29.暴くべき罪--01
「では、その黒魔石の出どころは、間違いなくデュロノワル商会なのですね?」
この国の宰相でもあるカルム・エルキュラート公爵は、ルークに尋ねた。
「はい、次の闇取引は明日の深夜、国境にあるトクトンという村の朽ちた教会跡で行われるという情報が入っております」
「な、なんと、そんな詳細な取引場所や時間まで…一体どうやって他国での闇取引まで調べられたのか…?」
「全くだ!これまで、どんなに優秀な諜報部員を送り込んでもつかめなかったというのに」
カルムも王も驚いて尋ねる。
それは、カルム・エルキュラート公爵が長年求め続けてきた情報だった。
その為にカルムは、どれほどのものを犠牲にしてきたかはかりしれない。
その犠牲の大きさを考えるたびに、何度それを途中で放り出したくなったことかわからないほどだ。
「にわかには信じられんな。ガセネタを掴まされているという訳ではなかろうな?これまでも、そう言った事があったが…」とザッツ・クーガン公爵将軍が訝しむように問う。
「愚問ですね…これでも私は始まりの国、ラフィリルの魔導士ですよ?黒魔石は、我が国の至宝”月の石”を対極とする邪悪な石です。これを感知する程度の力も無くしてはラフィリルの魔導師は名乗る事すら許されません」
その貴公子然として見えたルークという男から、イリューリアと一緒の時には感じられなかった威厳のようなものが今は感じられた。
「「な…なるほど」」と国王キリクアと宰相カルムは頷くが、ザッツ将軍はまだ納得しかねるように眉をひそめている。
国王とカルム宰相、ふたりの納得したような受け答えに、ふっと素の優しい少しおどけたような表情を取り戻したルークは言葉をつけたした。
「とはいえ、魔法や呪いの存在を迷信くらいにしかとらえていないこの国では、魔法でしらべましたから、間違いないデス、逮捕しま~す!とは、言えませんよね?」
「「た、確かに…」」
「確たる証拠を掴む為には、あなた方、自国の宰相や、将軍に現場を押さえて頂かなくては…他国のものが何を言ったところで、この国の有力者の信は得られませんでしょう?」
「「「もっともだ」」」これには王と宰相のみならず、ザッツ将軍も大きく頷いた。
「デュロノワル商会!これで、やっと…やっと、エマリアの無念を晴らせる…」と、カルムが呟くとカルムの肩に国王キリクアが手を置き、肩を抱き労りの声をかけた。
「まさか、こんな形であやつらを一掃できるかもしれぬとは…これも今は亡きエマリア殿の…ひいては、エマリア殿の母君からの引き合わせかもしれんな…」
「はっ、そ、そうか!そうだな、ルーク殿はエマリアの母君の祖国ラフィリルから遣わされたのだから!」
カルム宰相は感極まったように頷く。
だが、そもそも魔導士というものを胡散臭く思っているザッツ将軍だけは納得できない。
「まてまて、ルーク殿!わたしはまだ納得しかねる!一体どのようにその情報を仕入れたというのだ!まさか魔法だなどと言うまいな?いくら貴殿があの伝説の国の魔導士と呼ばれてる存在だとしても…」
「ザッツ、この国で魔法の存在を否定したくなるのは分かるが、まずはルークの話をきけ!」とラフィリア王国のダルタス将軍が口を挟み、ルークに目くばせをした。
そしてルークは頷き手の内にぽうっと小さな球体の光を生み出した。
「「「おおおっ」」」
初めて魔法の光を見たデルアータ国の面々はその光に目をみはった。
そのリアルな映像に先ほど、文句を言っていたザッツも押し黙って見入る。
そこには、闇取引が行われるであろうとルークが言った朽ちた教会が映し出されていた。
「この朽ちた教会のこの部屋の中で取引は行われるでしょう。そしてこの取引を行うのがこの男…そう、宰相殿は、ご存じですね?」とルークがしめしたその光の中に映し出されたその男の顔は、よく見知った男の顔だった!
「やはりっ!やはりかっっ!ルーク殿!感謝する」とカルムは涙目になりルークに頭を下げた。
そこに映っていたのはマルガリータの実父、グータリム・デュロノワル子爵だった。




