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五分間の優しい小説

幸せの水瓶

作者: k.go

 とある山奥にあるその町では、いつもみんなが人のことを思いやっていて、笑顔が耐えることがありませんでした。


「おじいさん、お荷物お持ちしましょうか?」


「おばあさん、僕立ってるから席に座っていいよ。」


「おとうさん、かたをたたいてあげる。」


 その町の住人はみんな心に水瓶を持っていて、いつも水瓶にはいっぱいの幸せが入っていました。


 人に優しくされることで、また、人に優しくすることで水瓶に幸せという水を注いで、みんな満たされようとしていました。


 そんなある日、町に神様が舞い降りてきて、こう言ったのです。


「清き心を持ち、人を真の幸せに導くことの出来るものに、人を救う光を与えよう。」


 神様の言葉を聞いて、町に住む人々はこう思いました。


「わたしこそが、神様に光を与えられるにふさわしいに違いない。」


 人々は、神様の言葉を聞いてからというもの、自分の水瓶の幸せを渡してまで、よりいっそう優しくあろうとがんばりだしました。


 しだいに、どっちが席を譲るかでけんかをしたり、荷物をどちらが持つかでもめたりするようになっていってしまったのです。


 しかし、どれだけ人々ががんばっても、神様は誰にも光を与えてくれることはありませんでした。


 そんなある日、町の中心にある木の下に、幸せの水瓶を空にした少女が泣いていました。


 人々は、こぞって自分の思う幸せを水瓶に注ぎ込み、少女の水瓶を満たそうとしました。


「僕が幸せに思うんだからこうすればいい!」


「これをあげる。きっと幸せになれるよ。」


「大丈夫!全部任せなさい!」


 しかし、少女の水瓶は満たされることは無く、様々な幸せという名の水を浴びて、ずぶ濡れになりながら少女は泣き続けました。


「少女を笑わせて神様に認められるのは私だけだ。」


「少女を笑顔に出来るのは僕だ。」


 人々は、少女の水瓶にひびが入っていることに気づくことが出来ず、ただひたすらに自分の思う幸せの水を水瓶に入れ続けました。


 少女は濁ってしまった水の重みで疲れ果て、ついにその場に倒れ込むと、人々は神様に罰を与えられてしまうと、その場から逃げ出してしまったのです。


 夜になっても水瓶からは雨のように少女に降り注ぎ、少女は幸せの重みに身動気をとることが出来ず、


「このまま死んでしまうのかな…」


 と、少女は力無く目を閉じました。


すると、不意に幸せの雨がやんだのです。


 少女は起き上がって見ると、光り輝く少年が勇気という名の傘を差しだして少女を見つめていました。


 少女が傘を受け取ると、次に少年はいたわりで水瓶を直して、やさしさという水を新たに注ぎ込むと、最後に思いやりの毛布で少女を包んで、少年はスッと消えてしまいました。


 少女は毛布に包まれてじっとしていると、水瓶のなかのやさしさが、次第に幸せに変わっていくのを感じました。


 次の日、自分の中に光があることを感じた少女は、神様がいる丘へと向かい、神様に話しかけたのです。


「どうして私に光を与えてくださったのですか?

 私には人を幸せに導くことなど、とても出来ません。」


 神様は、にっこりと微笑むと、少女に言いました。


「じつは私は人に光を与えてはいけないのだよ。」


 少女は驚いて、自分の光を見つめ、


「ではこの光はいったい?」


と、不思議な顔をしました。


「それは、幸せの本当の意味を知ったときに、自ら輝きだす純粋な心なんだ。

 みんな生まれたときから持っているものなのが、自ら気づくことは出来ない。

 私の役目は、それを気付かせる手助けをすることだけなんだ。」


 少女は神様の言った言葉を理解しきることが出来ませんでした。


「神様がみんなに光を与えてくだされば、みんな幸せになれるのではないのですか?」


 と、たずねました。


 すると神様は、


「いや、それでは意味がないのだよ。」


 と、首を振ったのです。


「私がもし光を与えられたとしても、本当のやさしさの意味を知らなければ、人を幸せにすることは出来ないのだよ。

 人に幸せを押し付けるだけでは、本当の幸せを与えることが出来ないということは、君がよく知っているだろう。」


「でも…」


少女は言いました。


「神様がなにも言わなければ、今までのようにみんな仲良しでいられたんじゃないですか?

私を思って行動してくれた人を結果的に悲しませてしまいました。

どうして誰かが傷付くようなことを?」


「そうだね…」


神様は少し悲しそうな顔をしました。


「誰かのためにするではなく、自分の為にする人が多過ぎたのだ。

そうなると、間違えた方法で助けようとしてしまい、結果的に苦しくなる人が出てきてしまう。

さっきの君のようにね。」


少女はハッとしたように、胸をぎゅーっと押さえました。


「気付くことが出来なければ進む事はできない。

今回の出来事で彼らも己に気付き、きっと自分の光を見つけることができるだろう。」


 少女は少し考えた後、静かにうなずきました。

神様は微笑んで少女に話しを続けました。


「傷ついたことのある人はとてもやさしい。傷付き、本当の優しさを知ることで君は輝きだしたのだ。

 今の君だからこそ出来ることがあるから。

 さあ行きたまえ、本当に困っている人々を本物のやさしさで助けるために。」


 それだけ言うと、神様は光に包まれて消えてしまったのです。


 神様が消えた場所には、昨日の光る少年が手を差し伸べていました。


 本当に困っている人を助ける。


 神様の言った、今の自分だからこそ出来ることがある。


 少女は少年の手をとり、町へと歩き出しました。

お読みいただきありがとうございました。

童話を書くのは人生で初めてだったのですが、まずまずの出来になったと思います。

優しさや思いやりは、よく考えて使わなければ、人を傷つけてしまうということを知ってほしくて書きました。

少し文章直しました。すいません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 泣きました。ありがとうございました。
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