50.恋する男達-02-ローディ王子の場合
デュロノワル一族が捕らわれた数日後、王都も落ち着きを取り戻してきた頃、国王と王妃の所にローディ王子は願い事を持って訪れていた。
王子は、神妙な面持ちで国王と王妃に礼をとり願いを口にした。
「どうか、再び、彼女との…イリューリア嬢との婚約をお認め下さい」
ローディ王子は、父である国王陛下に願い出た。
「いや、それは、カルムが許さぬだろう?」国王キリクアがあっさりと否定した。
「そうね、あの忌々しい黒魔石の呪いのせいも、あったとはいえイリューリアは、王子の言葉にひどく傷ついて屋敷にこもるきっかけになったのは確かなのですから」と王妃も諭すように王子に言った。
「そ…それは、しかし当人同士が良いと言えば!」と、王子は食い下がる。
「彼女は誤解が解けて良かったと…砂粒ほども恨んでいないと…私の本当の気持ちを知る事が出来て良かったと言ってくれたのです」
「なにっ!では、イリューリア嬢の方も其方との復縁を望んでいるというのか?」
ローディ王子の言葉に国王は、ぱっと表情を明るくさせた。
もとより王も王妃もイリューリアの事はそれはもう実の娘の様に愛しく思っているのである。
そんなイリューリアが王子と結婚して娘になってくれるなら、それほど嬉しい事はない。
「まぁっ!そういう事なら!ねぇ、私だって、イリューリア嬢を娘と呼べるようになるのに何の不足もありませんよ!むしろ嬉しいわ!」と王妃も満面の笑顔で王子に笑いかけた。
そう、王子はとんでもない勘違いをしていた。
イリューリアが許してくれたイコール、また婚約してくれるものと…。
王子は両親である国王夫妻に答えた。
「はい!イリューリアも僕と同じ気持ちです!お互い誤解していただけなのです!」と言い切った。
それは、イリューリアの言葉の端々をとても都合よく切り取って解釈した結果だった。
「ふむ、王子よ、其方の言う事が真実なら、イリューリア嬢に婚約の申し込みをしなさい。ただし、王子である其方が正式に申し込みをすれば、本当の気持ちがどうあれイリューリア嬢は断ることが出来ない。王家への忠誠から、受け入れるしかなくなるだろう。まずはイリューリア嬢の気持ちをしっかりと確かめて、お互いの気持ちが真実、同じものならば、二人でまず私に報告にきなさい」
王子の自信満々な言い様に、もしかして本当にまた、あの可愛らしいイリューリアを娘と呼べるようになるかもしれないと国王夫妻もまた淡い夢を描いてしまったのだった。
それでも、いきなり正式な結婚の申し入れの前に、内々に気持ちを確かめ合ってからと言うキリクア王の言葉は、さすがは”賢き王”と呼ばれる思慮深さと思いやりだったといえるだろう。
しかし、哀れ、ローディ王子のやらかしエピソード…。
黒歴史はどんどん上書きされていくのだった。




