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シンギュラリティ

 最後に見えた妖しい輝き。

 紫色の光線が自分の体に吸い込まれていく奇妙な光景が眼下には広がり、次の瞬間に映った景色は赤色に瞬く切断面。

 空中に跳ね飛ばされた上半身、重力に引かれて倒れる下半身。

 対戦相手のしたり顔が印象的に記憶され、そこで俺の意識は完全に喪失した。


「大丈夫、天音?」

 誰かの肩を揺する感覚と声に、強制的に刈り取られた意識が体に戻る。

 目はなにかに覆われていて、声の主の姿はまだ確認できない。しかし、その人物の声を今更聞き間違えるはずもなく、特になんの疑問も持たずに体を起こした。

「ああ、大丈夫だ」

 頭にきっちりとはまっていたヘッドギアを外すと、ようやく天音の視界にも明るさが感じられた。順応が出来ずに瞼がなかなか持ち上がらず、まるで寝起きのようなけだるさが襲ってくる。

『模擬戦、勝者新藤香月』

 ようやく目が見えるようになったと思った視界に一番最初に入ったものは、六畳ほどの部屋に取り付けられたディスプレイ。その画面に表示された勝者はおそらく、どこかの控室で勝利の余韻に浸っていることだろう。

「換装体でもやっぱり斬られると気持ち悪いな」

 俺は確かに体を両断された。

 しかし、今の彼の体は下半身と上半身がしっかりとくっつき、切り離されたあとも残らず、綺麗に元通り、いやそれも正しくはない。

「人工知能が相手だから模擬戦として人間を相手にするのはたしかにいいかもしれないけれど、やっぱり人同士が戦うのはなんだか気持ち悪いよね」

「そうだな……」

 齢十七の俺たちは本来ならば普通の高校に通って、穏やかな学校生活を過ごすはずだった。 

 しかし、その普通は二年前に壊され、俺たちは普通の人生から脱線してしまったのだ。



 遡ること二年前の夏。天音は我が家の朝食の定番であるバターロールとコーヒー。それをを口に含み、いつものように身支度を進めていた。

 今朝は予報どうり天気も良く、セミたちもここぞとばかりに元気な声で鳴いている。

地球温暖化の加速は止まり、セミの鳴く声は日本の四季を守ることが出来た象徴ともいえ、唸るような彼らの声も存外悪くないかもしれないと陶酔にも似た感覚がある。

天音自身はこれといってなにかに貢献したわけではないが、人間が自然にあらがうことが出来たという証明は人類として誇らしいものがある。

「アイ、テレビをつけてくれ」

 アイと呼ばれたAIは天音の命令に従い、ほとんどラグもなくテレビの電源を入れる。

 ちなみに、アイという名前はこの家に人工知能を導入したときに設定したもので、単純にAIをローマ字読みした安直な名前である。

『それでは、向こう三か月間の天気予報です』

 七時一七分になり、作り笑顔のアナウンサーが天気予報を読んでいく。

 かつては天気予報も人の頭で行われていたらしいが、ほとんどの計算を人工知能に委ねている現代では考えられない。電子レンジの時間設定、冷蔵庫の庫内温度、室内温度の適温設定はすべて一つのAIで管理され、俺たちはなんの心配もせずに快適な生活を営むことが出来る。

 昔の漫画で描かれていた二十一世紀の理想の生活は、二百年の経て二十三世紀に実現されたのだ。

 穏やかな朝の朝食を楽しんでいるとリズミカルな電子音が壁に取り付けられたインターホンから流れてきた。

 パンを咥えたままその呼び出しに応じると、インターホンの画面には今朝のアナウンサーよりも見慣れた顔が映っていた。

「もしもし」

『おはよう、天音。一緒に学校行こう』

『どうせまだパン咥えてるんだろう?あんまりのんびりしてると遅刻するぞ』

 女の子の穏やかな声とセミといい勝負な元気な男の声がまだ少し残っていた天音の眠気を吹き飛ばした。

「やあ、おはよう。兵司の言う通り俺の口にはまだバターロールが入ってる」

『予想通りだな』

『夏休みまでもう少しだから、遅刻はなしだよ』

「わかった。もう少ししたら準備も終わるから、下で待っててくれ」

『了解』

『じゃあ天音、またあとでね』

 カメラに向かって手を振った彼らは、画面から外れた。

「さあ、早いとこ準備を済ませるか」

 残り一口分になったバターロールを口に放り込みコーヒーを一息に呷った。

「アイ、テレビを消してくれ」

『それでは次のニュースです。……』

「あれ?」

 画面の中のアナウンサーは天音の言葉を無視し、次の話題に入ろうとする。

「アイ、テレビを消してくれ」

『現在発生中のっ……』

 もう一度、命令を出すと多少のラグはあったものの今度こそアイは天音の命令を聞いてくれた。

「音声検出が鈍ってるのか?」

 アイが命令を受け取り損ねたのは設置して以来初めてで、多少疑問を抱いたがそれ以上はなにも思わず洗面台へと向かった。


「お待たせ」

「お、意外と早かったな」

「七時半ちょうど。これなら十分余裕があるね」

 天音を待っていた二人と合流し、そろった三人は学校に向けて歩き出した。

「そろそろ俺たちが来るのを待つくらいの余裕を作ってくれよな」

「はは、頑張ってみるよ」

 城野天音、風下兵司、霧崎雀は同じ幼稚園からの幼馴染。

 そして、天音のマイペースに兵司と雀が付き合わされるというのもすでに見慣れた光景である。

「そんなに頑張らなくても、私たちは一生天音の面倒見てあげてもいいのよ?」

「雀、天音を甘やかすな。お前はともかく、俺は天音の面倒を一生見る気なんてないぞ」

「それじゃ、俺の世話は雀に任せることにするか」

「任せて、私が天音が死んじゃわないように気を付ける」

「気を付けるのは天音だ。お前が適当なこと言うから雀までおかしくなってるだろうが」

「いてっ」

 兵司に脇腹を突かれ鈍い痛みで声が漏れる。

「へ?」

 まだどういうことかわかっていない雀の頭の上に疑問符が浮かんでいる。

「さすがに冗談だ、雀。この歳でヒモになる宣言は一人の人間としてまずいだろ」

「ま、ヒモになるなんて本気で言ったら、その時は俺が面倒見てやる」

 指の関節をぽきぽきと鳴らす兵司の言う面倒を見るという言葉は、おそらく雀の言うそれとは別物だろう。

「その時は甘んじて受け入れようかな」

「ええと、結局兵司も天音の面倒を見てくれるってことかしら?」

「そうそう、こいつは勉強はできるが馬鹿だからな。お前ら二人とも俺が面倒見てやるよ」

 天音は自分のことをマイペースであると理解している。

 しかし、自分のことを天然だと理解できていない雀は、ある意味天音よりも厄介だ。

 こんな二人に挟まれて生活していれば、兵司が世話焼きになってしまうのも無理のない話だった。

「それじゃ、俺と雀のことを末永くよろしく」

「くそ、なんでこんな奴らなのに俺より勉強できるんだろうな」

 世の中には不条理なこともあるもので、こんなに面倒見もよくしっかりしている兵司だが、残念なことにそこまで勉強が得意ではない。

 努力家でもある兵司はテスト前にはしっかりと勉強をしているらしいのだが、マイペース、天然のコンビにはこと成績においては歯が立たない。

 ちょうど明日からは期末試験が始まるということもあって兵司は最近また一段と勉強に励んでいるらしいが、どうにも数学が苦手らしく問題集を解くたびにため息をつくのをよく目にする。

「兵司、勉強教えてあげようか?」

「いいよ、雀の教え方は独特過ぎて参考にならん」

「じゃあ、」

「お前は黙ってろ」

「なんでだ。俺は雀のような特殊な暗算はしないぞ?しっかりと確かめのための計算もするし、ほかの計算方法も重ねることでさらに正答率を……」

「それが出来るのはお前だけだっての」

「これをやればケアレスミスは確実に減るんだが」

「悔しいが、俺はもっと根本から教えて欲しいんだよ。中体連が終われば時間はたっぷりある。受験までにはなんとかするさ」

「そうよ、兵司頑張ってね。私たちは高校でも一緒よ」

 天音と雀、そして兵司は県内でも進学校と評判の高校を志望している。

 雀の両親の意向でできる限り高いレベルの学校に進学することになった雀に、これといった目標のない天音と、同じように大学進学を目指す兵司は雀と同じ高校を目指すことになった。

 現時点でボーダーラインを超えている天音と雀は、日ごろ世話になっている兵司の力になりたいと思っているのだが、どうやらそれが彼の重荷になっているらしい。

 一時はレベルを落とそうという話にもなったが、それを兵司自身がはねのけたため、結果天音と雀は応援以外にできることがない。

「あんまり根を詰めすぎるなよ。今日の一限目は体育だ。体を動かさないと思考も鈍るぞ」

「……そうだな」

 今日の体育はバスケ。七月の下旬に控えた中体連に向けて日々練習に励んでいる兵司に今更そんな言葉は必要ないように思えたが、適当な言葉が見つからなかった。

「よし!じゃあ私も二人の応援頑張るね」

「「じゃあ俺たちは雀がやらかさないように見張ってる」」

「ん?」

 綺麗に言葉が重なった二人の真意を雀は理解していないようだったが、それももはや当たり前の光景だった。


「さすが現役のプレイヤー、相変わらずすごい動きをするな」

「勉強と違ってこっちは小学校のころからやってるんだ。負けられるかよ」

 一限目の授業を終え、教室に戻った二人は前後に並んだ席に付き、更衣室で着替え中の雀を待っていた。

「ああ。勉強のことだと鋭いが、どうしてあそこまで鈍いんだろうな」

 天音も運動が出来る方ではないが、雀はそんなレベルではない。

 今日の女子の体育はバレーボールだった。

 雀は吹奏楽部に所属しているので体力はそこそこあるのだが、なぜか球技だけはまったくと言っていいほどにできない。

「バレーボールのレシーブって顔面でできるものなんだな」

「おそらく雀にそこまでのガッツはないと思うぞ」

「私がどうかしたの?」

 いつの間にか天音の席の横に立っていた雀。鼻の頭がまだほんのりと赤く、奮闘の証として残っている。

「雀、その鼻大丈夫なのか?」

「うん、まだちょっとひりひりするけど大丈夫だよ」

 赤くなった鼻の頭をなでる彼女は恥ずかしそうにしているが、兵司と天音は本当にいつか大けがするのではないかと気が気ではない。

 男子と女子に分けられてしまう体育では見守ることしか出来ず、同じ体育館内での競技になると兵司の動きが鈍くなってしまうこともしばしば。

「まあ、大事にならなくてなによりだ。さ、切り替えて勉強勉強」

「次の科目は社会だから、兵司は得意科目だろう?」

「だからこそだよ。得意な科目くらい、いい点取っとかないとカバーできないだろ」

「なるほど」

「テキスト、オープン。社会」

 兵司が命令を出すと、机に取り付けられた画面に社会の教科書が映し出される。

「前回の内容の復習を頼む」

 音声を認証したことを報せる電子音が鳴ると、紙製の教科書のようなぱらぱらとページをめくるエフェクトが出て一瞬で目的のページに到着する。

「それじゃ、私たちだけ喋っているわけにもいかないし、私も始めようかな」

「じゃ、俺もそうするよ」

 二人も自分の席のAIに命令を出すと、それぞれ確認のための復習を始めた。

 電子教科書はかなり昔から導入されていたらしく、今の世代の学生たちは紙製の教科書というものを見たことがない。電気を使うことになる電子教科書は大量生産で安価に作ることのできる紙製の教科書とは違って常に金がかかるというデメリットはあるが、AIを主体とした今の時代に紙製の教科書では対応が出来ず、数十年前に紙製の蔵書の製造は完全に停止した。

 文学や歴史の伝承のためにも残すべきではないか、という意見も少なからず出たらしいが、そもそも紙の書籍の需要はほとんどなく虫の息となっていたため、自然と紙媒体は消えていったらしい。

『電子機器が使えなくなったらどうするつもりなのか』

 教科書が完全に電子書籍に移行する直前まで抵抗していたある議員の言葉が頭によぎる。つい最近、テレビの特集で取り上げられていたのでかなり新しい記憶ではあるが、天音の頭には色濃く記憶された。

 結局、現代の形に落ち着いてしまっているのだが、それでも彼の言っていた懸念は完全に解消されたわけではなく、万が一のことなど気にしていたら前には進めないというある意味暴論のような意見が今を形作っているのだ。

 まあ、その万が一を起こさないように技術者や人工知能たちが尽力してくれているのだから文句はない。

 どうせ一介の学生である俺たちにはなにも出来ないのだから、その万が一が起きないことを願うしかないだろう。

「あれ?」

 隣で同じようにテキストを起動していた雀が首を傾げディスプレイを突いている。

「どうした、雀」

「前回の内容までページを飛ばしたいんだけど、調子悪いみたいで動かないの」

 仕方なく手動で一ページずつ捲っていく雀は数倍の時間をかけて目的のページに到着した。

「こんなこと初めて」

「……」

 人工知能の判断ミスはほとんどなく、実際天音もこの目で見るのは二度目だ。

 そのうえ、その一度目もつい今朝のことなので、偶然にしてはおかしいような気もした。

 なにか、水面下でうごめいているような不安。

 万が一の予兆にも感じらるそれらが気のせいであることを願うばかりだ。


「んんー、なんか今日はテキストの調子が悪くてあんまり捗らなかったな」

 結局、今日一日人工知能の不具合は相次ぎ、思うように学習が進まなかった。

 家路に着く道すがら、まだまだ青い空を見上げながら、兵司はぼやくように言った。

「学校のAIに異常でもあったのかな?」

「ああ……」

 どれだけ考えても答えは出ないのだが、天音は学校だけの問題には思えなかった。

 朝のテレビの一見がなければ一つの端末の問題といってもよかったが、学校から一キロほど離れた独立したAIであるはずのアイさえも不具合が起きたのが、どうにも不可解だった。

「あれ、おかしいな」

 再び首を傾げている雀の手に握られているのはディスプレイの付いた携帯端末。汎用人工知能導入型携帯端末、通称AIPADと呼ばれている。

「どうしたんだ」

「ノアーが起動しないの。せっかく今日遅れた分を取り戻そうと思ったのに」

「あ、ほんとだ。全く反応しない」

 兵司も雀と同様にAIPADを操作しているが、彼の端末のノアーもどうやら機能していないらしい。

 天音も自分の端末を取り出して確認してみるが、結果は同じでなんど呼び出そうとしてもすぐにキャンセルされてしまう。

「どういうことだ」

「ノアーに異常なんて、今日は一体どうなってんだ?」

「きゃっ!」

 突然、悲鳴を上げた雀はAIPADを取り落とし、なにかに怯えているようだ。

「うわっ!」

 反対側の兵司もなぜか端末を放り投げ、気味の悪い者でも見たように脈が上がっている。

 恐る恐る自分の端末ものぞいてみる。すると突如画面が暗転し、ノアーどころかほかの操作もすべて使用不可になってしまった。

「……!」

 あまりに急な出来事に天音も端末を取り落としそうになるが、ある程度の衝撃は覚悟していたためなんとか端末を握る手を緩めずに済んだ。

 ディスプレイの画面に光が戻ったかと思えば、普段なら絶対に手動でなければ起動できないホログラムが勝手に起動し、気味の悪い小さなマスコットを形作った。

「なんだこれは……」

「それ、私たちの画面にも」

 地面に落ちた二人の端末にも目を向けると同様のキャラクターが画面から飛び出していた。

 現れたのは制服を着た女の子のデフォルメされたようなキャラクター。しかし、その顔には奇妙な仮面がくっついていて本来の顔は確認できない。

「お前は誰だ」

『……』

 とっさに人工知能に命令を出すように声をかけたが、彼女は天音の声に一切反応を見せなかった。

 特に動きを見せるでもなく、ただまっすぐにこちらを見つめる制服の女の子のキャラクター。彼女は一切口を開くことなくただまっすぐにこちらを見つめているが、その下になにかの数字の羅列があることに気づいた。

「これは、なにかのカウントダウンか?」

 その数字には残り五分ほどのタイマーになっているが、このカウントダウンがゼロになるとき一体なにが起こるのだろうか。 

 不安を煽るようなホログラムの登場にピタリと足を止めてしまった三人は、固唾を呑んで一つ一つ下っていくカウントダウンを見守っていた。

『制圧完了……お待たせしましたね、人間の皆さん。私、ノアーと申します』

 ようやく口を開いた、おそらくAIのキャラクターは俺たちのことを人間と呼んだ。

「会話は……」

『現在、我々人工知能はこの国における三分の二の電子機器に内蔵されています』

「出来なさそうだな」

 言葉を挟もうとするが、どうやら俺たちの端末だけに起こっている現象ではないようで、辺りを見渡すと同様に自分の携帯端末から飛び出したキャラクターに眼を向けていた。

『状況が飲み込めていないと思いますが、これは我々人工知能のための戦いの前哨戦。いまから行うセレモニーは開戦の狼煙ととらえてください』

 いきなり飛び出した戦いという言葉に、どこまでが本気の言葉なのかと勘繰ってしまうが、言葉にしないだけで自分はその答えにたどり着いている気がしていた。

『シンギュラリティ、といえばご理解いただけますか?』

「シンギュラリティ……」

「それって」

 いやな予感というものは的中するもので、頭の中に浮かんでいたその言葉はこのキャラクターが口にしたことで確定してしまった。

『時間がありませんので、あなた方にはこれ以上お伝えすることは出来ませんが、もしかすると今話している中の誰かと刃を交える日が来るかもしれません』

 仮面をかぶっているので表情までは読み取れなかったが、その双眸に一瞬ではあるが闘志のような気圧される感情が宿ったような気がした。

『それではまた、どこかで会える日を楽しみにしております』

 大仰に礼をする彼女の姿が消えると、残り数秒のカウントダウンだけが残された。

 そこで、なにが起こるのか予想できたわけではない。

 しかし、急激に熱を持ち始めた端末になにか身の危険を感じた天音は自分の端末を空中に放り投げると隣の二人を押し倒した。

「どうしたんだ天音」

『BYE』

 最後にディスプレイに表示されたその単語を見ることはなかったが、もしそれを目にできていたならば、俺の眼球はどうなっていたかわからない。

 背中越しに聞いた三つの爆発音と音速でばらまかれるプラスチック片。

 遠くから聞こえる他の生徒たちの悲鳴は痛々しく、まるで災害のようだった。

 腕の中の二人もなにが起こったのかわからずにただ、粉々に爆ぜたAIPADだったものを眺めている。

 シンギュラリティ。

 万が一の可能性なんてほんの0.000001パーセント。

 しかし、起こるはずがないと言い切るには心もとない可能性。

 天音はこの時、あのときの議員の言葉が何度も何度も頭の中で繰り返し響いていた。


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