30.暴くべき罪--02
そう、もともと、カルムが学生の頃からマルガリータを話し相手に加えたのも元をただせば、国政警備をいずれは担う者としてその実家の怪しさに興味が引かれ探りを入れたくなった程度の軽い気持ちだった。
そんな時期だった。
カルムが偶然にもイリューリアの母、エマリアに出会ったのは…。
最初はその美しさに驚き惹かれた。
更には、本人と言葉を交わし、カルムは、その人柄にさらに惹かれた。
そして、家が怪しいからという理由で人の気持ちを弄ぶように安易にマルガリータを話し相手に加えたことも後悔するようになった。
清らかで無垢なるエマリアを知ると自らも人としての在り方を振り返るようになったのだ。
カルムはエマリアという女性を敬い恋しく思った。
そしてエマリアもカルムを…。
カルムとエマリアはまるでその出会いが運命だったかのように惹かれあいエマリアの学園を卒業と同時に結婚式を挙げた。
そしてその翌年には、カルムとエマリアは愛娘イリューリアを授かり真に幸せの絶頂だった。
それなのに、エマリアは原因不明の病にかかり手当の甲斐もなくイリューリアが三歳を迎える頃、息を引き取ってしまったのだ。
そして、伝え聞いた不穏な噂…。
『マルガリータ・デュロノワルが、エマリアに呪いをかけたのだ』と…。
最初はそんな話を真に受けてはいなかった。
確かに実家は怪しい商売をしていると踏んでいたものの、普通の人間に『呪い』だなどという荒唐無稽な力が扱える筈も無い。
マルガリータのような普通の娘に、だ。
そう思いカルムは放置していた。
しかしエマリアが死んでから、まるでその機会を狙っていたかのようにグータリム・デュロノワル子爵は私と関わりを持とうと何かと仕掛けてきた。
行く先々で娘を引き合わせ、娘との縁談を進めてきたのだ。
うんざりしていたが、グータリム・デュロノワル子爵の裏の顔を暴きたいという職務的な意識から切らずに一定の距離を保っていた。
そんな、ある日、カルムは、デュロノワル商会に潜り込ませていた部下の一人から、とうとうデュロノワルの尻尾をつかんだとの報告を受けたのだ。
それが”黒魔石”というご禁制の品物の裏取引だった。
その当時、カルムはそんな石の存在は知らなかった。
聞けば、その石には人を呪う力をも持つという…。
そしてカルムは、ハッとした。
エマリアの謎の死、そしてその後直ぐに狙っていたかのように私にすりよってきたデュロノワル父娘。
そして更には、伝え聞いていた不穏な噂。
本当にエマリアを呪っていたのでは?そんな考えがカルムの中に浮かんだ。
それがマルガリータ・デュロノワルへの疑惑が色濃くなった瞬間だった。
そうして黒魔石という存在を調べていくうちに、ただの疑惑はカルムの中で確信へと変わっていった。
ただ、証拠がない!
呪いと言う形亡きものへの立証…それはその”黒魔石”と言われる石を証とするしかないだろう。
しかし、その存在すら知らなかったカルムはに、それを探る術が見つからず苦戦を強いられることとなったのである。
それは魔力に無縁な者の手には余る、とつもなく難しい案件だったのだ。




