第五話:鶏が先か卵が先か
アレク達の初めてのボス戦はあっさりとしたものになりました。
誤字脱字等、ミスがあるかと思いますが、ご清覧下さい。
チチチチ...
ーアレクにとっての短夜が明けた
(ほとんど寝れなかったなぁ、ワクワクしすぎて)
・・・
「よぉ!おはよう!準備は出来たか? 出来ているなら
すぐにでも行こう。お前の情報だけが頼りだからな」
アレク達はプロロから西側に広がっている山の頂上を目指して歩いていた
「だいぶ歩いて来たな、プロロが結構下に見えるぜ
お前が見た景色はこんな感じだったか?」
「んーそうですね、大体この距離位だったと思います」
「じゃあ、この辺りに魔物がいるっつー事か」
ガレットはアレクの方に振り向いて話していた。
その時・・・
ぞくり、と背筋が凍るような視線を感じたガレットは
振り向きながらも視線の主から距離を置いた
「主が先日ワシとリンクした者か...貴様なにものだ?
そして、主がここへ来た理由はなんだ?」
岩が喋っていた。
紛れもなく岩だ。目と口がある岩。トグロを巻いた蛇のような岩状の魔物だった。
「でけぇ・・・」
遠くから見た時には山の一部と思っていた所全てが一体の魔物だった。
凍りついたガレットに代わり、
「お前も昨日の一件で察しているだろうが、
街道の岩をどけて貰いたい、麓の町では貿易が行われず、
このままでは人々が路頭に迷ってしまう」
どういう目的で岩を置いた、とアレクは"岩"に聞いた
「ふははは!目的だと?決まっておるだろう
麓の町、プロロと言ったか...そこの人間の排除よ
主はあの町の特産品は何か知らないのか?」
まさか...とガレットはつぶやいた
「あの町の特産品である鉱石は、我らの仲間から採取しておる。鉱石は我らが自我を保つ為には必要不可欠なのだ、
つまり人間共は、物言わぬのを良い事に殺戮を繰り返しておるという事だ」
「そんな奴らは滅ぼしても構わんだろう。
お主ら人間も我らを殺しているのだからー。」
確かにこいつの言いたい事も分かる。人だけが特別じゃない、弱肉強食だ。この世は強い者が生き残る世界なんだ。
「お前の言うことは分かった。じゃあ、俺たち人間も死ぬわけにはいかないからな!お前を倒してあの岩をどけてもらう!」
「良いだろう!お前達が負ければ今度はあの町に岩を落とす、それだけだ。
・・・では、かかって来い!この"ハーディンクレイ"が貴様らを屠ってやろう!」
「覚悟決めるしかねぇか、流石にアレク1人じゃサイズが違いすぎるわな・・・行くぞ!ハーディンクレイさんよぉ!」
"怪岩大蛇ハーディンクレイ"
魔王の眷属となった大型の岩蛇族。
本来、岩蛇族であるセーペンティは体長2m前後だが、岩蛇族の長である "ハーディンクレイ" は10mを超える。
魔王の眷属となった事で魔法を使う事が出来るようになった。また、あらゆる岩を自在に動かす事も出来るようになった。
(魔王の手によって *強制リンク も可能になったが、この事はハーディンクレイに知らされていない)
今回の事件はハーディンクレイの魔法による重力操作・魔術効果減退・絶対防御によるものであり、ハーディンクレイを超える者か従える者しか突破する事は出来ない。
長い体躯を使い体当たりが基本の戦闘スタイル
ーガレットはハーディンクレイから15mくらいの所で様子を見ていた。
(出方が分からない相手は、先ず様子を見なけりゃ始まらねぇ)
バキバキと木を薙ぎ倒しながらハーディンクレイは高速で体当たりをしてきた。
アレクとガレットはそれぞれ左右に分かれるようにギリギリ回避した。
(あっ!っぶねぇ...なんつー速さだよ。ただでさえ
図体がデカいのにこの速さは反則だぜ。...まぁ今の所セオリー通りの戦いが出来てる。左右に分かれたのは鍛えた甲斐があった!)
(...ふぅ、体がデカいのが難点だな。移動する距離が大変だ)
振り向くとモクモクと土煙が上がっていてハーディンクレイの姿は確認する事が出来ない。
ボゴォォオ!!!
と突然アレクの足元が盛り上がりハーディンクレイが体当たりしてきた。
硬化させた体での攻撃をモロに食らったアレクは上空へ弾き飛ばされる
「アレクッ・・・!ブッ!?」
アレクを心配したガレットだったが、ハーディンクレイの尻尾によりガレットもまた攻撃をモロに食らって吹っ飛ばされてしまった。
木がクッションになったおかげで吹っ飛ばされた衝撃はそこまでではないが、死角からの攻撃は甚大であった。
パラパラと木の葉がガレットに降り注ぐ
(...うっ...そだろ、防具しててもこれかよ。
いくら魔法を纏った攻撃でふいを突かれたからって、元々のセーペンティはDランクだぜ)
(...ア...レクは...?)
アレクは上空へ吹っ飛ばされたが、冷静に分析していた。
ちらりと敵を見て追撃がないと分かると、アレクは空中で体勢を整え体を丸め、力を溜めた。
ボッ!!!ー
アレクの体がロケットの様にハーディンクレイに向かって、ぐんぐん進んでいく。
ハーディンクレイはアレクを喰らおうと大きく口を開けて待ち構えていた。
そして、アレクはそのスピードのままハーディンクレイの口に入り剣を突き刺した。
ハーディンクレイは叫び声を上げるが、アレクは突き刺した剣に魔力を込めて、力の限り振り下ろしたー。
土煙が晴れ、ガレットの目に映ったのは頭が裂け、まるで
二又の龍の様になり、絶命していたハーディンクレイの姿と
返り血で全身が真っ赤に染まったアレクの姿だった。
「はぁはぁ...ーふぅ...。良かった、死んでくれた」
「・・・そうだ!ガレットさん!大丈夫ですか!」
木の根本に倒れていたガレットの元にアレクが駆け寄る。
ゴゴゴゴゴーと何かが動く様な音がした。
ガレットは意識はあるが、自力で動けないほどのダメージを受けていた。
アレクは回復魔法"ヒール"を唱えた。
「...おぉ、すまんなアレク、助かった。...お前の心配をするあまり相手の動きに注意がいっていなかった」
ガレットは申し訳無さそうに頭を下げた。
「いや、捨て身の防御ありがとうございます。ハーディンクレイがガレットさんを攻撃したおかげで俺への追撃が無かったんですから」
「...俺はお前の盾じゃないが、今回はまぁ仕方ねぇ。それにしても、お前の一撃は凄かったな!頭真っ二つにする剣技とか見たことなかったぜ」
回復したばかりなのにガレットは興奮していた。
「岩蛇だったんで、普通の攻撃じゃダメと思ったんです。
魔力を剣に纏わせたんで、何とか切れましたけど」
「なるほど、魔法剣かぁ。そりゃすげぇ俺も今度試してみようかな......っと今はそれどころじゃないな。
とりあえず、これで岩も無くなったはずだろ。討伐証拠に魔石を採取してから、ギルドに行こう」
えぇ・・・ただ、とアレクは嬉しさより、不安の方が多い様だった。
「街道の岩を退かした証拠にはならないでしょうね、多分」
「...あぁ、それなら大丈夫だと思うぜ。あの岩は特殊だったからな、知り合いに頼んで現地で確認して貰っているはずだ」
いつの間に・・・というアレクに対し、大人は保険を掛けとくもんなんだよ。とガレットは重い腰を上げながら言う。
肩を自然に組むアレクにガレットは照れた様に、
さっさと、町に帰るぞ!とぶっきら棒に答えた。
ご清覧ありがとうございます。
拙い文章、誤字脱字等、ミスがあるかと思いますが今後とも読んで頂けると幸いです。