表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大宮伸一は桜カレンにフラグされた。  作者: 海堂ユンイッヒ
63/212

【e3m11】Loading...(2)

割と早く書けました。カレンとのぞみの喧嘩は書きやすいです。

「櫻カレンッ!!!」

 教室のドアが、凄まじい力で開く音がした。そして、この大音声(だいおんじょう)。相当血が上っているな……。

「そちは海内(かいだい)()っての烏滸(おこ)者よ! 何篠(なんでふ)さる事有るべし!」

「な、なんなのよアンタ……」

「あさましくいやしき心やと言はまし。此れ知らずとは言はせじ。いかでかしらを切れようぞ。只今泥を吐けッ!」

「このチビ何キレてんの? マジでわかんないんだけど……」

 俺はずっと本から目を離していないが、カレンが当惑するのも当然だ。辻さんが躍り込むなり、理由も述べず一方的に怒鳴られているから。側にいた鹿島が、不穏を察して前に出た。

「ねぇ、ちょっと落ち着いこうよ? 怒っている理由を教えてくれないかな……」

「かく申すは、(しょう)番匠(ばんじょう)より(にわ)かに便りありて、曰く『宮が処、再建の兆しあり。しばし待たれし』と」

 マジ⁉︎ 俺の家、復旧するって……⁉︎ 

 どうせロクなことになるまい、関わるまいとしていたが、家が復旧するとわかったなら話は別だ。まあ、辻が乱入した時から、もう本の内容は頭に入ってなかったが。

(しょう)大いに驚きて、宮どのが処に()けども、之既に灰燼に帰せり」

「それ、アタシじゃないって……どーしてシンイチの家が吹き飛んだら、アタシが犯人って決めつけるのよ……」

 そりゃカレン、今まで俺の家を吹き飛ばしたのは、お前しかいないからだ。当然、辻さんもそのように考えたのだろう。

(たれ)そ櫻が下手人(げしゅにん)にあるべからずと思わん」

「あ、それはね、本当にカレンちゃんじゃないよ。メグちゃんだって」

「……宮どの!」

 ドシドシと足音を立てて、俺の前までやってきた。

「こずゑどのの言いは、誠か⁉︎」

「うん」

 被害者本人から確証をもらった途端、辻さんの色は、なんとも苦々しくなった。しかし一度抜いた刀は、容易に引っ込められんのだろう。怒りの方向をカレンからメグに変える。

這奴(しゃつ)! あの半西播人か! 今より行きて一言物申さ――」

「アンタさぁ、無実のアタシを(なじ)って、詫びの1つもねーの?」

「ほ、()れ言を。チンパン御前に垂れる(こうべ)など、持ち合わせておりませぬ」

 カレンのレイジメーターを煽るかのごとく、呵々(かか)と嘲笑う辻さん。お前、それが余計な火種となろうに……。

 バァンと、カレンは両手で机を叩いた。火中の種が早くも弾けたわけだ。イベント開始時から、不穏な空気が漂っていたが、それはもう完全に教室中を充満していた。クラスメイトの中には、すでに廊下に“疎開”している奴もいる。

「やっぱ1日1回ぶっ飛ばさないと、気が済まねー。その端正な顔が、オカメ顔になるまでタコ殴りにしてやんよ」

「あいや、凄文句よろしく並べても、(しょう)には面白う覚え候うのみ。()く疾く一打なりとも浴びせよ」

 あとは予想通りだ。初めは周りに遠慮して接近武器で戦うが、途中から机など環境物を投げ合い、しまいににゃ銃火器・爆破物なんでもござれ、となる。

 はぁ……“校内問題は2年F組発”と職員室で囁かれているそうだが、そりゃ本当だわ。今まで、俺が犠牲になれば事が終わっていたが、今ではしょっちゅうデスマッチが勃発しているからな。

「(ૢ˃ꌂ˂⁎) ヒロイン同し、つぶし合えー!」

 そして、なぜか先輩が俺の側にいるし。もう勉強どころじゃねぇな。

「(ㆆ﹏ㆆ) ねぇおーみやくん……めぐたんのかおりがするよ?」

「へ?」

「(☍﹏⁰)。 ねぇなんでなんで? なんでめぐたんのかおりがしみ付いているの?」

 もうね、浮気の疑いですよ。既に涙目だ。ここできちんと説明しておかないと、この人の疑惑は、どんどん根を張って取り返しのつかないことになる。

「あのですね、かくかくこういうワケで(以下省略)」

「(´•ω•`) じゃあ、おーみやくん、めぐたんと一しょにいるんだ。ラブラブなんだ……」

「先輩、誓って言いますが、そんなんじゃないっす。仕事しかしてないっす」

 周りから見ると、真摯に浮気を弁解する男でみっともない。

「(๑•́₃•̀๑) まいにそうだんしてくれれば、よかったのに」

「さもありなん。などかは何事ものたまわせぬ。御辺はさらぬ人にあらず、(しょう)かように侍れば、事にふれてさのみこそ申し承ることにて侍れ。うとくおぼすべからず。便りあらむ事は、憚らずのたまわせよ」

 うおっ! カレンを片付けた辻さんが、ずいっと目前に出てきた。“Karen was blasted by Nozomi's Satchel charge”というログは消えかかっていた。そして、蘇生用注射を持っている鹿島を(きっ)と見逃さない。

「こずゑどの! 其奴(そやつ)の黄泉がえりは後にしてくだされ。忌々(いまいま)しい事限りなし」

「いやね、2人のご好意はありがたいけど…………」

「けど何ぞ? はやはや申せ。御辺は栄螺(さざえ)か」

 前にも言ったが、辻さんの家には犬がいて、先輩に至っては、良からぬ事件が起こりそうでな……。

「( •́ㅿ•̀ ) そんなにめぐたんがいいんだ……」

「気落ちなさるな艶色御前。かく申すは、これなん恵どのこそかりそめのヒロインなり。宮どのは、左様な柔弱骨(にゅうじゃくほね)にございませぬ。はて、さては我が駄犬にこそあれ」

 2人して詰問されていると、ちょうどいいタイミングでチャイムが鳴った。

「おい授業始まったぞ。もう教室戻れ」

「……口惜しや。などか歳1つ違えば、千里を隔てらるるか」

「(p′︵‵。) まいちゃん、おーみやくんと同じ年に生まれたかったよ……帰りたくないよー」


Nozomi was fragged by Karen’s Panzerfaust.

Mai was fragged by Karen’s Panzerfaust.

Shinichi was fragged by Karen’s Panzerfaust.


「ブンダバー! マルチフラグゥ! 強制退去させたったわ!」

「大宮くんまで巻き込む必要なくない……?」

今回も読んでくれてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ