13 中華はよく食べたくなるアル
神を殺す勢いでキノコパスタを食べきって、皿に残ったソースを丁寧に舐めとったオレは、少々インターネットでサーフィンを楽しんだ後、出かけることにした。
行き先は、アパートの近くに子供の頃からある中華料理屋の龍門というお店だ。ここには両親が存命だった頃、両親に手を繋がれて良く通ったからだ。大学1年生で一人暮らしがしたかったオレは親にせびって実家の近くであることを条件にアパート暮らしを認めてもらって(親は将来の資産になるようオレの名義にして買ってくれていた)、そんな折に二人で山中湖に旅行に出かけて、奴隷のようにこき使われた運転手が居眠りしていたトラックと衝突して・・・。
なんとなく足が遠のいていたが、この龍門の台湾出身の店主とは昔からの知り合いだし、店主の娘さんの嘉玲とは同級生だった。ジャーリンとは当時は読めなくて、「カレーだカレー!」と叫んで困らせていたっけ。
いずれにせよ龍門は化学調味料を使っていないらしく、くどくなくて安心して食べられる町の中華料理屋という感じだ。最近の東京の中華屋はグルタミン酸ソーダを使いすぎだ。
__________
「おっちゃん、久しぶり」
「アイヤー、平岡さんのぼんアルか!? もうランチ終わったから、ゴハンないアルヨ!!」
「ないのかあるのかどっちなんだよ、、、いや、今日は食べにきたわけじゃないんだ」
「冷やかしなら、帰り道はそっちアルヨ!!」
「冷やかしでもないさ、とある食材を持ってきたんだ」
「今日の分はもうあるアルヨ!!」
「この前富士山に登ってさ、その時に寄ったふもとの森で美味しそうなキノコを見つけたんだ」
オレの下手な嘘は気にせずに、目ざとく膨らんだ背中のリュックを見つけて
「まずは見せてみるヨロシ!!毒でも薬になるかもしれないネ!!」
人様に飯を食わす飲食業者としてその発言はどうかと思ったが、変な食材を持ってきたのはオレなので、わざわざ指摘しないことにした。
「ニオウシメジっぽくてなんかデカかったんだけどさ、、、」というオレのつぶやきを無視し、リュックから取り出されたキノコさんの肉片をまじまじと見ている。
「おめぇ、、こいつをどこで手に入れた?」「あれ、、、口調」「そんなことはどうでもいい!!これはとんでもねぇ代物だぞ。永年中華鍋を振るってきた儂だから分かる。太歳ってぇ不老不死をもたらすきのこの伝説が中国にはあるが、これはそれに近しいエネルギーを感じる」
オレはぽかんと口を開けて、急に流暢に喋り出したことへの驚きを忘れ、おっちゃんの気迫にひたすらプッシュされて愕然呆然としていた。タイサイってなんやねん。
「これは、、、そんなヤバイやつなのか?」
「ヤバイなんてもんじゃないぞ!!これを世の中に出した時には、世界中の中国人がここに集まってくる!!」
「それはヤバイな、、、地面が見えなくなるな」
「とりあえず、店の奥に隠すぞ!!いいな!?」
アルナイを言わせず、おっちゃんはずんずん店の奥にオレのリュックをしっかり掴んだまま消えていく。なぜか悪いことをして叱られた子供の気持ちになりながら、オレはおっちゃんの後を追った。




