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撤退

 ソディアは完全に消滅してしまった。


「そんな……」と言い、パトラティアは倒れる。

 どうやら、魔力を使い切ってしまったようだ。


 リザたちが構える。



 しかし、アンペンダープは動かなかった。



「やったのか?」


「違う。多分、核が損傷して休止状態になったんだ」


 リザが言う。


「なら、今のうちに完全破壊するまでじゃ! 『波動』!」


 アイラが攻撃を放つが、またしても結界に阻まれる。


「結界を忘れたのか? 馬鹿なのか?」


 リザに冷静な口調で言われると、アイラは気まずそうだった。


「ふん、試しに攻撃をしてみただけじゃ!」


「いや、さっき『完全破壊するまでじゃ』とか、格好をつけてた」


 リザに指摘され、アイラは顔を赤くした。


「リザ、おぬしから完全破壊してやろうかの!?」


「逆ギレするな」


 リザとアイラが言い争いを始めそうになる。


「止めないか」と俺が仲裁に入った。


 それにしても……


「リザ、あの結界、強化されていないか?」


 さっきはアイラの攻撃で最初の結界を破壊できた。

 しかし、今度はアイラの攻撃でも結界は破れなかった。


「攻撃に回していた魔力を今は全部、防御に回している。あの結界を突破するのは難しい。仮に突破しても、中にも結界があるから、今の戦力じゃ、アンペンダープ本体まで攻撃が届かない」


 ここでこれ以上、交戦しても無意味か。

 だったら、やることは決まっている。


「今のうちに撤退する」と俺は宣言した。


「でもハヤテ、アンペンダープが動き出したら、被害が出る」


「あいつにまだ意識があるなら、タオグナへ向かうはずだ。態勢を立て直して、迎撃する方が良い」


 戦闘に参加した兵士の殆どがすでに戦える状態ではない。

 リザ、アイラ、フィールレイ、それにライアンさんはまだ戦えそうだが、戦力が足りない。


「ハヤテの言う通りよ……」


 パトラティアが意識を取り戻した。

 限界を超えて魔力を使った彼女の体はとても熱かった。


「それに撤退したスタンレン叔父様がタオグナに駐留する軍を動かしてくれるはず。もう一度、決戦場を設定しましょう」


 俺たちは撤退を決定する。


 怪我で動けないものを優先して馬車に乗せ、残りは馬に乗るか、走ってその場から離脱する。


 俺たちは言うと…………


「本当はハヤテ以外を乗せたくないんじゃが…………」


「ごめんよ」


 ソウルポイントの温存の為、ワイバーンを召喚するわけにはいかなかった。

 馬車で移動しようとした時、アイラが「儂の方が早い」と言い、竜の姿になってくれた。

 

 しかし、さっきから様子がおかしい奴がいる。

 当然、フィールレイだ。


「今、私、裸のアイラに触っている…………」


 フィールレイがアイラの背中に触れた瞬間、アイラはぶるっと震え、一瞬、墜落しそうになった。


「おい、余計なことするな! 俺やナターシャはこの高さから落ちたら死ぬぞ!」


「やはり気が変わった。そやつだけ蹴り落とせ。どうせ生きてるじゃろ」


 アイラが冷徹な口調で言う。

 ちなみにアイラが裸になる瞬間を見ようとしたフィールレイを俺たちが抑え込んだ。


「ごめんなさい。私まで…………」


 パトラティアも俺たちと一緒だ。


「構わぬ。おぬしも儂らと同じハヤテとリンクした者じゃ。……むっ? ということはやはり一人だけ違う者がおるの。おい、フィールレイ、おぬし、儂から降りろ」


「嫌だ! アイラは竜の姿になるのが好きじゃないから、滅多に見せてくれない。今のうちに堪能するんだ!」


 今度は頬をアイラの背中にスリスリとする。


 またアイラが揺れた。


「だからやめろ! 俺たちの命に関わる! てか、首輪の電撃はどうしたんだよ!?」


「興奮している今の私はこの程度の電撃、効かない。そうだ、アイラだけ裸なんて不公平だな。私も脱ごう!」


「馬鹿、やめろ!」


 クレイジーサイコレズめ…………


「ナターシャ、君からも何か言って……」


 やってくれ、と言おうとした時、ナターシャが放心状態だったのに気が付いた。


「大丈夫かい?」


「え? ええ」とナターシャは気のない返事をする。


「もしかして、どこか怪我をしたのかい?」


「本当に大丈夫だよ。ただ気を抜いたら、ちょっと腰が抜けちゃって……魔法って本当に凄いね。それにリザちゃんもアイラさんもフィールレイさんもやっぱりすごく強いんだね」


 そういえば、ナターシャがこれだけ大規模な戦闘を見たのは初めてだった。


「情けないなぁ、ハヤテの傍にいるって決めたに……見てるだけでこうなっちゃうなんて……」


 ナターシャは苦笑する。


「恥じることはないぞ。儂らが戦場に立つのと、おぬしが戦場に立つのでは前提条件が違い過ぎるからの」


「アイラさん、ありがとう。……でも今はちょっとだけこうしていい?」


 ナターシャは俺に寄り掛かる。

 俺をからかう意思はない。

 ナターシャは震えていた。


「分かったよ」と言い、俺はナターシャを抱き寄せる。


「ナターシャだけずるい!」とリザも抱き着く。


「おい、おぬしら、儂の背中でイチャイチャするな。リザ、フィールレイは抱えて、飛び降りろ。どうせ、おぬしたちなら死なん」


 俺たちの輪に入れないアイラはご立腹だ。


 リザは「嫌だ」と即答する。


「ごめんなさい、アイラさん。後で何かお菓子を作ってあげるね」


「ナターシャ、おぬし、儂がお菓子を作ってもらっていれば、満足すると思っておるな。…………まぁ、お菓子は作ってもらうがの」


 それを聞いた俺とナターシャは目を合わせて笑った。

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