【e3m1】smiling
誰も待ってないと思いますが、やっと冒頭部分だけ。しかし、次のおバカイベントは筋書き程度しか考えておらず、後の真面目な話に至っては全然です。
俺は瀕死だった。
下半身に力が入らず、立ち上がれない。意識が朦朧として、やけに光まばゆい。
隣で、メグがうつ伏せで足掻いていた。
校庭には、色とりどりの煙が立ち昇っている。
ATVはひっくり返って、火を吹いている。
足元にカレンと菅が歩いて来た。
クソッ……アクション物の定番、絶体絶命のシーンから始まったじゃねーか。どうせここから回想に飛ぶんだろ? そして、話が繋がる形で戻ってくるわけだ…………。
“このゲームの根幹は、プレイヤーの自由である。開発陣は『可能な限りパズルをなくそう』というコンセプトで制作し、ミッションの解法には、必ずいくつかのパターンが存在する。例えば、扉を開ける鍵が必要となった場合――”
eスポーツ同好会の会室。俺は鹿島のタブレットで、新作ゲームのレビューを読んでいた。
「いでや。此度こそあなづりやすかれ!」
「このチビ、マジでウザすぎぃ!」
あっちで、会のノートパソコンを引っ張り合う騒ぎを除けば、実に穏やかな放課後だ。
「はいどうぞ」
お茶が置かれた。看護科の鹿島梢だ。ふむ、各ヒロインの紹介がてらに、さっきのレビューを当てはめてみよう。
「例えば、扉を開ける鍵が必要となった場合、お前は……“所持者と交渉して、穏便に入手する”ヒロインだな」
「え?」
「いや、気にするな」
「そんなに欲しいなら、デスマしろミジェット!」
“鍵など探さず、ロケランで扉ごとブチ破ってしまう”普通科、桜カレンが金切り声を上げる。
「おう申されたり、申されたり!」
“鍵など探さず、ハッキングかピッキングで解錠してしまう”情報科、辻のぞみも血気盛んに呼応する。
嫌な音がした。あいつらの手元に視線を向けると、ノートパソコンは2つに割れていた。
「すわ、したり! 物の用に立つべくはこそ……」
辻さんの色は草葉の如く、手に持つモニター部分に目を落としていた。
「っしゃ! 辻のんが壊した! これでVoodoo 590M搭載機を要求できる!」
相変わらず、銀河級バカの脳は理解不能だな。それ説教じゃ済まんぞ?
「バリウケる。真っ二つになっとるやん。毎日こげん楽しかと?」
今日、ここには別の女子もいた。
澄んだ碧眼と照り輝く金髪を持ちながら、福岡弁でカラカラ笑うハーフ女子、メグ・R・メイヤー。“鍵を器用にクラフトする”技術科だ。
「楽しくないね。QTEの巻き添え食らうし……」
「辻のんがっ! パソコンをっ! 壊しっ! ましたぁ!」
カレンが、スレッジハンマーをパソコン本体に何度も叩きつけていた。ケーブル、メタル、プラ、セミコンダクターなどの素材が、部室中に飛び散る。
「あーあーどーしてくれんの? コレもー使えねーじゃん」
自ら徹底的に叩き潰した後、カレンはその残骸を辻さんに突き出した。
「このこともの狂ほし……」
俺の従姉妹は、あらぬ科を受けて、カレンを睨み返す。
辻さんが旧式のノートを欲しているのは、“情報教育室の1台が壊れて、本来そこに割り当てられるものが、eスポーツ同好会に来た”、という理由だ。
一方カレンは、その低スペック機になんら執着ないものの、単に辻さんの都合通りになるのが気に食わないので、嫌がらせをしている。
「もーなんしよーと。あたらことして。ちょっとかしんしゃい」
見かねてメグが席を立った。散らばった素材、ディスプレイ部と本体を集め、ドライバーを取り出すと、あっという間に修理してしまった。さすがエンジニアだな。
「ちょっ! 何してんの! せっかく壊れたのにぃ!」
「Hahaha! BMPのお返したい」
壊れたのをこれ幸いとし、事務室にゲーミングノートPCを要求しようとするカレンの魂胆は、もろくも崩れ去った。ちなみにお返しとは、エピソード1の唐揚げパンウォーフェアで、カレンがメグのBMPの照準器を汚して、使用不可にしたことを指す。
「あっ! 待てチビッ!」
隙をついた辻さんが、メグの手からパソコンをかっさらって逃げた。カレンも駆け出す。鹿島は、ほっと安心の吐息。ここでデスマッチが始まらずに済んだからな。
「やれやれ、災難は去ったか。ともかく、ありがとな」
「Not at all」
と流暢な英語と共にウィンク。俺は日陰者だから、こんな屈託のない笑顔に弱いんだ。部室の外は、立木が並んで日光が入らず、内は古い電灯があるだけで暗い。だけど、彼女の人柄とそのスマイルは、ここの光量を増やしているように感じた。
「今日は、お家のお手伝い大丈夫なの?」
鹿島が尋ねた。そう、彼女もeスポーツ同好会員だが、家業の手伝いをしてあまり来れない。
「Yep. 最近暇しとると」
だったら繁華街にでも行けばいいのに。けどメグのやつ、このボロ屋がいたく気に入ったらしい。
「ここ秘密基地のごたばってん、狭なか? メンバー何人おっと?」
それは欧米の感覚で狭い、ということか?
「7人だが、3人だけ? いつもいるの」
「そだね。だからあんまり手狭とは思わないなぁ」
鹿島は、自分とメグのお茶を持ってくると、ハンドクラフトの“大宮くん人形”をチクチクし始めた。
「ウチまた来てよか?」
「そりゃ来るもなにも、お前も会員だからいつでも来いよ、なぁ?」
「うん」
「Hoo! 嬉しか!」
こんな些細な事にさえ、大げさに喜ぶ感覚は、ちょっと俺にはわからん。
しっかし、ちょっと目のやり場に困るなぁ。なぜなら、彼女は露出が際どいんだ。背が高いので制服の着丈が足らず、引き締まったお腹が丸見えだし、スカートは極端に切り詰めている。
「どこ見てるのかな?(オートミールおじさんの笑顔)」
「外ノ風景デス」
お茶をすすって表情を隠す。
「なああん、シンのいやらしか。ウチばそげんか目で見とっと?」
ウヒヒと、矯正済みの白い歯を見せて笑う。あまり親しくない俺に見られても、気にしない性格なんだ。
「メグちゃん、大宮くんは心配ないけど、ちょっとは周りを気にしようね?」
「いやばい。長かスカートとか動きにっかし。シンも色々見えた方がよかや――」
【選択肢】
① はい(即押)
②
「(オートミールおじさんの笑顔)」(レイジメーター↑↑↑)
「Hahaha. 話ば戻すばってんくさ、ちとココ狭かし、床んブヨブヨする所もあるやん」
だな。ウチには加減を知らないバカがいるから、いずれ底抜けるぞ。
「けどなぁ、どうしろと?」
「DIYやろ?」
さもありなんという顔。さすが欧米の血を引くエンジニアですねぇ。
「外に素材あるごたし」
と立木を見やる。伐採ですか?
「狭いのはどうしようもないけど、ちょっとした欠陥は直したいな」
鹿島も同調する。そうだよな、女子が占める部としては、現状ちょっとどうかと思う。前の掃除イベントでは、どうしようもなかった所もあるし。メグが協力してくれれば、補修できる所も多いだろう。
「ライトだけでん替えんね。ウチ暗かつ好かん」
口をとんがらせて、古めかしい電灯を見上げる。陽気な性格は明るい場所を好むのな。
「湿気っとるのも。これ使うて通気よくせん?」
ダイナマイトじゃ、何もかも通してしまいますねぇ……。彼女さ、わざと戯れているのかマジなのかわからん。BMPを持ち出したり、ゲット&ランで大暴れしたり、コンバットソフトボールで能力を発揮したりと、やりたい放題ではあるが、少なくともカレンより良識はある……と願いたい。
「とりあえず、バルブば事務室に替えてもらって……壁紙はウチにあるのば貼りたかね」
俺らは反対する理由もなく頷いた。それからメグは、壁の染みや隙間など、1人で調べながらあーだこーだ提案した。後日、リフォームシムみたいなイベントが起こるのかもしれない。
鹿島も、“大宮くん人形”の手を止めて、微笑ましくメグを見ていた。きっとリフォーム後を想像しているのだろう。
「メグちゃんが来てくれてよかったね」
「ああ」
「せやろせやろ♪」
カレンや鹿島にない、異国情緒漂う色気が―― ゔっ!!!
Shinichi was fragged by Kozue’s voodoo doll.
「あっ……メディックともあろう者がっ……!」
「LOL」
!実績解除!【この浮気者っ!】
:条件:鹿島梢に嫉妬させた。
エピソード1のぜい肉削ぎは終わりました。次の2は字数が不足しているので、もうちょっと鹿島の描写を増やしたいと思ってます。その間に3のアイデアが浮かべばいいのですが……。とりあえず毎日作業はしているのでご了承ください。