【e2m9】烏合の衆
読みにくかったので、少しだけ地の文を追加しました。セリフは言葉や語調などからわかるだろうと思いますが、果たして。
『紳士淑女の読者さん、エピソード2のお馬鹿イベントへようこそ。東高等学校女子ソフトボール部“東ライオンズ”対、eスポーツ同好会……ねぇチーム名は?』
そういえば名前すら付いていなかったので、私はキャプテンに尋ねます。
「桜チーターズ!」
『の戦いが始まります。まあ、正統な者ととんだ笑い者の試合なんで、真っ当な展開は期待しないでください。私は、選手兼実況アナウンサー兼救護班の鹿島梢です。フレンドにも忘れ去られた、残念な癒し系ヒロインです』
「もうなんでもありだな」
ベンチの隅で、我らが主人公・大宮伸一くんが呟きます。
『はい。本来この人がフラグされない限り、私は語り部になりません。しかしっ! 私の扱いが余りにも酷いので、その役を剥奪しました』
「こずゑどの。已に櫻どのは、彼の方に立っておりますぞ」
『え? もうプレーボール? トップバッターのカレンちゃんは、素振りして、投手を睨めつけて……ねぇ、私ソフトのこと何も知らずに実況始めちゃったけど……どうしよう?』
「知るかよwww」
カキンと音がしたので目を戻すと、球はグラウンドを跳ねていきます。
「WOW! 凄さぁ! 初球打ち返しよった!」
「さすがストレングスとスタミナに全振りしてるヒロインだ」
「然れど智性チンパンにあらずや。代償は少なからじ」
『……すごい』
「実況さん、感心している暇ないっすよー。見えている物どんどん報告しないと、俺の中の人が混乱する」
『そだね。えーと、もうカレンちゃんは一塁にいます。ショートにヒット? でした……はい』
「次は誰? ローテーション決めてない」
左右を見ながら、小早川さんが尋ねました。残念、私たちって本当に行き当たりばったりです。カレンちゃんは既に出塁しているので、私が決めちゃいましょう。
『じゃあ、副部長で主人公の大宮くんで! がんばってね!』
「お、おう……」
ストライク→ストライク→ストライク→アウト
Shinchi was fragged by Karen's Panzerfaust!
「下 手 か お 前 !」
「ゴッシュ。シンの降ってきたばい、バリウケる♪」
ロケット弾に吹き飛ばされた大宮くんは、偶然にもベンチ前に落ちてきました。この場に及んでも、TKするのはやめてほしいなぁ……。
「次ィ! 早く打席に立てっ!」
『次は……コマンダーのまい先輩!』
「(˚ ˃̣̣̥⌓˂̣̣̥ ) え⁉︎ ヤダ! こわいよ」
「怖かて……なんしに来たん?」
「:;(∩´﹏`∩);: ボールこわい……」
「いてててて。先輩、ぶつけられることはないから大丈夫です」
「ピンク! 何やってんの⁉︎ さっさ行けぇい!」
一塁走者が野太い声で催促していますが、先輩にはどこ吹く風です。
「(*´◒`*) あ! いいこと思いついた! おーみやくん一しょに来て」
「もの知らぬこと、なのたまいそ」
「……いいですよ、行きましょう」
「٩(๑′∀ ‵๑)۶ ほんとっ! やった、行こ行こ!」
なんでしょうね……もうラブラブカップルのように手を繋います。しかものぞみちゃんに見せつけるように。そして案の定、この人は腹に据えかねています。
「このこともの狂ほし。下衆者離れ!」
「(*´罒`*) イヤッ!」
更に焚きつけるかのようにベッタリとひっつきあいました。大宮くんは呆れてなすがまま。
「御前は羿にあらずや。蓋ぞ一発して彼を撃たざる!」
「先輩は味方でしょう?」
バッターボックスに着くと、大宮くんがバットの持ち方からスイング、足の位置まで親切に教えています。
『あれ? また先輩がごね始めた? さしずめ「おーみやくん、そこ(反対のバッターボックス)にいてっ!」とでも言っているのしょうか?』
「ほなこつ立ったばい……なああん、もうシンは先輩ルートに決めたと? はやさー」
「違う。大宮、もう一度、球速を体感する」
なるほど、デレてるだけと呆れましたが、したたかですね。
『試合再か……ストライク! またレクチャーが始まりましたよ?(双眼鏡を出して唇を見る)「ピッチャーのボールが、手から離れる瞬間に振ってください」と言ってるんでしょうね』
「鹿島ぁ!!! お前の台詞運動場に筒抜け! マイクしてんの忘れんなっ!」
『ご、ごめん。さあ、第2きゅ……ざあああぁんねぇん』
「やっぱ無能じゃん、そのピンク!!!」
『一塁が目を三角にして野次っています。さあてツーストライクで追い詰められましたよ? どうするでしょうか?』
「笑止。何をかせん」
『(大宮のモノマネ)俺はもう半ばヤケになって先輩に――』
「だぁかぁらぁ! 勝手に俺の独白を読み取って、そこら中に流すんなっての(笑)!」
『だってぇそれが語り部だもぉん……』
「なああん。まともにプレーすんの馬鹿らしか」
「カオスね」
Shinichi was fragged by Mai's bat!
「ちょおぉーっ!!! 何やってんのポンコツ!」
先輩は確かにバットを振りましたが、面打ちになって、大宮くんの頭に直撃でした。
「ドク、また出番やん。Move!」
『え⁉︎ 救護と語り部って両立大変。ちょっと大宮くん休んでてくれない? 次はのぞみちゃんだよ』
「豎子どもに物を見せん。妾が以す所、刮目し給え」
『グラウンドに颯爽と出た辻さんには風格すらあった。一風吹くと、その美しい黒髪が舞うように揺れる。大宮くんこんな感じ? ってダウン中か……。バッターボックスに立つ彼女の目は鷹。鼠すら見逃しそうにない』
「ばってん、バット逆に持っとるやん」
「咄!」
「掛け声だけは無駄にいい」
「……なああん。もうツーストライク」
『敗れたとはいえ、その顔には凛々しさがあった。辻のぞみ、三振アウト』(スリーアウトチェンジ)
「ああああああ!」
「嗚呼、已んぬるかな。苟めに然らず」
『えー果たしてチーターズはどうなるでしょうか? 次回に続きますっ! 今回もご拝読ありがとうございました!』
「シンば起こさず終わってよかと?」