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はじまりは初恋の終わりから~  作者: porarapowan
初恋のおわり
20/77

20.ラフィリルの賓客たち--01-ルーク

 昨日の出来事はまるで夢かと思われる位に幸せと驚きとときめきの連続だった。

 それは、父や親善大使の皆さまをお待ちしてる間の事だった。

 私は子供達とルークと名乗るラフィリルの明らかに身分も高いであろう貴公子とともに別室で過ごしていた。


「僕の事はどうぞ、ルークと呼び捨てにして下さい。その方が気楽ですし」


 綺麗で上品なルーク様にそう言われちょっと私は戸惑った。


「まぁ、でも、ルーク様もラフィリアード家の方では?どう拝見しても召使いには見えませんし…」


 そう、どう、控えめに見てもルーク様からは高位貴族とも王族とも思える気品が漂っていた。

 お名前だけで家名を名乗らなかった理由はわからないが少なくとも召使ではなく親善大使と共に来られるくらいのご身分であることは間違いないのだ。

 年齢だってローディ王子殿下よりも上のように思われ、自分等が呼び捨てになどして良いのかと思ってしまう。


「ん、まぁ、親戚…なんだけどね。この、やんちゃな双子たちを制御出来る者がいなくて、()()()()魔法を使える僕がお守にくるようにこの子の母親に頼みこまれちゃってね」


「えっ!まぁっ!()()!とおっしゃいましたか?」


「え?ああ?そうか、この国では魔法ってないんだっけ?」


「え、ええ!ラフィリル王国は魔法の国とも呼ばれていますものね?ルーク様は本当に魔法使い様でいらっしゃるのですか?」


「ルークでいいってば…」


「あ、はいっ。ああでも…では、私の事もイリューリア…とどうぞ呼び捨てになさってくださいませ」

 普段の自分が男性の方にこんな事を言うのは考えられなかったけれど、ルーク様の…いえ、ルークの優しい雰囲気や見た目のせいか驚くほどすんなりと打ち解けることができた。


「わかった!うん。イリューリア、本当だよ。でも魔力だけならこの子たちの母親やこの子達の方が僕より多い」


「ええっ!この子たちも魔法使いなのですか?」


「正確に言うと違うかな。魔力を持っているだけで魔法使いとは言えない」


「まぁ、そうなのですか?」


 どうやら、魔力を持っていても魔法が使えるとは限らないらしいことに私は驚いた。


「僕の国では、学園の教育課程で学科を選べるんだ。学士科や騎士学科、魔法学科等、色々ある訳なんだけど、僕は子供の頃から神殿に預けられて魔法学科に上がってきちんと自分の魔法をコントロールして使う術を学んで魔法使いの称号を得た。この子たちも将来、魔法学科に進めば、僕なんかよりすごい魔法使いになるんだろうけど…今はこの子たちの魔力はこの”月の石”で封印してる感じかな」と双子の男の子の方、ジリーの腕にはめられた美しい乳白色の石のブレスレットを見せてくれた。


「これ、おまもりなの」とジリーが短く言うとリミアもぴょんぴょん跳ねながら私に付け加えて説明してくれた。


「うん、ジリーとリミアのおまもりなにょ!あにょね、つきのいしにはぁ、せいれいが、いるんでしゅよ」と言いながらリミアも自分の首につけた”月の石”ついたペンダントを得意げに見せてくれた。


 まだ、しゃべり慣れていないたどたどしいしゃべりが、凄まじく可愛らしくてイリューリアのハートはどきどきのきゅんきゅんだった。


「はうっ!なんて可愛いの!え?精霊?この石には精霊様が宿ってるのですか?月の石って、えっ!まさか、()()月の石っっ!?あの伝説の石の事ですよね?ほ、本物の月の石が見られるなんて!」


 ”月の石”とは、この世界のはじまりの国と言われるラフィリル王国の至宝の石で、その石には精霊が宿り、黒魔や邪気を祓うと言われている。


 そんな奇跡の石が今、目の前にっっ!と感激と興奮でくらくらしていると可愛い双子たちが私をもっと喜ばせようとしたのか、とんでもない事を言いだした。


「いりゅおねぇしゃん、せいれい、みたい?」

「みたい?」


「ま、まぁ、それは勿論…お目にかかれるものなら…」


「おかーしゃまが、めいじたら、せいれいしゃん、でてくゆの、あとで、おかーしゃまきたら、おねがいすゆの」


「ん、でもね、でもね、りゅーととかは、せいれいだけど、きまぐれで、かってにでてきたり、しゅるからかあしゃまいなくても、あえるかもなの」


「ま、まぁ、リュート様という精霊様は自由なのですね?って…月の石に命じるって…まさか、あなた方のお母様って!」


 その石の加護を受けられるのは、(いにしえ)のこの世界のはじまりの国を作りし、八人の魔法使いの血を受け継ぐ者のみという。

 そして、その石の力を引き出せるのも生み出せるのも、血族の中で最も穢れなき魂を持つ精霊に選ばれし者…月の石の(あるじ)のみとされている。

 まさか…まさか、この子たちのお母様が?


「やれやれ、これだから子供は…こらっ!ジーン、リミア、それは言っちゃダメだろう?」

 ルークは眉根を寄せて二人の子供達に「めっ」というような顔をした。


「「ひゃっ!」」と二人はしまったというような顔をして両手で口をおさえる。

 そしてそんな姿まで愛らしいのだから、全くもって手に負えない。


「ごめん!そうなんだよね。この子たちの母親ルミアーナは”月の石の主”、君はラフィリル王国に詳しいようだから知ってるかな?」と、ルークが困り顔でリミアとジーンの頭を軽くちょんちょんと小突いた。


「っ!もっ…もちろんです!血族の中、精霊様方から唯一、主と認められる現存する女神様のような存在ですわ!伝説の中だけの存在かと思っていましたけれど!本当に実在されてらっしゃるなんて!」と真っ赤になっているのが自分でも分かるほど興奮してルーク様…ルークに振り返った。


「あ、あ~、女神?うん、ま、まぁ、その通りっちゃ、その通りなんだけど…あんまりハードルあげないでやって…ルミアーナ、確かに見た目は女神級だけど、中身、女神っていうより、むしろ男前っていった方がいいくらいだから…」


「は?」


「あ~、夢を壊して悪いんだけど、"月の石の主”っていっても割と普通の人だし、親戚のお姉さんくらいに思っていいんじゃないかな?君とルミアーナ、ほんとに、すっごい似てるし…実際、君のお婆様はラフィリルの王族でしょ?親戚だと思うし。それとルミアーナが月の石の主っていうのは内緒にしてもらえると嬉しいな。まぁ、この国では”月の石”のこと自体、知ってる人も少ないとは思うからそんな大事にはならないと思うけど…念の為!」


「はっ!はい!そうですね。わかりました!」わたしはコクコクと首を縦にふって頷く!


「それとね、女神級に美人ていうのは本当!そして君が、そんなルミアーナにそっくりだっていうのものね」とウィンクした。


 その意味を考えてまた私は顔が熱くなった。

 そ、それって私も女神級に…って意味?まさか?


 あり得ない!


 そう思いながらも、ルークは私の事を綺麗だとおもってくれているの?…と、そう思うとなぜか胸がきゅうっとなって呼吸が苦しくなった。

 顔がほてって熱い!とにかく落ち着かなきゃ!と焦る私だった。


※月の石とは

ムーンストーンのような見た目ですが、この話に出てくる月の石は、精霊が宿るとされる聖なる石です。



「目覚めれば異世界!ところ変われば~」

https://t.co/B7bfcHtxVM #narou #narouN2220ES

のお話の中で出てきた石です。

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