28.神秘なるラフィリル王国と魔導士ルーク
王城の数ある貴賓室の一室でそれは話し合われていた。
そこに集まっているのは、この国デルアータの王キリクア・デア・アルティアータ、宰相のカルム・エルキュラート公爵、この国の将軍、ザッツ・クーガン公爵。
そして、この世界の”はじまりの国”と呼ばれるラフィリル王国の将軍ダルタス・ラフィリアード公爵と、魔導士の称号を持つルークという豪勢な顔ぶれである。
ラフィリルという国は、伝説の国とも魔法の国とも呼ばれている国で、この世界で最も信仰せし精霊の加護を受けし国と覚えがめでたい。
その国には、精霊の宿りし”月の石”なるラフィリルの至宝が神殿ごとに満たされており、その“月の石”はこの世界で最も邪悪な力を有すると言われる”黒魔石”を浄化する力や魔を祓う力を持つとされている。
この世界で最も清浄なる神秘なる地とされているのだ。
まだ、新しい記憶ではほんの四年ほど前に、かのラフィリル王国に未曾有の大地震が起き、地下に埋まっていた黒魔石が大量に出現した事件は有名で、その影響で竜の魔物や獣たちが溢れ、王都は壊滅の危機に陥ったという。
その時である。
伝説が現実に発動したのは!
それは、精霊界から精霊賢者率いる精霊軍の二万以上もの軍勢が天空を裂き現れ出でて魔物を一掃したという壮大な話でにわかには信じる事も難しいほどの話だった。
しかし、その話が紛れもない事実である事は、商人や放たれていた密偵などにより各国の知るところとなり、あの富める国を手に入れたいと狙っていた近隣の国もあったろうが、そんな国も精霊軍の僥倖を見せつけられ、ラフィリルに永続的な忠誠を我先にとこぞって申し出たという話だ。
その国には、この国を作り上げこの世界の始まりを創りし始祖の魔法使いの血族で”月の石の主”というこの世界に只一人、精霊に選ばれし生ける女神が存在しこの世界の精霊を従えているという。
その精霊軍の進軍の放つ光は近隣の国々から空を仰ぎ見ても見る事ができたという。
魔法など持たぬ我が国の密偵ですらその夢の様な光景に心洗われ平伏したという話だった。
そして、魔法はなくとも精霊様への信仰は厚い我が国も遠いラフィリル王国へ親書を送り忠誠と友好を結んだのである。
そして、今回の園遊会にも招待状を送ってみた。
隣国と違い遠い国だけに馬で旅しても一か月はかかるという距離にも関わらず、招待状を送った三日後にラフィリアードご一家、親善大使は現れた。
一瞬、偽物かとも疑ったが、実際にダルタス・ラフィリアード将軍と相見えた事のあるザッツ・クーガンが本物だと言う。
我が国なら、誰を使者に選ぶか、それだけで三日はかかるだろう。
どうやってきたのか?それはもう私達の国では思いもつかぬ魔法を使っての来訪?としか説明がつきようもない事実だった。
これにも、国王を始め我ら重鎮たちはラフィリルへの畏敬の念を抱くのは自然の流れだったといえる。
そして魔法使いにも等級があり魔術師、魔法使いとそれらを率いる事が出来、月の石の声を賜ることが出来ると言われるのが”魔導士”であるという。
唯一無二の月の石の主のように精霊を付き従える存在ではないが、月の石の声を賜ることが出来る時点で血族であることは間違いなく、そして魔力とそれを制御発動する技術を持つこの魔導士という称号を授けられる者は何世代に一人と現れるかという確率の偉大な魔法使いだと伝え聞く。
そんな称号を持つルークだが、魔法使い然としてフードやマントを羽織るでもなく杖を持ち歩くわけでもない、目の前の優し気な美しい若者…まだ20代ぐらいにしか見えないこの男がそれほどの力を持つとは、にわかには信じ難いというのが、カルムやザッツ、国王キリクアの考えだった。
”鬼将軍”と呼ばれ近隣諸国に恐れられるダルタス・ラフィリアード公爵の印象が、まさに噂通り、恐ろし気だったのに対して”魔導士”という重々しい称号にある筈のルークのまるで貴公子のような雰囲気に何ともちぐはぐな印象を受けてしまい首を傾げるデルアータの重鎮たちだった。




