【e4m21】誘引フェロモン
ゲームにかまけてました。申し訳ないです。
「(´·ω·`) そっか。めぐたんとささみん、まだケンカしてるんだ……」
昼食を食べ終えた俺と常田先輩は、中庭のベンチに腰掛けていた。楽しくお喋りはできず、必然的に話題はメグと小早川氏のことだ。俺は状況や胸の内を含めて、全てを吐露していた。先輩は2人の確執を直で見ているので、何も言わず、じっと耳を立てている。
「困りましたね。冷却期間とか言って、俺もう手詰まりで――」
「( ╹ω╹ ) ねーおーみやくん」
俺の言葉が終わるか終わらないうち、先輩が言葉を挟む。顔を向けると、彼女は柄にもなく真面目顔だった。
「( ╹ω╹ ) おーみやくんは、本当になか直りさせたいの?」
「え……?」
「(๑¯Δ¯๑) まいにはね、何かと主人公だからとか、キャンペーンミッションだからとか、なんというか……イヤイヤぎむ感が見え隠れするよ」
寸鉄が深く食い込み、体が強張った。感のいい読者諸氏は、俺がエピソード1で見せた、“なんで俺は、カレンの事ばっか考えているんだ⁉︎”的な必死さがない、と気づいていたかもしれない。
「(◍︎˃̶ᗜ˂̶◍︎) おーみやくん、女の子にベタベタしない引きぎわの良さがあるから、こんなトラブルは、きょりおきたいもんね?」
「……」
「(๑╹ω╹๑ ) もし桜ちゃんだったら、おーみやくん、ひっ死で助けるよね? けど、めぐたんもささみんも、りょーしきあるコだから、おーみやくん、手を出さなくてもいいって思ってない?」
平然とした顔で、ザクザク俺の本音を掘り出していく。全くその通り。今回は小早川氏だからな。正直、何もしなくったって、彼女は自分でケリをつけるはず……そう心の底で高をくくっていた。
けど、エピソード後半に動かなければ、“覚醒”実績を解除した主人公の資質はないし、鹿島から“残念”と失望される。だから、キャンペーンミッションにこじつけたんだ。そうすれば本心の隠れ蓑になる。俺がミッション目標に従うのは、単にそうしないと物語が進まないと、皆考えるからだ。
要は、ちょいと騙していたことになる。そんな俺を、責めるどころかニコニコと悪戯っぽい笑顔を向ける先輩。
「 (∗ ˊωˋ ∗) ねー? まい、おーみやくんの事、よく知ってるよ?」
してやったり顔に何も返せない。それは、コマンダーという職掌のなせる技だろうか?
「o(๑•̀д•́๑)o けどね、同じ女の子として言うけど、このままだったら、2人ともきょりとったままだよ? 同じ部室で、すっっっごぐ気まずいよ? すぐになんとかしなきゃ!」
確かにそうだ。今の同好会メンバーは、全員忌憚なく物が言え、仲良しすぎてデスマッチすら始まる始末。その中に、不仲のペアがいたら、カレンですら居心地の悪さを感じるだろう。誰もがメグと小早川氏との距離を気遣って、ぎこちない。
「(๑¯ω¯๑) それに、れいきゃく期間って言っても、本当は、なか直りしたいんだよ」
「マジっすか?」
「(。-`ω´-) だってエピソード3の時、ささみんはめぐたんをすごく心配してたから」
小早川氏は、無言裡で語らせないようにしているから、本心はわからない。けど先輩の謂には傾聴の価値がある。メグが自宅謹慎になった時、氏は情報収集してたし、俺の整備をサービスマニュアルで助けてくれたし、スペアパーツを見つけるのも手伝ってくれた。
『自分も他人じゃない。ミーガンの友だち。ミーガンは、一番自分に声かけてくれる』
『貴方はミーガン好き? 自分は大好き』
氏の従容とした声が脳内で蘇る。
「(๑’ᵕ’๑) ささみん、お友だち想いだよ。けど、きっかけなくて困っているんだ。そんな時こそ、おーみやくんだよ。ささみんも、おーみやくん助けてくれないかなって思ってるよ、きっと!」
「……本当にそう思います?」
「٩(ˊᗜˋ*)و うん、コマンダーまいちゃんが言うから、間ちがいなしっ!」
軽いノリで背中を押された気がしなくもない。だだ、確かに背中は押してくれた。先輩が“氏も助けを求めている”と言うなら、俺もそう信じよう。ぽや〜んとして、ゆるふわ系お色気担当大臣という認識は改めないとな。
「ありがとう先輩」
「٩(◍︎˃̶ᗜ˂̶◍︎)و どーいたしまして! どーしてもむずかしー時は、まいがなんとかしてあげる! まいなら、ささっと2人をなか直りさせてお終い。そしたら、おーみやくんとラブラブエピソード開始だよー❤︎」
キャーっと1人悶絶する。ふざけているようで、実は俺の気を重くさせないお茶らけだろう。随分と気を回すものだと苦笑が絶えなかった。
『2年F組大宮伸一さん、至急生徒指導室に来なさい。繰り返します――』
「( •᷄ὤ•᷅) え……?」
「ああ大丈夫です。多分謹慎解除の申し渡しですね」
「( •᷄ὤ•᷅) ならいいけど」
「じゃ、ちょっと行ってきます」
もうそろそろ畳み掛けるつもりです。