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はじまりは初恋の終わりから~  作者: porarapowan
はじまり
33/77

33.暴くべき罪--05

 カルムは、愛するエマリアの死が自分に懸想した女の勝手な願いの為…つまりは自分のせいだった事に動揺を隠せなかった。


 そんな人間を放置した自分自身も許せないが、事もあろうか人の死さえも黒魔石という()()()()()に願った自分勝手で非道なマルガリータが心底許せない。


 たとえそれが、無自覚の“お願い事”だったとしてもその願いが自分の愛する妻の死であり愛娘の不幸であった事に怒りが止まらなかった。


 一歩間違えればイリューリアとて死んでいたかもしれないのだ。

 カルムは青ざめ肩を震わせた。


 ズキンと頭が痛んだ。

 いつの頃からだったろう?イリューリアの事や今は亡き妻の事を思うと頭に靄がかかったようになり鈍い痛みに悩まされるようになったのは。


 思考に昔のような切れも無くなったように感じていた。

 まだまだ老いるには早すぎるというのに…。

 こんなことでは娘を護る事すら叶わないのではと不安になっていた。


 そのとき、ルークがポンとカルムの頭をなでるようにポンと軽くはたいた。


「ああ、失礼、糸くずが付いていたみたいで…」とにっこりほほ笑んだ。


 すると不思議とカルムの頭痛はおさまり、はっとしてルークを見た。


「大丈夫ですよ。宰相殿、イリューリア嬢は、血族(ラフィリル王家に属する尊い血筋)の姫です。彼女には月の石の加護を授けます。同じ血族の者として放ってはおけません。この私が必ずお守りいたしましょう」


「ル…ルーク殿…」とカルムは、思わず涙が出そうになるのを必死にこらえた。


 そんな二人の様子に「おっ」と、従兄であるダルタスは、面白そうにニヤリと笑みをうかべた。

 ルークが、他人に…しかも女性に興味を持つのは極めて珍しい事だったからである。


 しかしルークのこの言葉にデルアータのお三方は慌てた。


「「「えっ?」」」


「ちょっ!ちょっと待てっ!イリューリア殿なら私が守る!貴公は所詮、他国の魔導士、すぐに国に帰られる身であろう?」と慌てるようにザッツが口出しして来た。


「え?ザッツ!おまえ、何を?」と父であるカルムが慌てる。


 せっかく、ラフィリルの魔導師が守ってくれるというのだから、父としたら藁にもすがりたい心地なのにである!


「そうだ!ザッツ失礼を言うな!」と国王も慌ててザッツを嗜めた。


 何しろ伝説のはじまりの国ラフィリルの不思議(魔法)を目の当たりにした上に、一目も二目も置く相手である!


 そして、ルークは、ザッツの言葉に動じる様子もなく受け答える。


「貴方には無理ですね…ザッツ将軍、貴方は将軍としては確かに、お強い。それは分かりますが、イリューリアが直面しているそれは、剣や槍でどうにか出来るものでは無い。現状の彼女を助けられるのは今、ここにいる()()()()()なのですよ」


「くっ」とザッツが悔しそう声を漏らした。


「貴方自身が彼女を守りたいと願うならさっさとデュムラン商会を根絶やしにした上で黒魔石を排除し、彼女の安全を確保することですね」と不敵な笑みを浮かべた。


 するとザッツは、すっくと立ちあがりルークをにらむように見据えて言った。

「無論だ!彼女を守るのは私に任せてもらおう!私は明日の深夜の作戦の為の下準備に取り掛かる!」

 そう言ってドアを荒々しく開け放ち出て行った。


 傍観者を決め込み皆の様子を伺っていたダルタスがくっくと喉をならして笑った。


「相変わらず、口先だけで人を操るのが上手い奴だな?ルーク!ザッツの奴、すっかりやる気になって…。こりゃあ明日の晩の捕物は、取りこぼしなく一気にケリがつきそうだな」


「ふふっ、ザッツ将軍ほどの猛将と彼の率いる兵士たちなら問題ないでしょうね?何、取引の時間も場所も人数も分かっています。取り扱われる黒魔石も、すぐに浄化できるので問題はないでしょう」とふんわりとルークが答えた。


「え?今のはわざとなのか?」と国王キリアクが聞くとダルタスとルークはふっと曖昧に笑った。


 そして、カルムは、明日の手はずを整えると直ぐ様、屋敷へと向かった。


 帰りの馬車の中、カルムは密かに心に思った。

 イリューリアの伴侶についてである。


 身分だけみれば確かにザッツは王弟でもあり問題はない。

 一度、イリューリアを傷つけた王子は問題外だとしてもだ。


 しかし、イリューリアを安心して託せる相手はもしかしたら、このルーク殿のほか、いないのではないだろうか…と。

 久しぶりに靄の晴れた頭には、そんな考えがふっと浮かんだのだった。

※血族の姫・・・はじまりの国と呼ばれるラフィリルを創りし偉大なる魔法使い達の末裔をラフィリルでは血族の姫と呼んでいます。

特にラフィリル王家はその血筋を残そうとしてきていたのでラフィリル王家に連なる血筋を一般的に血族と呼ばれています。

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