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再会? Ⅱ

「相良第二の浜岡です。よろしく」

「……同じく相良第二の松原です。よろしくお願いします」

「ああ、よろしく……」

 天音よりも先に室内にいたのは三人。

 相良第二といえば県内の学校で、電子刃の保有率が一割程度と咬園には及ばないものの、高い保有率を誇っている。

 まだまだ情報は少ないが、彼らが同じ学校だったのは運がいい。知り合いでなかったとしても、出身が同じというだけで警戒心は薄れるだろう。

 だから、この状況は天音にとっても運がいいと捉えるべきだ。

「俺は咬園の新藤だ。って、城野には必要ないよね」

 天音の目の前に立った新藤は、わざとらしくも自己紹介を始めた。

「あれ?それじゃあ君たちも同じ学校同士なのかな」

「そういうことだ。咬園の城野だ。よろしく頼む」

 十七室の広さは五人分の簡易ベッドが設置されて、手狭ではあるもののきちんと整理されている。二百室も用意する必要があるため飾り気こそないが、贅沢は言っていられない。

「今のところメンバーに申し分はなさそうだね」

 それについては天音も同意見だ。

 ルールの確認は五人が揃ってからにするが、この第一試験では下手に強力な電子刃をごちゃごちゃと組み合わせるよりも、相性の方が優先される。

 連携を取る上で、味方の力を正しく判断することはもっとも重要なことだ。

 そもそも、敵が不特定多数の状況では敵を知ることにも限度がある。それならば、まずは自陣の手の内を知ることは大切なことだ。

 彼を知り己を知れば百選危うからず。

 情報不足のこの状況ではこの半分しか実行することは出来ないが、撤退か進軍かの判断が正確になるため生存率が高まる。

「ルールの確認は五人目が到着してからにするとして、まずは情報交換でもしようか」

「そうだな。試験開始まで時間もないことだし、そのうちもう一人も現れるでしょ」

 松原も異論はないようで、五人目を待たずして会議は始まってしまった。


「なるほど……今のところ近接型が二人に遠隔型が一人、その他が一人って感じだね」

 相良第二の委員長気質の優男。浜岡の電子刃は双剣で、天音や新藤以上にリーチが短い。

「ポイントマンは僕一人でよさそうだね。新藤くんの電子刃はあえて後手に回った方が生きそうな性能だし。遠隔型の二人のサポートがあれば即死もないだろう」

「……」

 松原も無言で頷き、新藤も特に異論はなさそうだ。

 もう一人の少し弱気な女の子。松原の電子刃は特化型電子刃のクナイ。

 電子刃に付けられているのは銘のほかに製造番号が設定されている。

 その中でも50から100までの電子刃を特化型電子刃と言い、その他の電子刃を汎用型と呼んで区別している。

 専門のエンジニアが一つ一つ作っているらしく、これらのほとんどは第一世代に渡されていて現特記戦力たちに保有者が多い。

 つまり、この松原という女の子はそれに適するだけの実力を兼ね備えているということ。

 味方としては心強いが、まさかたった五十機しか存在しない特化型が一つの組に二人も配置されるとは、やはり俺の電子刃は不良品扱いされているということだろうか。

「俺がポイントマンでないことに異論はないんだけどさ、五人目の子が近接型だったら俺は遊撃でもいいかな?」

「遊撃?個人行動するということか?それは……」

「そういうことじゃないよ。ちゃんと行動は共にするし、場合によっては前衛もしっかりと務める。でも、『グリーム』の力を活かすには少しチームのバランスが偏ってる。だから、場合によりけりで勝手に動く許可をもらいたい」

「なるほど、そういうことなら。ただし、連携を優先するということだけはわかってくれ」

「わかった」

 新藤の電子刃は光剣。これは二度対峙している天音は改めて聞く必要もないことだが、遊撃に向いている性能かと聞かれると、確かに単体での方が威力を発揮すると言わざるを得ない。

 しかし、

「ちょっと待ってくれ。そういうことなら、俺の電子刃の方が連携は取りづらい。状況に応じた判断というのであれば、俺も新藤に同行しよう」

 天音の『見えない斬撃』では味方にもその刃が見えないため、同士討ちの可能性がどうしても拭いきれない。

「しかし、それではたった五人のチームを二つに分けてしまうのはあまりにリスクが高い」

「たしかにそうだが、あえて二手に分かれることで敵に浮いた駒だと思わせることが出来る」

「戦った後で人数が減ったと思わせるわけか」

「たしかに、それは一理あるが、もし両方とも別のチームと鉢合わせたときのリスクが高すぎる」

 まとまりそうになっていた意見を慌てて浜岡が止めに入る。

 松原も口こそ挟もうとはしないものの不安そうな表情をしている。

「すいません、遅くなりました!」

 扉が勢いよく開き、一人の女の子が飛び込んできた。

 彼女は走り回ったのか息を切らし、額にはじんわりと汗がにじんでいる。

 可愛らしい顔立ちで息を荒げる少女は、よほど慌てていたのかすぐに時計を確認している。そして、まだ少し試験開始に猶予があることを理解すると、ほっと胸をなでおろした。

「君が十七室の五人目のメンバーなのか?」

「あ、城野さん!」

「……悪い。どこかで会ったことがあったかな」

 初対面であるはずの女の子に自分の名前を呼ばれ、頭の隅々まで記憶を巡らせてみたが彼女の顔に見覚えはなかった。

 しかし、彼女の方はまるで十年来の恩師と再会した時のような羨望のまなざしを向けている。

「ん、その制服……もしかして君も咬園の生徒なのかな?」

「はい!自分、咬園学園一年、津久野(つくの)御代(みよ)と言います。短剣使いです」

 彼女の制服は雀や詩恵が着ていたのと同じデザインのもの。

 しかし、ここまで同じ学校の生徒が揃うと、さすがに偶然では済まされない。そして短剣という今のメンバーに足りない要素を狙いすましたような人材。

 ランダムではないと思っていたが、このチーム構成についてもしっかりと考え抜かれた結果でこういった構成になっているのだろう。

 考え抜かれた結果が新藤と同じチームというのはいささか疑問を覚えるが、電子刃の相性ではそういう解釈がされたということか。

 津久野を交え、再びお互いの情報を共有しあい、結局天音と新藤、浜岡、松原、津久野の二手に分かれて一定の距離を保ちながら進軍するということになった。

 ちなみに、天音はまだこのメンバーにすべての情報を開示したわけではない。

 いちおう見えない斬撃を飛ばすことで遠隔攻撃が可能であるというところまでは教えたが、新藤以外のメンバーはその他の多くの小技については知らない。

 多かれ少なかれ彼らもそうだろうが、異能候補に推薦されている『見えない斬撃』を乱用することは、今後の試験にも影響するため控えておくことにする。


「さて、もう時間がないが、ルールの確認を行おうか」

 試験開始まで三分を切り、もう作戦を練るような時間は残されていない。

 部屋に設置されていたモニターにデータを飛ばし、第一試験の概要がモニターに映し出される。

 ここでも浜岡が説明の指揮を執り、滞りなく話を進めていく。

「第一試験の内容だが、みんなも知っての通りオープンフィールドでのバトルロワイアルだ。一つの仮想空間に10チームずつが最後の1チームになるまで競い合う」

 モニターには三種類のマップが表示され、それぞれ森、荒野、市街地と特徴的な景色が広がっている。この中からランダムに10チームずつが転送され、生き残りをかけて戦う。

 この試験では見知った間柄ではない相手と協力する必要があるため、普段通りの力が出せるかどうかは本人の資質による。

「極端なチームはないと思いたいが、遠隔型ばかりのチームや近接型ばかりのヒットアンドアウェイのチームなんかが相手になると対応が難しくなる。開けた場所なら狙撃を警戒。入り組んだ場所なら奇襲を警戒。二手に分かれるからには、片方がピンチになったらもう片方がサポートに回る。せめてこれだけは徹底してくれ」

「了解した」

「おーけー。こっちの指揮は城野。そっちは浜岡くんに任せたよ」

「松原と津久野もそれでいいか」

「了解しました!」

「……」

「頑張りましょうね!」

「……」

 松原も無言でうなずき、元気な津久野に迫られて居心地が悪そうにしている。

「城野さん」

「どうした」

「私、実は城野さんにずっと憧れてたんです」

「ずっと、というと新藤との模擬戦以前か?あの時はただのFランクでお世辞にも憧れるような要素はなかったと思うんだが」

「そんなことはありません!城野さんの戦闘リプレイはすべて見させてもらいました。確かにどの試合も勝利には結びついてはいませんでしたが、次に負けるイメージが全く湧いてこないんです。おんなじリプレイのはずなのに、何度も城野さんが勝つんじゃないかと手に汗握ってみてました!」

 白熱しだした彼女の語りに対し、面倒な人間が食いついてしまった。

「お、どうした。城野に目を付けるとは君も見どころがありそうだね」

「新藤さん……たしかに、私も城野さんを高く評価しているという点では新藤さんと同じなのかもしれませんが、あなたのことは好きになれません」

「ほう、それはどうして。俺は城野天音をもっとも正しく評価していると自負している男だぜ?」

 なぜか津久野は新藤に対して睨みを効かせ、新藤もそれを躱すように嘯く。

 自分を挟んで繰り広げられる口撃戦に、天音は視線が泳いでいる。これから協力して戦う仲間であるはずの彼らがどういうわけか対立している。

「それならば、私は城野天音をもっとも高く評価している女です」

「ふうん、面白い女の子だね」

「……」

 頬を膨らませて敵意を向ける津久野の視線をひらりと躱し、新藤は自分用の簡易ベッドへと腰を下ろした。

「もうすぐ転送だ。喧嘩は後にしてくれ」

「津久野、あいつも悪い奴ではない。変わった奴だが、今は我慢してくれ」

「……わかりました」

 戦闘前からチームが崩れかけ、こういう事態になるのであればチームを二手に分けたのは良策だったかもしれない。

 五人はそれぞれ簡易ベッドに横になると、ヘッドギアを装着した。

『第一試験開始まであと一分』

 合成音声による秒読みが始まり、天音にも緊張が走る。

 さあ、俺の力はどれほど通用するのか。


新人賞応募のための作品に着手しますので、一週間お休みします。


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