【e2m12】チートはしていない
ごめんなさい、やっと書き終わりました。
「カレンとメグの奴、どこ行ったんだよ……これ暑いし重いしたまらんぞ」
防爆アーマーを着るよう言われた大宮くんが、インカム(全員こっそり装備)を通して不満を漏らします。しばらく試合は中断、みんなは守備位置でぼんやりとしていました。
今日の天気も快晴、そよ風が心地よく頰を触ります。つばめの楽しげな囀りが……エンジンとキャタピラ音にかき消されていきます。門が踏みにじられたかと思うと、ヘッツァーが全速力で乗り込んできました。
『リリーフカーかな?(すっとぼけ)』
戦車はそのままマウンドに直行。マズルブレーキは擲弾発射機になっており、先からボールが見えています。対面しているのは大宮くん……。
Shinichi was fragged by Meg’s tank gun.
「ブンダバー!」
車長がキューポラから出てきました。
「ダメやん。火薬減らしたばってん、シンの耐えられん」
「けど絶対打たれないでしょ? 次弾装填!」
「判定見てみ。ちかっぱ下げとるばってん、俯角ん足らん」
カウントボードの緑色が点灯していました。残念、また無益なフラグでしたね……。
「チッ。せっかくユニフォームと同じ色にしたのに……出オチじゃん!」
カレンちゃんは降車、メグちゃんは車両を脇に持っていきます。私は蘇生回復。
『大丈夫?』
「全然役に立たんわコレ!」
憤慨してヘルメットを外そうとしますが、重すぎてもがく他何もできません。
「モタモタすんなバカ! 早く脱いで!」
『インベントリーから外せば一発だよ』
試合再開です。現在ワンボール、ツーストライクです。それはそうと、カレンちゃんすごいね。全然フォームが崩れないし、球速も維持してる。ストレートしか投げれないのが残念だけど。
投げた! 打った! サードゴロ! メグちゃん取った! グローブ捨てた⁉︎ スプリングフィールドライフルの擲弾発射機にボール装着!
「Gotcha! サミー!」
1塁に発射ぁ! アウト、アウトです! やったー! けど小早川さん、捕球した手首すごく痛そう……。
「Phew, やーっと討ち取れたばい。キャレンのアイデアも悪くなかね」
さあ、この調子でアウトを取っていきましょう。けど、フラグはしないで欲しいな。
「おいピンク」
目線はしっかりと相手キャプテンに据えながら、ピッチャーは落ち着いた声で、まい先輩に呼びかけます。
「(´•ω•) なぁに?」
「わかってるよな?」
「(;-`д-´) そんなこと言われても、わからないよ」
「もー! こいつは強打者で、またスタンドに叩き込むつもりでしょ! だったらわかれ!」
セットポジションを崩し、レフトにワンワン吠え立てます。
『私や大宮くんじゃないから、以心伝心は難しいって』
「(*´-`) お空にポンポンするの?」
「今すぐ下令しろ。場所間違えんなよ」
投げた! キャプテン打った! 打球はまたグングン伸びていく! それを阻止するかのように、上空に88の色弾幕が一斉に張られます!
『破片にご注意下さい……あ、残念。ホームランです。やっぱ目標が小さすぎたね』
対空砲火は今や祝砲のように鳴り続いています。チーターズは脱力、更なる戦意落胆を被りながら、悠々と走っていくキャプテンを見送ります。
【桜チーターズ:0 - 5:東ライオンズ】
「ピンク!!!」
「˚‧º·(˚ ˃̣̣̥⌓˂̣̣̥ )‧º·˚ ちゃんと言う通りにしたもんっ!」
「マジ無能……ささみ、オートエイムとかで撃ち落とせる?」
「それは無理ね」
さて、今ランナーが1塁にいて、左バッターです。
「ピンク気をつけろ。あいつお前の方を見た。流すかもしれん」
「(๑°⌓°๑) ふえ? 何を流すの?」
「……なんもわかってないし」
「キャレン、ランナー来るけん先輩のバックアップできん」
「アタシがやる」
カレンちゃん投げた! 打った! ボールはレフトフライに! ボットが駆けつけましたが、ぼんやりと立っている先輩が進行の邪魔となっています。ボールは、その足元に落ちました。それを指さしながらニコニコしています。
「(๑❛⃘ᗜ ❛⃘)੭⁾⁾ まい大じょうぶだったよ!」
「誰も心配してねーよ! さっさとボットに渡せ!」
その間、ランナーは3塁に猛進中!
「ふひひ、悪魔ん花園になっとるばい。ちかっぱ危なかよ?」
なんと! 塁の周囲にはMの印字された小旗が至る所に!
『地雷にご注意ください』
ランナー跳躍! 見事に地雷を回避し塁を踏み、そのままホームに!
「What the hell?」
「(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭⁾⁾ えーい!」
先輩、ぎこちなく送球しました。けど全然距離が足りません。ボットに送球を任せればよかったのですが……。対応完了とばかりに定位置に戻っています。カレンちゃん、既にマウンドから援護に来ていました。捕球、パンツァーファウストの弾頭(火薬抜き、ボール用の凹み有り)に装着! バックホーム!
Shinichi was fragged by Karen’s Panzerfaust.
【桜チーターズ:0 - 6:東ライオンズ】
「バカァ!」
「妾已に興もさめ、こと苦うなりまする。櫻どの。常に直球のみ臨んで、常に打たるること限りないではないか。変わり球こそありなむ」
「投げ方知らん! どこに飛んでいくかも知らん!」
続けましょう。3塁にランナー、ワンアウトです。メグちゃんは、土嚢、竜の歯、ヘッジホッグ等の障害物を3塁線に設営済み。こんな茶番に付き合ってくれるライオンズの皆さんには、チーターズを代表して感謝します。
投げた! 打った! ライトのボットが反応。捕球アウト! 犠牲フライです。
3塁の走者は竜の歯を避け、土嚢を乗り越えています。塁には既に有刺鉄線が置かれ、後戻りできない模様。
「ヘイヘイ、ボール!」
受け取ったカレンちゃんは、やはりパンツァーファウストの弾頭(先と同じ仕様)にボール装着! 発射!
『あのぉ、ランナーは狙わないで下さい』
幸運にも外れましたが、走塁妨害により進塁が認められました。
【桜チーターズ:0 - 7:東ライオンズ】
「ちょおおお!」
「バカめ。イライラが頂点に達して、とうとう相手に仕掛けやがった。ガキの試合じゃねーか」
「まさに彼を稚児と言わずして、何と言いましょう」
その後、ピッチャーゴロであっけなくアウト。攻守交代です。多分ライオンズさんは、故障者を出したくないので、わざとそうしたのでしょう。いよいよチーターズは最後の攻撃になりますが、これ勝てるの……?
次で野球イベントは終わります。