがあるんだよ。『紫電・改』!」
ローランの雷魔法が一瞬だけ魔王の動きを止めた。




