ハヤテ、今年を語る(後編)
「楽しそうね」とパトラティアが集まりに合流した。
「パトラティア、今、ハヤテがみんなにお礼を言っているのよ」
ナターシャがそんなことを言った。
いや、それは流れであって、目的じゃなかったんだけど…………
「へぇ、じゃあ、私にはどんなお礼を言ってくれるのかしら? …………って、私は別に何もしていないわね。アンペンダープの件ではハヤテに迷惑をかけちゃったし…………」
パトラティアは少し落ち込む。
「そんなことは気にしないでくれ。元々は俺の我儘からあの事件になっちゃったんだからさ。君が獣人連合との和平に賛成してくれたから、南の大陸の戦争は終わったんだ。本当に感謝している。それにライリーにもね」
「私にも?」といつの間にか輪に入っていたライリーはキョトンとする。
「地下遺跡でパトラティアを助けてくれた。それにこの前は冷静さを欠いた俺に怒ってくれた。俺の半分くらいの年なのに本当に頼りなるよ」
「そんなことは無い。私はまだ未熟だ。ハヤテたちと出会って、色々な経験が出来ている。私の方こそ本当に……ひゃう!?」
ライリーのキリっとした表情がいきなり弛緩した。
「サリファとルイス、この子がこの前、言っていた新しい仲間だよ。見ててね」
そう言って、ナターシャは手慣れた手付きでライリーの尻尾を擦った。
当然のようにライリーは飛ぶ。
「凄い! その尻尾、性感帯なの!?」
サリファが眼をキラキラさせる。
性感帯、とか言うんじゃありません!
「ねぇ、これ、サリファ、これ使ってみて?」
ルイスは十五センチくらいの全体が丸い棒を取り出した。
なんだあれ?
俺の疑問はすぐに解決する。
サリファがその棒に魔力を流すと震動し始めた。
…………これって、バイ……いや、ただのマッサージ機だね!
それを尻尾に当てられたライリーが悶絶する。
「ほ、本当に……ハヤテと一緒に……いると……色々……経験できる……」
ライリーが艶のある声で言い、体をビクビクさせている。
おいやめろ、このタイミングでそんなことを言うな!
今の経験に俺は関係ない!
「そうだね。ハヤテさんの記憶の中にあったマッサージ機を参考に作ったんだ」
ルイスが言う。
なんか関係あった!
俺の知識を勝手に利用されているんだけど!?
「う、うん、サリファとルイスがライリーと仲良くなれそうで良かったよ」
俺は目の前の現実を都合の良いように解釈した。
「あれは仲良くなっているのか?」
ローランがジト目で見てくる。
いや、俺は関係ないからね!
「興味深い」という千代の眼を香が覆った。
「ママ見えない。後学の為に見ておきたい」
「子供は見ちゃダメです」と香が言う。
「千代もありがとうね」
「私はただ付いてきただけ」
「そんなことは無いよ。屋敷の掃除は完璧だし、ナターシャから色々と聞いているよ。それに召喚盤のことを教えてもらった」
「大したことじゃない。それよりも早く兄弟が欲しい」
「…………それは、まぁ、その内、ね」
言った瞬間、複数の溜息が聞こえた。
「なんでこれだけのハーレムを作って、未だに童貞なのかしらね」
リスネさん、その呆れ顔は本気で傷つくからな!
「今思うと裸で私に迫られて、何もしないってどういうことですか?」
香が言う。
「君があの時、どんな状態だったか、ここで説明してあげようか?」
「や、やめてください。ちょっと酒を飲み過ぎただけじゃないですか」
「ちょっと? まったく、香はよくお酒で失敗しているよね。将来が心配だよ」
俺は酔って、偉そうにそんなことを言う。
すると香は悪そうな笑みを浮かべた。
「ハヤテだって、人のことを言えるんですか? 緊張して、記憶がなくなるまでお酒を飲んで、酔い潰れたじゃないですか。それになんでしたっけ? 愛し合うんでしたっけ??」
香だけじゃない。
みんながニヤニヤする。
やめろ!
そんな顔で俺を見るな!
顔が熱くなり、酒を一気飲みする。
……ヤバい。
こんな飲み方をしたら、また醜態を晒してしまう…………




