56.恋する乙女は美しい-03.イリューリアの気持ち
すっかり呪いの解けていたイリューリア。
さすがに人々の自分に対する驚嘆の賛辞が耳に入る。
そして、イリューリアは思った。
自分がこんなにも美しいと思ってもらえるなんて…。
こんな風に美しくしつらえてくれたルミアーナやメイド達には感謝するばかりである。
***
本当に…ルークやお姉さま達とであってから、何もかも変わった。
私は自分が美しいなんて一度も思った事はなかったし、こんな風に賞賛してもらえるなんて夢にも思わなかった。
でもルミアーナお姉さまとそっくりと言われるたびに私は自分に自信が持てるようになってきた。
だってお姉さまは本当にお美しいんですもの。
そっくりだというのなら、私も…?
きゃっ、自分で思っちゃうのって、やっぱり自惚れやの、嫌な女の子よね?
でもでも…やっぱり…わ、私も綺麗ってことで、良いのよね?きゃあああ!
そんな風に思うだけで嬉しくて嬉しくて自然と笑みがこぼれる。
以前はさほど楽しく感じなかったおしゃれも楽しくて、今回のドレス選びにも気合が入った。
お姉さまは大人っぽいデザインで私には若向きの花のつぼみのようなイメージでとドレスを選んでくれた。
仕上がった自分を見て正直、これが自分かと目を疑ったわ。
そして「誰に一番にこの姿を見せたい?」とお姉さまに言われて咄嗟にうかんだ顔は…ルークだった。
私は顔が熱くなるのを感じた。
えっと…これって、何?
そう思って頬を両手で押さえて焦っているとお姉さまが、にぱっと…そう、にぱっっとという表現がぴったりな笑顔でおっしゃった。
「浮かんだその人がイリューリアの一番ね!」と、言われた。
私はとっさに嘘をついてしまった。
「お、お父様ですわ!」と…。
大恩人のお姉さまに嘘なんて、私ったら…罪深い!
でもでもでも、恥ずかしかったんですもの…。
でも、そんなことお姉さまにはお見通しだったみたいで、ちらっと子供達をあやしているルークを見てにやにやしていた。
バ…バレバレだったのかしら?
お姉さまってば、もしかして心が読めてるのっ?って思ってしまった。
でも、”月の石の主”でラフィリルでは現存する女神と言われている方なのだからそれ位出来ても不思議ではないかも?とか思ってしまう。
(もちろん、ルミアーナにそんな力は、ないがイリューリアは自分の表情にあらわれまくっている事に気づかない)
そして、お姉さまの言った「浮かんだその人がイリューリアの一番ね!」という言葉は、私の心を揺さぶり続けた。
でも、ルークは、かのラフィリルの聖魔導士様…この園遊会が終われば、帰ってしまう人なのだ。
そう思うと、好きになってはいけない人だ…と、そう思った。
でも、そう思った時にはもう遅かったのかもしれない。
せめて、この園遊会では、勇気を出して、できるだけ彼と過ごしたい…だって、ルークが国に戻ってしまえば、もう一生会えないだろうから…。
そんな切なくも可愛らしい恋心を悩ませるイリューリアの気持ちに、その時、子守をしていたルークは気づかなかった。




