6 ランカンスロープ
まさか、、、無くなってる・・・!?
なんてことはなくふつうに歪んだ空間は橋の坂の部分の欄干の下という同じ場所でたゆたっていた。泳いでいる鯉は水面下だからうまいこと入ってしまわないんだろうか。
目の前によどみまどろんでいるようなダンジョンの入り口に誰も気づかないんだろうか?夜も走っているランナーは脇目を振らないのがマナーなんだろう。
まあむしろ自分以外に誰も気づいていないのは、俺がこのダンジョンを攻略していく上で、悪いことではない。ゆくゆくは仲間がいてもいいかもしれないが、序盤は一人でゆったり進む派なのだ。
寝不足の疲れを感じさせない動きで、昨日のように身を投げ出し、空間に没入する。意識が途切れるのは今回も同じだ。気づいたら、昨日の謎の空間に身を伏せていた。
今日も奥に進んでいく。
キノコさん、会いにきたよ。
昨日より少し奥のところで出会ったキノコさんはこれまた同じように駆けてきたが、情けは無用なりけり、蹴っ飛ばしてやった。サッカーだって、昔は生首でやってたらしいし、それよりはキノコさんの方が形状に近い。
しかも蹴るとなんだか元気になるんだよね。効いてないけど、キノコらは攻撃してきているようだし、たとえいくら日本でも他国に攻め込まれたら防衛するさ。過剰防衛?攻め込まれている時にそんな判断できるわけないだろ。
奥にさらに進んでいくと、ぽつぽつとキノコさんが出てきて、誰かに蹴られたりして飛んでいく姿が見える。なんだかお腹空いてきた。晩御飯はコンビニで買った植物油混入されまくりパンをかじっただけだったな、そういえば。
人の細胞は大体全部が三ヶ月で入れ替わるらしいけど、この三ヶ月は特に忙しかったから、食事の3/5くらいはファミマだ。残りは美味しくもない業務用食材を加熱したり揚げただけの職場の食堂。もちろん米は古古米とかふんだんのブレンド米。一見、ブランド米に見えるところが小癪なところだ。
俺の身体はほぼファミマとゴミからできてんだなあ・・・と考えながら、足元にまとわりつくキノコをなにげなく蹴ってると、目の端に何か落ちているものが映った。
近づいてみる。
ナニコレ、、、肉片?
拾ってみると分かった。これ、キノコさんの肉片だわ。