5 通勤時間って無駄じゃね?
いつもはギリギリまで寝ているために朝ご飯は食べないことも多いのだが、今日の朝は洗足池駅近くのパン屋でウインナーロールを買って池のほとりで食べた。カラスが遠目に俺の方を見てきていた。あげないよ?
いつもどおりの満員電車の中で、昨日のことが本当のことであったか幾度も反芻し、その度に高揚感の残滓を味わった。良いワインを飲むと一週間くらい余韻が残るっていうアレですよ。
やはり何度考えても、あのことは現実であったのだと俺のイデアがささやいていた。洞窟にワープしたのも、あんなキノコさんが動いていたのも、科学的に絶対ないとは言い切れないのだ。宇宙の96%を占めてるダークマターさんとダークエネルギーさんとがタッグを組めば、なんだってやれないことはない。
「おはよう」
「・・・」
職場の部下は挨拶に返事ひとつ返しやしない。事あるごとに奢ったりしてやってるのに、、、まあ目の前の仕事に追われてしまっているだけなのだろうか。
パソコンの前に着いた俺はいつもどおりそのまま深夜まで動くことはなかった。朝ご飯を食べておいて良かった。
なぜか身体は軽かった。
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(そういえば今日は金曜日だ、、、土日も今週は奇跡的に出勤予定が入っていない!)
俺の意識は当然、あの洞窟・・・もうこの際ダンジョンと呼ぶことにしよう、あのダンジョンにしか向いていなかった。
親が買って残してくれた六畳一間のアパートに一人暮らしだし、彼女もいないから何しても自由だ。まさにオールフリー状態。
朝、池を眺めて分かったことだが、少なくとも朝の時間にはあの空間の歪みは存在していないようだ。丑三つ時の時間帯だけなんかな。
いったん自宅に帰り、服をジャージに靴を運動靴に替えて、午前2時に特段何も担がず池の方へ向かった。
果たしてダンジョンはまだあるのだろうか。