26.ローディ王子の懺悔---02-王子視点
わたしはようやく彼女に謝ることが出来た…。
この国の第一王子である私が頭を下げるなど両親以外では生涯彼女にだけだろう。
でも、彼女にならそれをする価値がある。
謝ることが出来て本当に良かった。
悔しいがそのきっかけは、ラフィリル王国からきた魔導士ルークと言う男のお陰だった。
しかし、何故、わたしとイリューリアの事情を?魔導士とはそんな事までわかるのか?胡散臭い奴だと思いながらも、わたしはそのきっかけを利用させてもらうことにした。
わたしが彼女を本当には嫌っていなかったことを伝えると彼女はきょとんとしていた。
「え?そ、そうなのですか?無作法にも殿下のお気持ちも考えず懐いていた幼い私が煩わしかったのでは?」と申し訳なさそうに言った。
やはり彼女は、そんな風に誤解していたのだ。
ああ、誤解も何も“大嫌いだ”などと言われたのだから、そんな風に思うのも仕方のない事だ。
そうとも!彼女は悪くない。
だが、正直なあの時の気持ちをわたしは勇気と情熱を持って伝えた。
そう、それこそ叔父上に言われた『たとえ彼女に嫌われようが彼女が自信を無くしてしまっている事の方が問題だ!』と言ったその言葉に対して確かにそうだと思ったから!
「そんな事はない!逆だ!君は可愛らしすぎたのだ!」
「は?」と彼女は思いがけないという感じの声をあげた。
「え?で、では、なぜ?」と彼女は問うた。
わたしは、その言葉に、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに、どれ程までに彼女を愛しく思っていたのかを語った。
「あの時、私は貴女の事が愛しすぎたのだ。そう、自室に連れ帰り閉じ込めてしまいたいと思うほどに!そんな自分を抑制するために、貴女を遠ざける為に出てしまった言葉だった」
「まぁ…」彼女は困惑したように短くそう言った。
「貴女のためだったのだ…。貴女を傷つけたくなくて出した言葉の筈だったのだが、それが返って貴女の心を傷つけてしまって…」
「そう…でしたか…。それは…思いがけなくて…あの…」
彼女はますます困惑したようだったが、わたしは言葉を続けた。
「あの後も私は貴女を忘れる事は出来なかった…」
そうとも…貴女以外の誰と付き合ってみても、貴女以上に美しく清らかな人はいなかった…そんな想いは言葉に出さず飲み込んだ。
「そして、貴女の社交界デビューの年に留学を終えて帰ってきた時、貴女はその年の社交界には現れなかった。もう私の顔も見たくもないのかと…私はそこまで嫌われてしまったのかと…」
「まぁ、そんな事はございませんわ。私は自分の至らなさを悔しく思った事ならありますが、まさか殿下を嫌うなどありえません」そう、きっぱりと彼女は言ってくれた。
「わたしを…許してくれると?」私が震える声でそう言うと彼女はふっと優しい笑顔で言ってくれた。
「まぁ、お互い嫌われたと誤解していたのですね?でも、良かったですわ誤解が解けて…。ご心配なさらなくても私は砂粒ほども王子殿下に対してお恨みするような気持ちは抱いておりませんわ!むしろ本当のお気持ちが知る事が出来て良かったです。これで前を向いて進んでいけますもの」
そう言って、私の方を見た彼女の瞳は未来を夢見るように煌めき美しかった。
ああ、やはり彼女はなんて優しく慈愛に満ちているのだろう?
しかも彼女はこれ以上ないほどに美しい。
彼女ほど未来の王妃に相応しい人はいないに違いない!
彼女が許してくれるというのなら、何も問題はない!
そう、わたしは思いこんだのだった。
(それが、とんだ見当違いだとは思わずに…。)
▼作者の呟き▼
ううむ…ローディはここまで、最初、ここまでお馬鹿さんな王子になる予定ではなかったのですが…。




