森の異変と正体
気になることはあるが、頼まれたクエストは間違いなく達成した。
村長さんにクエスト終了のサインも貰ったし、この書類をギルドに届ければ、全てが完了する。
俺は村を離れたところでワイバーンを召喚した。
「後はギルドに戻って、終了報告をすれば、報酬が貰えますね」
アイスさんが言う。
「そうですね。すんなり終わってよかったです。…………どうした、リザ?」
リザは森の方を見ていた。
「森の様子がおかしい」
俺には分からない何かをリザは感じ取っていた。
「リザちゃんはハーフエルフですから、森の変化に敏感なんですね」
「確証はないけど…………」
リザは難しい顔をしていた。
「ちょっと偵察に行って見るか?」
「いいの?」
「リザが気にしているのにそれを無視して、この村に何かあったら、後悔するだろうし、村の危険を事前に察知できるならその方が良い。ただし、手に負えなさそうならすぐに逃げるよ」
「うん、分かった」
「すいません、アイスさん、ちょっと様子を見に行ってくるので待っていてくれますか?」
「そんなこと言わないでください。私たちは仲間じゃないですか。一緒に行きます」
「…………分かりました。お願いします」
「なんでちょっと複雑そうな顔しているんですか?」
アイスさんはムスッとする。
だって、朝のことがあったから全部メンヘラっぽく聞こえるんですよ、とは言えなかった。
「さて、ならワイバーンに乗って森の方を見て回るか」
リザが「森の様子がおかしい」というから、すぐに理由が分かると思ったが、そんなことはなかった。
見る限り普通に見える。
「生き物の動きが慌ただしい………………あっち、行ってみて」
しかし、リザには別のものが見えているみたいで俺に指示を出す。
俺はその指示に従った。
リザの言われた方向へ行くと俺でも変化に気付けた。
「生き物の気配がまったくない」
それからさらに進むと森が剥げている場所を発見する。
遠目には土地が剥げているか、岩場なのかと思ったが、近づくととんでもないことになっていた。
「なんだよ、これ!?」
いくつものクレーターが出来ていた。
隕石? それにしては一つ一つが小さい気がする。
「分からない」とリザが言う。
「いったん降りて…………」
その時、突然、召喚盤が反応した。
そして、ワイバーンが右に急旋回した。
「おい、いきなりどう…………」
直後にさっきまで飛んでいた直線航路に火の玉が降ってきた。
「ギャアァァァァ!!!」
耳を覆いたくなるような叫び声が聞こえた。
しかもそれは上からだった。
「一体なんだ!?」
見上げるとワイバーンよりも大きい竜がいた。
「ドレイクだ!」とリザが叫んだ。
さっきより接近され、火球を吐かれる。
「ワイバーン、躱してくれ!」
先ほどよりさらに早くワイバーンは回避した。
それでも何とかギリギリ躱せた。
これ以上、接近されたら、恐らく躱せない。
「迎え撃つ!」
リザが矢を構える。
「魔法付与の矢(水)『時雨』!」
無数の水の矢がドレイクに突き刺さる。
「ギャァァァ!」
「効いてる!」と俺は思ったが、リザは首を横に振った。
「駄目、鱗で止まってる。ダメージは入ってない!」
ワイバーンとドレイクで空中戦を展開するが、大きさも力も速度もドレイクの方が上だった。
「駄目だ、空中じゃやられる! ワイバーン、地上に降りろ!」
俺の指示でワイバーンは急下降し、地上を目指す。
「ギャァァァァァ!」
ドレイクが追撃の為に接近する。
駄目だ、あっちの方が早い!
ドレイクはまた口を開いた。
不味い!
この距離は躱せない!!
「私に任せてください!」
アイスさんがワイバーンの背中で立ち上がった。
そして、飛んだ。
口を開けたドレイクに攻めかかる。
「魔陰流攻法ノ一、『ミナカミ』!」
アイスさんの一太刀はドライクの下顎を襲った。
衝撃でドレイクは口を閉じ、直後に口の中で火球が爆発する。
俺とリザは爆風で吹き飛ばされた。
地面に叩きつけらると思った。それをワイバーンが身を挺して守ってくれた。
そして、ワイバーンは消滅する。
「いてぇ…………大丈夫か、リザ?」
「うん、ワイバーンが守ってくれた。でも体中が痛い」
今更だが、ワイバーンに乗った状態で攻撃されるのはキツイ。地面に落ちるとか以前にワイバーン
のダメージと直接のダメージが二十重で襲ってくる。
召喚盤を確認すると『ドレイク レベル⑦』と書かれていた。
レベル⑦ってことは俺たちで召喚できる最高レベルだ。しかもワイバーンの召喚に使った2000ポイントは全損してしまった。今は対抗手段がない。
救いはドレイクが姿を消したことだ。
アイスさんの一撃は相当聞いたらしい。
「そうだ、アイスさんは!?」
辺りを見るとアイスさんはいない。爆風でどこかに飛んだらしい。
「探さないと…………」
「ハヤテ、あれ!」
近くにアイスさんが身に着けていた風呂敷があった。
「これがあれば、どうにかなりそうだ、『魔狼の群れ』を召喚!」
俺は召喚した魔狼の群れの半数をアイスさんの捜索に、残りの半分を周囲の警戒に当てた。
少しするとアイスさんの捜索に出した魔狼の一頭が戻ってきた。
「見つけたんだな、案内を頼む」
俺とリザは急いで魔狼の後を追った。
その先にはアイスさんが倒れていた。
「酷い…………」
どこから出血しているか分からなくらい血が出ていた。
近くには無残に砕けた刀が転がっている。
「どうしよう、私、回復魔法は使えない。このままだとアイスが死ぬ…………!」
リザは動揺していた。
俺だってパニックになりそう。こんなに血を流した人間を見たことがない。生きているかも分からない。
「でも、やれることはやる…………頼むから俺の理想通りの効果であってくれよ『紺碧スライム』」
紺碧スライム
レベル②属性(水) 召喚コスト1000
攻撃力0 体力1000
『スライムには色んな奴がいる。こいつは傷を癒す珍しいスライムだ』
紺碧スライムはアイスさんの傷口に張り付き、止血する。さらに泥や血、刺さっている小枝を取り除いていく。
「うぅぅぅぅ…………」
「良かった生きてる。けど…………」
失血した分は戻らない。それにレベル②の紺碧スライムにどれほどの治癒能力があるかも分からない。
「これが異世界…………」
RPGゲームとかでは主人公が剣でドラゴンに挑むが、そんなことできっこない。生物としての強さが違い過ぎる。
村長が言っていた話を思い出す。
初期メンバーの内、二人は死んだという話が頭を過った。
それを払拭するために頭をブンブンと振った。
アイスさんの手を握った。酷く冷たかった。
「リザ、安全な場所に移ろう」
「賛成」
俺がアイスさんを背負って、移動する。
他の魔物襲撃を警戒したが、そもそも動物がいない。
「あのドレイクのせいか…………だけど、それってここがドレイクの縄張りってことだよな」
俺たち敵陣のど真ん中をボロボロの状態で進んでいく。
読んで頂き、ありがとうございます。




