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大宮伸一は桜カレンにフラグされた。  作者: 海堂ユンイッヒ
43/212

【e2m13】チーターズの最期

やっとコンバットソフトボール終わりです。私自身、公民館のソフトボールに短期間入っていただけで全然経験がないので、ルールとかわかりません。

「っしゃ! 今度こそ逆転っしょ! 7点なんて余裕じゃん!」

 カレンちゃんは(げき)を飛ばします。まあ諦めないことは大切だけど……既にそうしている人は、深いため息と共に頭を振ります。

「あさましくいやしきと言はまし。此の期に及びて、かくなる心持ちは何処より萌え出ずりましょう。ひとまど(なづき)を煮て、消毒されたらどうか?」

「黙れお歯黒!」

「すわっ、()がお歯黒か! 宮どの! (しょう)鉄漿(かね)入れはしておりませぬ」

「お、おう……」

 のぞみちゃんは(みやび)な顔をイーッと崩して、大宮くんに見せつけます。

「にしてもよ、前半はフルボッコ、後半はスキルの披露会になってんじゃん。もう全然面白くねーよ。俺が読者だったら、とっくに別のラノベ読み始めているな」

『ダメです。前半は逆転への前振りだし、スキルの披露は、“読者さんがスキルを自然と知る”狙いが込められています』

「まーた訳のわからんことを……」

 すこぶる呆れてますが、あなたはそれでいいのです。

「メグ、アンタ1塁にV型ロケット一式設置できる?」

「Huh?」

「シンイチを括り付けて、空から一気にホームインさせるのはどう?」

「ウケる。ばってんベース踏めんし、シンのパンケーキになるやん」

 そんな作戦会議の中、まい先輩と大宮くんは既にバッターボックスにいました。あの構え……バント? 大宮くん相手ピッチャーに頭を下げています。

「先輩にも見せ場あって欲しいんで、協力たのむわ」

 目を瞑りながら、恐る恐る突き出している先輩のバットに向かって、ピッチャーは上手に当ててくれました。

「⁽⁽٩(๑˃̶͈̀ ᗨ ˂̶͈́)۶⁾⁾ やったやった! 当たったー!」

「そこで踊んな! 走れ! チンタラ行くな! スプリントォ!」

「˚‧º·(˚ ˃̣̣̥⌓˂̣̣̥ )‧º·˚ まいちゃん、おっぱい大きいからあばれちゃうよぉ!」

「ケ ン カ 売 っ て ん の か !」(レイジメーター↑↑↑)

「人前で胸乳(むなち)如此(かくのごと)く滑らかすは、見苦しい限りぞ!」(レイジメーター↑↑↑)

 貧乳さんらが、露骨な嫉妬心をむき出しにします。カレンちゃんはMG42を取り出して、のぞみちゃんにニヤリとします。

「ケツに火ぃつけてやらね?」

(だく)

「やめろお前ら! フレンドだろ⁉︎」

『巨乳さんには優しいんだね?(オートミールおじさんの笑顔)』(レイジメーター↑↑↑)

「ち、ちが……!」

 塁を踏んだのを確認して、ピッチャーはファーストにゴロを投げました。

「⁽⁽٩(๑˃̶͈̀ ᗨ ˂̶͈́)۶⁾⁾ やったー! おーみやくーん!」

「キャーキャーうるせー! インカムしてんだから喚くな! 次ィ! メグ!」

 打順忘れてるの? のぞみちゃんに目配せすると、『さはれ』と頭を振りました。


先輩(しぇんぱい)んごつ手加減いらんばい、ちかっぱ投げてきんしゃい!」

 青い瞳を細め、ほくそ笑みます。お望み通り豪速球が投げられます。メグちゃんは、大リーガー並みの豪快なスイング! 早くもツーストライクに追い込まれましたが、焦っている様子は見えません。

 最後の一球! メグちゃん打った! 残念……打球はポンポン弾み、セカンドが中腰で構えています。ボールを取――(パァーン:残響音含む)。彼女のヘルメットが吹き飛んで、後ろにバッタリ倒れました。小早川さんのスコープ付きKar98kから硝煙が……。

「大丈夫、フラグはしてない」

 セカンドは上半身を起こし、穴の開いたヘルメットをしげしげと見ています。

先輩(しぇんぱい)何ば突っ立っとっと⁉︎ はよ走らんね!」

「(˚ ˃̣̣̥ω˂̣̣̥ ) えええ⁉︎」

 慌てて飛び出すも既に遅し。セカンドからボールを受けたショートが2塁にいて、おっぱいを揺らしながら来た先輩はタッチアウト。チーターズの脳内で、アウトコールが鳴り響きます。残念……。

「(இДஇ`゜) ふえええん!」

「アホじゃねーの! 乳に栄養が全部いって、頭空っぽじゃん!」

「怒鳴ってもアウトは取り消せねーよ」

「(๑ᵒ̴̶̷̥́ ^ ᵒ̴̶̷̣̥̀๑) おーみやくんだけがやさしいよぅ」

 そして、期待の選手である小早川さんがスッと立ち上がります。

「先輩。自分は長打狙うので、支援願います」

 そう素っ気なく言うと、返事も待たずに出ていきました。

「(๑°⌂°๑) ふぇ? うん。わかった」


 さあ、小早川さんがバッターボックスに立ちました。力まず自然体のフォームで、余裕を感じられます。表情もいつもと変わらず、ぼんやりピッチャーを見つめている。

 投げた! 打った! 狙い通り伸びていくけど……足りない? 残念、センターはフライを捉えました。ヒューンとコミカルな落下音は、ピンクのスツーカのサイレンにかき消されて……。

 あ、安心してください。降ってきたのは250kg爆弾ではなく、大量の硬式ボールでした。センターは一旦逃げ出したものの、すぐに落ち着きを取り戻します。大量のボールの中から、今使っているのを見つけ、送球。セーフ! 2塁と3塁まで進めました!


「よしチビ。わかってんな?」

「何をか」

 悪いそそのかしをプイと断ると、のぞみちゃんはさっさと出向きます。

「ちょっ! せっかくのチャン――」

「待て待て。あいつちゃんと空気を読むから安心しろ」

 身を乗り出すカレンちゃんの肩を掴んで抑えました。さすが大宮くん。従姉妹のことわかってるね。そういえばこの2人、性別の違いはあれど、顔の作りが似ていますね。

「メグ、ささみ。あのミジェット仕掛けるぞ。パンティ動かす準備!」

 あっと言う間にツーストライク。のぞみちゃん全く意に介しません。すると、ふとメグちゃんに流し目を送りました。ピッチャーがセットポジションに入ると、ポケットから何かを落とした⁉︎ ポンと爆発すると、あたりが噴煙に包まれます。スモークグレネードですか……。

 多分キャッチャーは、ボールから目を逸らしてしまったのでしょう。捕逸しました。その間、メグちゃんと小早川さんはホームイン。のぞみちゃん振り逃げで1塁へ。


【桜チーターズ:2 - 7:東ライオンズ】


 生還した2人とハイタッチ、カレンちゃんは小躍りして喜びを爆発させました。

「ブンダバー!」

「あんまり喜べねぇ」

 大宮くんがボソリと呟きますが、楽しければそれでいいのです。さて、私の番ですが……。


メニュー画面>交渉>東ライオンズ>提案>フォアボール>交渉成立

お知らせ【次のヒロインは出塁します:鹿島梢】


「2回もやると卑怯じゃね?」

『大丈夫、交渉だから問題ないよ』

 さてさて、1塁から実況ですね。打順は一周してまたカレンちゃんへ。

「っしゃ! 今度こそスタンドに叩き込んd――」

猶予(タイム)願わん」

 おっと、のぞみちゃん挙手?

「なんなのよっ! 人がせっかくぁwせdrftgyふじこlp」

 喚き散らす人を無視し、ベンチにてくてく歩いて来ます。

(めぐみ)どの、走者交代をば請い(さむらふ)

「What? なして?」

「……一寸(ちょっと)御耳を拝借」

 のんちゃんはメグちゃんに耳語囁きます。訝しげな表情は、徐々にニヤケ顔になってゆっくりと頷きます。

「Got it. Got it. よかよ」

 メグちゃんはそのまま2塁へ行きました。

「あのーソフトのテンポラ――」

「宮どの。此れ則ち、いかいか(ののし)る稚児の遊戯に他成りませぬ。(つぶさ)に理に、な拘泥(こだ)わりそ」

 姿勢正しく、ぴんと背筋を伸ばして座っていますが、言ってることは酷い……。

「チビッ! メグに何そs――」

嗚呼(をこ)者は黙せ。唯球見て弾くのみ注力せよ」

 と残してインカムを切りました。2塁メグちゃんは、Sd.Kfz.251輸送車を出現させ、兵員室(移動スポーンポイント)にバッター以外(私も)を強制スポーンさせます!

「Comeoooooon!」

「こっわ! (クルマ)ゲドンみたいな顔してる……」

 助手席の大宮くんが、ドライバーを見てポツリ。ピッチャーが投球した途端、全速発車。輸送車が気になったのか失投です! カレンちゃん打った!

『どうかロードフラグしませんように』

 車は全速力で3塁を踏み、砂塵を巻き上げながらクイックターン、ホームへ! ロードフラグされたくないキャッチャーは逃げ出します。ボールを受けたセカンドは、1塁カレンちゃんを抑止しようとしましたが、ダメでした。

「All, disembark!」

 メグちゃんの指示に従って、後部ハッチからゲーム的に降車(・・・・・・・)すると、ちょうどベースを踏むようになっていて、次々と得点が加算されていきます。


【桜チーターズ:8 - 7:東ライオンズ】


「‧˚₊*̥(* ⁰̷̴͈ᗜ⁰̷̴͈ )‧˚₊*̥ のんたんすごーい!」

()(ほまれ)にあらじ。恵どのこそ浴すべけれ」

「うんにゃ、ゾミーん策略とキャレンのおかげたい。グッジョブ!」

「真面目な顔して、貴女やるのね」

『よかったねー。逆転だよー!』

 のぞみちゃんを囲んで、キャーキャー祝福しました。本人は大したことをやったと思っておらず、もみくちゃにされて驚いています。

「……ちっとはやるじゃん」

 ボソッとイアホンから聞こえますが、顔がにやけてるよ? 本当は『ブンダバー!』って叫びたいのにね。


 さあ、バッターには我らが主人公の大宮くんが立っています。もうね、1塁走者がヒロインにあるまじき形相で睨めつけています。

「殺気を送るの止めないか?」

「そんなん送ってない」

 主人公なのに、運動能力も知力も並、特有スキルもないキャラですが、ここは一発欲しい所。ストライクが入ると、相手ベンチから拍手と声援が湧きます。

 実は先輩が、『内野に煙幕砲撃を要請しようか』と提案していました。目を潰せばゴロでも進塁できるからです。けど、大宮くんはあっさり断りました。私、こんな真面目な所が好きなんですけど、時々頑固さんになっちゃうんですよねぇ。

 ツーストライク。やはりゲームのようにはいきませんね……。最後、ピッチャー投げた! 打った!

「Oh my!」

 メグちゃんが、大げさなジェスチャーで頭を抱えた通り、ピッチャーゴロ。送球されアウト……。

 それだけでは終わりません! 守備はカレンちゃんにも襲い掛かります! 既にショートが2塁にいて、ボールが渡されます。挟殺するつもりです!

「終わりね」

 小早川さんが、ポツリ呟きました。


>Karen fly⏎


 うええええ! コンソール画面から“浮く”コマンドを使ったぁ⁉︎

「うははははぁ〜! ゲーマー舐めんな!」

 チーターズの誰もが絶句しています。流石にそれは反則なんじゃない? ライオンズのベンチからは、『チーター! チーターだ!』と非難が上がっています。

 するとカレンちゃんのすぐ横を、信じられない速度のボールが通過!

「うわっ! なんなのっ⁉︎」

 のぞみちゃんが、ピッチングマシーンを引っ張り出していたのです。

「おい何を……?」

「チーターの処罰でございます」

「味方だろ?」

「しからば()れに寛容になれと謂うか?」

「いや……」

 のぞみちゃんは、目を細めて妖しい微笑みを浮かべました。

(そもそも)(なんぞ)良き機会と思わず」

「同感だ。撃ちまくれ」

 ええー! 大宮くんが給弾し始めました!

「い゙っでぇ!!!」


Karen was fragged by Nozomi's pitching machine with Shinichi's assist.


「各々方、ひとところ不調法いたしました」

 カレンちゃんを撃墜してから、チームキラーはライオンズに向かって丁寧に頭を下げました。結局スリーアウトでチェンジ。


「なんなのよアンタァ!」

 蘇生した途端、のぞみちゃんに喰らいつきます。

囂々(ごうごう)とかまびすしい様限りなし。其れチートを起こし、故に(しょう)誅翦(ちゅうせん)しせり。さこそ覚えずは――」

「うっさい! 正式な試合じゃないからいいでしょ⁉︎」

 ちょっとのぞみちゃんを評価したかなと思ったら、また喧嘩です。栗色のボブヘアーが逆立つほど怒りに満ちて、このままではデスマッチ始まりそう……。

「落ち着け」

「アンタもアンタよ! 無様にアウトなって、アタシまで巻き添えにするしっ! てか、アンタのせいでチート使うハメになったじゃん! 責任取りなさいよ! もうアンタ戦力外通告! 退場よ退場!」


⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰

Kick Shinichi OMIYA?

⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰


Karen SAKURA : ☑︎YES ☐NO

Kozue KASHIMA : ☐YES ☑︎NO

Meagan R MAYER : ☑︎YES ☐NO

Nozomi TSUJI : ☐YES ☑︎NO

Sasami KOBAYAKAWA : ☑︎YES ☐NO






Mai TOKITA : ☑︎YES ☐NO


The vote has been passed!


⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰

KICKED Shinchi OMIYA.

⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰


「フハハハハー! 語り部すらやらねー無能は消えろっ!」


 気づくとメニュー画m……いや運動場の入り口に立っていた。語り部も鹿島から強制的に戻っている。酷すぎじゃね? 確かに俺の成績は無残だったが、キックまでしなくていいだろ? さて、どうする? このまま帰ると、今度は『勝手に帰った』と難癖つけられそうだ。

「(。☌ᴗ☌。) おーみやくん♥」

 振り返ると、先輩がニコニコしながら立っていた。

「あれ? 守備は?」

「(♡ơ ₃ơ) まい、野球もーいい」

「それまずいんじゃ?」

「(*´ヮ`)ノ のどかわいたー。ジュース買って待っていよーよ」

 聞いちゃいねー。けど、もう蚊帳の外だからな。自販機で7本買って待っていると、それほど間をおかず、罵り声が聞こえてきた。

「大体どっからあんなの持って来たの⁉︎ スッゲー痛かったんだからぁ!」

「櫻こそ物狂いとは言わめ。知性の(かけら)すら見当たず。やかましゅうて耳の毀ち落つるが如し」

「うっさいうっさい! “ちっとはやる”とか考えたのがバカだった! 全部、ぜ〜んぶアンタ――」

「あいや、ご覧あれ桜どの。垂乳女どのが、宮どのとちちくりおうて居りますぞ」

「あー!」

 カレンが目を三角にして、砂煙をあげてこちらに走って来た。そのまま有無を言わさずタコ殴りにされそう……。

「偽チチ! 勝手に抜けんなっ!」

「(♡ơ ₃ơ) だってあきたもーん。それにまいちゃん、天ねんでーす」

 いつの間にか組んでいた俺の腕をぐいっと、その“天然物”に押し付けた。

「〜〜〜〜〜〜〜」(レイジメーター↑↑↑↑↑)

 俺はこの話題に未だかつて触れた事がないし、また今後も触れるつもりもないが、カレンは相当コンプレックスを持っているな……。

「レイジメーター貯めすぎると頭やられるぞ、ホレ。これ飲んで落ち着け」

 ボトルを渡すと、ゲームアイテムのように一気飲みして消費しやがった。そして手の甲で口周りを拭う。

「……うま」

 残りのメンツもやって来た。労いの言葉と共にボトルを渡す。

「で? 結果は?」

「反則負けだって」

 鹿島が苦笑いしながら答えた。だろうな。

「あれは流石にいかんばい」

「身から出た錆ね」

 誰もカレンを擁護する奴はいなかった。そりゃそーだ。ゲーマーのみんなは、“正式な試合”だろうが“野良の試合”だろうが、絶対にマルチプレイヤーモードでチートやんなよ!

「だって――!」

 雌チーターがまた牙を剥き出しそうになったので、

「はいはい、これも飲んで落ち着け。2度とあんなことやんなよ?」

 と俺のボトルで、無理やり奴の口を塞いでしまった。


 後日談だが、俺らに“桜バッドカンパニー”とか“桜チーターズ”とかいう悪名が定着した。ひっそりと設立したので、正式な“eスポーツ同好会”という名称は誰も知らないからな。まあ、原因を作ったのは部長本人だ。俺は知らんよ。

次からはまた梢にフォーカスした話になります。大まかな方針しか考えていないので、ちょっと時間をもらいます。

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