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レモネードと綿飴

 

 目を覚ませば、目の前にイケメン。夜空で染めたような漆黒の髪に蜂蜜色の目。その目に写るのは……美少女。



 って、私のことだ!



 急に意識がはっきりして慌てて起きあがろうとすれば、頭が痛み力なく後ろへ倒れ込んでしまう。



 落ちた背中に痛みはなく、あるのは柔らか過ぎるほどの枕。




 うまく回らない頭で

 

 「ここは………?」


  と尋ねれば、いつのまにか自分の手を握っていたイケメンが、空いた手で頭を撫でてくる。


 

「ここは客室だよ。雪の代替の部屋。風呂場で倒れていたのをここまで運んできたんだ。」



そうだ、意識を失ったあの後、誰かが運んでくれたのか。


 

 メイドに運ばれるにしては身長が高い雪の身体。

ここには、執事がいた気がするが歳をとっていてそこまでの力はないように思える。



 「めいどさんがここまではこんできてくれたんですか?」


 呂律が回らず、とろんとした目でそう問い掛ければ、胸を押さえ苦しむ様子のイケメン。



 「だ、だいじょうぶですか?」



手をこちらに向け、大丈夫だ、という彼を見て安心した。


  ……にしても、この人はいったい誰だろう。

 知り合いだとまずいので、誰なのか聞くに聞けない。



 すると、心臓の発作?が収まった彼は真剣な目で見つめてくる。 


 「雪、どうして私に敬語を使うんだ。」




親しい仲なのだろうか。

 仕方ない、聞くしかないか。




 「ご、ごめんなさい。あたまにもやがかかっててあなたが誰だかよくわからないんです。」




「そ、そんなっ!メイドは覚えているのに私のことがわからなくなってしまうなんて。……………しばらく家を開けていたのがよくなかったようだ。今度の出張の話はあいつらに全部行かせるか。」



よくわからないが、私の発言のせいで罪なきものが犠牲となるのは心が痛い。



 「だ、だめですよ?おしごとはちゃんとしないと、

めっ!ですよ?」


年甲斐もなく、 めっ!なんて言ってしまった自分を殴りたいが、彼が胸を押さえているところを見ると、また発作が起きたようで聞こえてなかったかもしれない。


  

 「失礼、私は君の兄さんだよ。…それすらも忘れてしまったかい?」



 寂しそうな彼の姿を見ると無性に抱きしめたくなった。どうして、同じ兄なのにうちとは大違いなんだろう。


  兄、ということは御影颯汰のことだよね。

雪に教えてもらった「そう兄」という名で呼べば

なんだい?と顔を近づけてくる。


 手の届く距離になって首に手を回し、グッと引き寄せる。


 「忘れるわけないでしょ。僕のたった1人のお兄ちゃんなんだから。」



彼の喋りに似せたが、バレてないよね?



急に頬に冷たいものが一筋の道を辿るように落ちていく。



 腕の力を緩めれば、彼の目からは決壊が壊れたように大粒の涙が溢れていた。


 どうしようもできずオロオロしていると止まらない涙をハンカチで拭い頬にキスされた。



 顔を薔薇色に染め、放心状態の自分を揶揄うように笑う彼に頬を膨らます。


 

 やっぱり、どこの兄も一枚上<<うわ>>手<<て>>のようだ。



 今ので完全に意識を取り戻した私は、起き上がり

彼の頬にキスで仕返しをしようとしたが、ちょうどその時彼が顔を少しずらし口端にしてしまった。



 

 お互い固まる状況で、やってしまったという空気に耐えられず、布団に潜り込み狸寝入りをした。



 また、揶揄うような笑いで隠れきれていなかった頭を撫で


  「愛してるよ、雪」


そう言うと部屋を閉める音が聞こえた。


 




  好きというのはルー兄にいつも言われてるが



   "愛してる"



 初めて言われた言葉に初めての気持ちが芽生える。

 レモネードのような甘酸っぱさと綿飴のようなとろけるような甘さ。




 この高鳴る胸をどう表現すればいいのだろうか。

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