ガイエス城塞到着、望まぬ再会
一日の野宿を挟んでガイエス城塞都市に到着した。
レイドアの防衛設備も立派だったが、ガイエス城塞都市はそれ以上だった。
高くて分厚い壁、それに対空砲も確認できる。
「対魔王軍の西の最前線だからな」
圧倒されている俺にレリアーナさんが説明した。
「ここには今、正規軍の他に西方連合の各国から集められた連合軍、それに腕に自信がある冒険者もいる。魔王軍の領内に進攻するためだ」
なるほど、通りで街が慌ただしいわけだ。
レリアーナさんの言う通り、冒険者の姿も多く見られた。
そのほとんどが銀階級以上、腕に自信がある者たちだ。
中には俺たちが首からぶら下げている銅階級のメダルを見て、馬鹿にしたように笑う者たちもいた。
幸いなことに絡んでくる人はいなかった。
表通りは衛兵の眼が光っている。
騒ぎを起こせば、すぐに捕縛されるのが分かっているのだろう。
それなので、表通りを歩くのは多少安心できるが、裏通りは入らない方が良さそうだ。
「まずは宿舎を確保しようか。でもこれだけ人が多いと宿に空きがあるか、心配になるなぁ」
俺の心配は当たっていたようで、中々、宿が見つからなかった。
やっと宿の空きを見つけた時、すっかり日が沈んでしまっていた。
「物は置いていきたくないな」
知らない街だし、見るからにならず者も多い。
盗まれる可能性を考え、持ち物をカード化した。
こういう時、召喚盤の収納能力は助かる。
「さて、宿は何とか確保できたし、あとは食事だな」
この街の情報は何も持っていないので、無作為に酒場へ入ってみる。
リスネさんの所の酒場には敵わないが、適当に選んだにしては食事は美味しかった。
「凄いな……」
レリアーナさんはリザの食いっぷりを見て、驚く。
俺たちは慣れてしまったが、初めて見る人には衝撃だろう。
「それにエルフが肉を食うなんて珍しい」
「私、ハーフエルフ、肉、大好き」
リザはいつもの調子だった。
それに比べて……
「香君はお酒を飲まないのか?」
「えっ? あっ、はい、私、お酒を飲むとちょっと人に迷惑を掛けちゃいそうなので」
ちょっと?
「別に私は気にしないが。酒で失敗した奴なんてたくさん見ているしな。だから、私自身は酒を飲まないが」
レリアーナさんは言葉通り酒を一切飲んでいなかった。
何この常識人、無秩序なうちのパーティに本当に欲しいんだけど。
「しかし、この調子じゃ、食費が掛かって大変じゃないのか?」
レリアーナさんは再びリザを見ながら言う。
「大丈夫です。お金に関してまだ余裕がありますし、いやらしい話、この件が終われば、またお金が入りそうですしね」
「それは約束するが、銅階級の君たちが、なんでそんなに資金を持っている? 王族や貴族には見えないし、悪人にも見えない。不思議な人たちだ」
一時はレリアーナさんに距離を取られると思ったが、そんなことはなく、むしろ信頼度は上がったようだった。
食事を終えて、店を出る。
今日はもう遅いから、宿に帰って明日の午前中に必要な食料とか道具を買い込んで、午後には出発かな。
「ハヤテ、ちょっといいですか?」
香がいつもより低い声で話しかけてきた。
「後を付けられてます。多分三人」
香に言われて、後ろの方へ意識を集中してみた。
確かに視線を感じる。
「絡まれるような覚えはないが、このままなのも気持ち悪いな」
俺たちは少しだけ速足になって、路地を曲がった。
奴らは俺の後を追って、路地を曲がる。
「俺たちに何の用だ?」
待ち構えていた俺に、男たちは驚く。
しかし、それは一瞬で嫌な感じの笑みを浮かべた。
「あんたは…………!」
俺より年は上だ。恐らく40歳前後だろう。
男は武具を身に着けていた。
兵士ではない。冒険者だ。
この男と俺は初めて会うが、俺はこの男の顔と名前を知っていた。
名前はドミード。
「お兄さん、人の奴隷を勝手に自分のものにしちゃ困るよ。なぁ、エルフちゃん?」
男の視線がリザに向いた。
こいつはリザの元のご主人様だ。
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