72.ようこそラフィリルへ-02
ルークは傍らのイリューリアをすっと引き寄せ、両親である国王と王妃に紹介した。
「父上、母上!デルアータの公爵令嬢イリューリア・エルキュラート嬢です」
ルークが、そう言いながらイリューリアを愛おしそうに見つめる。
そしてイリューリアは、ドレスの裾をつまんで少し腰をかがめて頭を垂れ、それは上品に礼をとり挨拶した。
「デルアータ国、宰相公爵が娘イリューリアにございます。憧れのラフィリル王国の国王陛下、並びに王妃殿下に、お目にかかれ光栄に存じます」
王と王妃はイリューリアを見ながら、しばし硬直した。
「え?ルミィ?」と王妃が言葉をもらすと、ルークとイリューリアの後方にいるルミアーナとダルタスが一斉に否定した。
「「違います!」」
「「え?え?え?」」と、国王と王妃がイリューリアとルミアーナを見比べる。
「「えええええ~?!」」
「イリューリア嬢は、先代王の末の妹君で、デルアータの伯爵に嫁がれた血族の王女の孫にあたるのですわ!同じ血族の私と似ているのは、そのせいですわね!」と、ルミアーナが、楽しそうに二人に告げる。
二人の驚愕の顔に思わず笑みの漏れるルミアーナである。
「「おお(まぁっ)」」
「でっ!では、デルアータの公爵令嬢でありながら、我が国の最も尊い血族でもあるということか!」
王は嬉しそうに感激したような声をあげた。
「まぁ!どおりで、ルミィに、そっくりね!ルミィかと思ってしまったわ!イリューリア嬢、お顔をあげて下さる?」と王妃が優しく声をかけ、お辞儀をしたままのイリューリアを気遣う。
そしてイリューリアは、恥じらうような笑顔で、顔をあげる。
「「はうっ!」」二人はイリューリアの笑顔にハートを鷲掴みにされた。
「な、なんと、美しい!本当にルミアーナ夫人の若い頃、そっくりではないか!」
「本当に!なんて、可愛らしいのかしら!」
と、もともとルミファン(ルミアーナ崇拝)の国王夫妻は感激しきりでイリューリアを褒めたたえる。
褒め方がいちいち、ルミアーナになぞられるのは、ルミアーナが、この国で一番美しく”現存する女神”と称されているからである。
ルミアーナに似ているイコール”人間とも思えないほどのもの凄い美女”という事になるのである。
透き通るような肌、桜色の唇、月の光のような銀の髪。
ルミアーナよりも少し色素の薄い水色の宝石のような瞳は、優し気で好ましい。
その瞳と髪色に合わせた白のドレスはもはや花嫁衣裳を思わせるような清楚で清らかなイメージである。
ぽっと頬を染めイリューリアは恥じらいながらも国王と王妃に言葉を返す。
「ありがとうございます。ルミアーナお姉様に似ていると言われるのは、とても光栄で、嬉しゅうございます」
はにかみながらも、国王陛下や王妃殿下にしっかりと顔をむけ、受け応えるイリューリアの様子は、育ちと品性の良さを印象付けた。
(引きこもり続けた三年、家庭教師に習いつつ習得したマナーや知識は決して無駄にはならなかったようである。)
「それで、さっきジーンとリミアが、言っていたのは真実かっ!そのっ、お嫁さんがどうのと…」と国王がルークに尋ねた。
「結婚のことでしたら、本当ですよ」
「「おおっ!(まぁ)」」両陛下の顔があからさまに、ぱぁっとほころぶ。
「父上、母上…いえ、国王陛下、並びに王妃殿下、私、聖魔導士ルークとこのイリューリア・エルキュラート嬢との婚姻のご許可を頂きたく、かのデルアータより連れてまいりました。どうか、ご許可を」と、ルークがひざまづき、礼を取りながら恭しく願い出た。
「「許す!(許しますともっ)!」」と両陛下が大喜びで返事をする。
その言葉にイリューリアとルークも顔を見合わせ微笑み合い、その瞳を交わせ合いながら喜んだ。
ルークはもう一生、結婚しないつもりでは?と思っていた両親は大喜びである。
そのくらい、他人に興味を示さなかったからである。
しかも連れてきたのは、いかにも育ちの良さそうな、超絶綺麗可愛いルミアーナそっくりの美少女で、身分も申し分ない公爵令嬢である。
何の不足もあろうはずもなく、瞬時に思う!
『これを逃してなるものか!』と!。
特に王妃はずっとずっと可愛い娘が欲しかった!
ルークの兄の王太子アクルスも一昨年、結婚している。
…なので念願の娘はできたものの、この王太子妃は、ちょっとばかり可愛いというタイプとは違っていたので、あまり甘えてくれる感じでもない。
(仲が悪い訳ではないし、むしろ、かなり良好な関係と言って良いのだが、可愛い娘、嫁というタイプではないだけである。)
このイリューリアは、王妃には理想の花嫁だった。




