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ロキア王国の内乱

「どういうことだ?」


 俺にはシャルのお兄さんたちの真意が分からなかった。


 野心かと思ったが、それなら俺たちと西方連合が戦い、消耗した時期を狙う方が良いだろう。

 それにフレデリック第一王子は病弱で、ロドルフ第三王子は人の上に立つ気が無いとシャルのお父さんが生前に言っていた。


「とにかくロキア王国の動きを探る必要があるでしょう」


 シャルが提案する。

 俺はその提案を聞き入れて、機巧人三名をロキア王国方面へ向かわせた。

 それと入れ違う形でロドルフ第三皇子の使者がシベールの街へやって来る。


 俺はすぐに会おうとしたが、マリーさんの件もあったので厳重な身体検査や尋問が行われた。

 結果、怪しい点は無かったので、使者を招き入れる。


「お手数をかけて申し訳ありません」

と俺は初めに謝罪した。


「いいえ、敵国から来た私に対して警戒をすることは当然のことです。話の場を設けて頂き、ありがとうございます。私はロドルフ様の側近で、ノイエルと申します。それにしても…………」


 ノイエルさんは俺に視線を移した。


「ご存命だったとは」


 西方連合に対し、マリーさんの暗殺が成功したと公表しているので、公にはまだ俺が死んだことになっている。


「だとしたら、我々は先走ったかもしれません」


 ノイエルさんは暗い表情になる。

 そして、書状を持ち出した。


「ロドルフ様からはシャルロッテ様に渡すように言われていましたが、ハヤテ様が生きているのなら、事情が変わります。この手紙をどちらの方へ渡せばいいでしょうか?」


「宛先がシャル宛てなら、シャルに渡してください」


 俺が言うとノイエルさんはシャルへ書状を渡す。


「そうだったんですね…………」


 書状を確認したシャルの声は少し泣きそうだった。


「この場で読み上げても良いですか?」


 現在、ここには各指揮官やアルベルト伯爵たちもいる。

 全員に書状の内容を聞いて欲しいようだった。


 俺が「良いよ」と言うとシャルが読み始める。


「シャルロッテ、元気にしているか? 君たちの指導者が死んだことに対し、追悼の意を示させてくれ。だが、指導者が死んだからといって、西方連合とアンドリュー兄さんは止まらないだろう。誰かが西方連合や兄上の暴走を止めなければならない。君が新たな指導者になれ。君にはその力量がある。その間、俺はフレデリック兄さんと共に時間を稼ぐことにした」


 その内容は多種族連結軍が俺の死で浮足立っていると思い、行動を起こしたことが書かれていた。


「俺たちの為に君のお兄さんたちが動いてくれたんだね。――――すぐにロキア王国の地図、それとロキア王国西部の詳細図を用意できるかな?」


「ハヤテさん、兄さんたちを助けてくれるのですか?」


「助ける、とはちょっと違うかな。俺は君のお兄さんたちを利用するつもりだよ。君のお兄さんたちを支援して、アンドリューを打倒し、国王が変われば、ロキア王国を味方に出来る。五大国の一角をこっちに取り込めば、西方連合は動揺するだろうし、それにそろそろ死んだふりを止める時期かと思ってね。今度はこちらが攻める番だ。…………と格好をつけてみたけど、俺は軍事の素人だから、専門家の人たちの意見を聞いても良いですか?」


 俺はエルメックさんたちに視線を向けた。


「今回の件はロキア王国のことだ。私は私情を挟む恐れがある為、意見は控えさせてもらう」

 そう言って、エルメックさんは議論から退く。


 代わりに口を開いたのはグレーシアさんだった。

「私はこちらの大陸について詳しくはありません。しかし、ロキア王国が西方連合にとって重要な国であることは存じております。ハヤテ殿の言う通り、その一角をこちらへ引き込めば、流れはこちらへ傾くでしょう」


 そして、ライアンさんが続き、

「それに我々はこちらの大陸へ旅行に来たわけではない」

と発言する。


 全軍をロキア王国へ向けることに対し、反対する者はいなかった。

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