【e3m3】Stealth
今回のネタは、DeusEXをパロディにしてます。
次の日の放課後。早速ステルスミッション開始だ。俺のミッション目標に、“eスポーツ同好会のノートパソコンを奪取”が追加された。しかし悲しいかな、それには何1つ秘密情報は入っていない。一体なんのために盗み出すのだろうな……。
そうそう、幸運なことに今カレンは不在だ。あのバカ、数学の小テストで散々だったので、呼び出しを食らっている。今回のお馬鹿イベントは、あっさり終わりそう……と思うと、自然とニンマリする。
教室を出て、廊下を歩いていると、遠目でも目立つ金髪の女子がいた。俺を見るなり、その欧米風の顔をニッコリさせて手を挙げる。
「何しよーと?」
「生きとーと」
俺の応答を聞いて、メグはキャッキャと笑った。
「あのさ、辻さんから聞いてる?」
「Yep」
なら話は早い。それにしても、今から遊びに行くノリだな。
「ねーねーウチ、良さげな武器ば持ってきたと。1つ選ばんね♪」
【選択肢】
●遠距離から連中を狙い撃ちたい。狙撃ライフルを持っていく。
●重装甲に苦戦したくない。ゲップガンをくれ。
●クロスボーを。時々こっそりとはっ倒したくなる。
「おすすめはゲップガン! これにせんね! ね? ね? ちかっぱすごかよ〜!」
目をキラキラさせている。情けない名前をしているが……これはロケランなんだよ。つか、どこからこんな未来兵器を調達したんだ?
「俺ステルスでいくから、いらない」
「ウソやろ⁉︎ 派手に音鳴らさんと?」
「ダメです。みんなに迷惑かけないように」
「もーシン好かん!」
プイッとする。あーあ、好感度減ったなコリャ。
「ってかさ、家の手伝いはいいの? 今日は」
「大丈夫やろ。朝ガレージ見てきたばってん、車んなかったし」
どんどん設定緩くなってないか? これさ、エピソード後半になると、繁忙期になる設定だろ? 都合よすぎるわ……。
「そーそー脱出はね――」
急にメグは表情を引き締めた。
「ウチが相手ん気ばひくけん、さっさと屋上に行かんね。チョッパーば待たせてあっと。会室までひとっ飛びたい」
「歩いていける距離を、わざわざヘリで?」
「なん、追手から確実に逃るためやろ?」
なるほど。たとえ数百メーターだとしても、追撃は危険だからな。乗り物、しかもヘリコプターに乗れば、よっぽどのことがない限りミッション終了地点まで飛べる。一見お気楽そうな性格だが、よく考えているのな。
「エンジならではの芸当だな。けど俺、操縦できないし免許も持たんぞ?」
「心配せんでよか〜」
2人して飛翔館に来た。辻さんの情報では、カレンはここの一室に同好会のパソコンを隠した。そして、文化系の部活が入っているので、人目も多い。今も軽音楽部の音色が聞こえてくる。
「なああん、あれ……」
メグが漏らすのも無理はない。昨日辻さんから、“徒党”と聞いたが、こいつら2年F組、G組、H組、つまり唐揚げパンウォーフェアのブルーフォーが、固めているじゃないか……。
流石にバカの校内謹慎を見ているので、武器こそインベントリに隠しているが、定位置で警戒したり、周りを巡回している。中にもわんさかいるのだろう。ただ、少なくとも俺はまだブルーフォーなので、コソコソするには及ばない。
正面玄関に向かった。数名の女子が守りについていた。
「大宮君、こんにちは」
と無味乾燥な挨拶をする。しかしメグを怪しげにジロと見た。まずいかな……?
「オプフォーのメイヤーさんでしょ? 何の用? 部活の人でもないし」
「さっきキャレンに言われて、電気の配線ばチェックしに来ただけたい。そげんか目で見らんでもよかろーもん」
大きく肩をすくめ、自然に振る舞う。
「そんな連絡受けてない。確認をs――」
「なああん、せからしか。急に言われたと。別ん通してくれんでもよかよ? ばってん責任とらん。キャレンから目玉くらうのそっちやけん。ねぇ?」
動揺する女子をよそ目に、メグはウィンクで同意を求めてくる。
「俺も知らんぞ」
カレンのフラグ被害者の言葉は、重かったらしい。早々ブラフに屈して、俺らは通行許可を得た。幸先は上々だ。メグの奴、小さく『YES!』とジェスチャーを決めた。
何気ないフリをしながら、館内を物見する。部活のため往来するシビリアンもいるが、ブルーフォー連中がたむろし、道ゆく連中の顔を伺っている。やがて、徒党を組んで歩いてくる一団が目に入った。恰幅があり、大声あげて指揮しているの男子……G組の菅だった。
「そこのダクトは大丈夫か? 相手は長い髪で小さな女子だぞ、絶対に見逃すなよ?」
まだ俺らには気づいていない。しかし、奴はカレンに近い存在で、勘もいい。目立つメグの存在を知られるのはまずいな。彼女の背に手を当て、方向転換する。
「?」
キョトンとした顔を尻目に、早足でここを去った。つかさ、なぜ菅を含むブルーフォーの連中は、カレンの私兵になっているのか?
「あ……」
そんなことを考えていると、鹿島に出くわした。
「お前、会室に行ったんじゃ?」
「ちょっとお腹すいたんで……」
と少し顔を赤めて、自販機を指差す。放課後から購買部は閉まるので、腹が減った奴はここに来て固形栄養食品を買う。
「なら、これ食べんね」
メグは、ポケットからキャンディバーを取り出して鹿島に渡した。
「いいの?」
「よかよ♪」
「ありがとう。えっとね、自販機隣に扉があるでしょう? そのテンキーパネル番号を教えてあげる。と言っても、私ものぞみちゃんから教えてもらったんだけどね。外には誰もいないっぽいよ」
「グレイト! 脱出で使うけん」
「私、部室で待ってるね。くれぐれも派手なことはしないように」
そう釘を刺し、彼女は去っていった。
今回も読んでくださってありがとうございます。