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決まっていた判決

今回はシャルの視点になっております。

ご了承ください。

 ロキア王国王都。

 王立裁判所。


 ロキア王国へ護送されるとすぐに裁判が待っていました。

 でも、この裁判に対した意味はありません。


 裁判官、検察官、弁護士、証人、全員がアンドリューお兄様の息がかかった方々です。


 検察官は私の罪を過剰に述べます。

 弁護士は大した弁護をしません。

 証人は事実無根な証言をします。

 裁判官はすでに判決を用意しているようでした。


 主文は後回しにされました。

 延々と私が行ったことにされた国内外での悪事、それに対する判決理由が述べられます。


「…………主文、ロキア王国第二王女シャルロッテ・ロキア王女を斬首刑に処す」


 だから、裁判長が私にそう宣告した時、私は特に何も思いませんでした。

 私の助命嘆願を願う市民たちがいたようですが、その声は握り潰されてしまいました。


 これはハヤテさんの世界で言うところの〝因果応報〟というものなのです。

 私は強大になり過ぎた門閥貴族の力を削ぐために真っ黒なことをたくさんしてきました。

 私に恨みを持つ貴族はたくさんいるでしょう。

 その貴族たちがアンドリューお兄様を利用し、傀儡の王座に座らせた。

 今回の異例の王位継承の裏側はそんなところでしょう。


 刑の執行日は宣告されませんでしたが、遅くても二、三日中には行われると思います。


 ロキア王国では判決後、即日に刑が執行されることだってあります。

 それにお兄様にとって、私の存在は目障りでしょうから…………


 即日の刑執行も覚悟していましたが、それはありませんでした。

 判決を言い渡された私は窓のない地下牢へ幽閉されることになります。

 

 次の日、お兄様は兵士を複数人連れて、私が幽閉されている地下牢へやって来ました。


「惨めだな、我が愚妹よ」


 刑の執行だと思った私は「時間ですか?」と尋ねます。

 この人は私を一刻も早く殺したいのでしょう。

 しかし、お兄様は「違う」と否定します。


「喜べ、お前は恐らく、あと一か月ほど生きられるぞ」


「どういうことですか?」


 意味が分かりませんでした。


「お前の処刑はロキア王国ではなく、西方連合の首都『ペンデリオ』で行られることになった」


 なるほどそういうことですか。


 竜人と密通し、西方連合に大打撃を与えた大罪人の見せしめ、ということでしょう。

 けど、その後の言葉を私は予期できませんでした。


「お前の死を以て、旧魔王領への再侵攻を宣言する」


「えっ?」


 再侵攻?

 何を馬鹿なことを…………!?


「お前も焦った表情をするんだな」


 アンドリューお兄様は馬鹿にし、笑います。


「正気ですか? 今は戦争が終わり、内政に力を入れるべきです。百年の戦乱で民衆は限界に近いんですよ」


 事実、どこの国も民衆に多大な軍事費を負担させています。


「民は俺たち選ばれた人間を支える義務がある。王族や貴族に貢献できるんだ。民は光栄だろう」


 その歪んだ価値観が私は大嫌いです。

 確かに王族には生まれながらの使命があるかもしれません。

 でもそれは民衆を虐げることではないのです。

 私たち王族の役割は民衆を束ね、守ることにあります。

 

「これ以上、民衆を苦しめるのは止めてください。民衆がいなければ、国は成り立たないのですよ」


「お前と俺の考えは違うようだな。国が無ければ、民衆は生きていけない」


「それは違います。人間は確かに集団を作らなければ、生きていけません。ですが、それが国である必要は無いのです。レイドアのようにどこの国にも属さない独立した都市だって存在します」


 レイドアの名を出すとお兄様はまた悪いこと言う前の表情になりました。


「レイドアの街はいずれ解体されるぞ。まずは冒険者、それに職人たち。それからドワーフ共もいずれは西方連合の中へ組み込む」


「どういうことですか?」


「魔王の脅威がなくなった今、亜人共に特権を与え続ける必要がない。全ての種族は西方連合の、人間の元で統一される。すでに西方連合は亜人共へ自治権の剥奪を通達してある」


 何と愚かなことを……


「私の命はどうでもいいです。ですが、レイドアに手を出さないでください。それに亜人の方々を併合しようとすれば、新たな火種になりますよ」


「その時は武力により、制圧し、奴隷にするまでだ。個々の力が人間より強くても少数の種族など恐れることは無い」


 勝てる、勝てないの話ではありません。

 そんな身勝手をすれば、やっていることは魔王と同じになってしまいます。


「まぁ、レイドアの解体も、亜人共の併合もお前が死んだ後の話だ。気にすることなく、死んでいってくれ」


 お兄様はそう言い残して、立ち去ります。

 どうやら、これから始まることは私が死んで終わり、と言うことだけではないようです。

 途中退場になってしまうことはとても悔しい。


 それにアイラやローラン、ハヤテさんたちが心配です。


「頼みます。頼みますから、馬鹿な行動だけには出ないでください」


 私はそれだけを願います。

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