【e1m3】イントロムービー
続きです。本当はドンパチに入りたかったのですが、長すぎるので一旦ここで終了させることにしました。
後5分で授業が終わる。先生は、苦笑いをカレンに投げた。
「なぁ桜ぁ。次のグラマーまで行きt――」
「困りますっ!」
うわぁ、一喝しやがった……。一体何様なんだろう? ただ、クラスの連中も明らかに同調していた。皆そわそわしたり、時計を見たり、隣りと目配せしたりしている。既に教科書ノートを閉じている輩もいるぞ。先生は空気を読み、もはや聞く耳持たない生徒に教えるのは無意味、と悟ったようだ。
「はは……じゃあ区切りがいいので終わろうかな」
「それがいいです。さぁセンセー、職員室で事務作業なり教材研究なりしてください。さあどうぞっ!」
すっと立ったカレンは、先生の背中に手を回し、エスコートする形で追い出した。号令もなしかい。
「組一同、次の授業を楽しみにしてます」
心底思ってないことをよく言えるな。静かにドアを閉めると、全員の方を向くて、喚き叫ぶ。
「よっしゃ! 唐揚げパンウォーフェア、おっぱじめっぞぉぉお!」
クラスメイトは一斉に起立、各々カスタマイズした火器にマガジンを装填し、コッキングレバーを引いた。
「うわぁ……」
クローンソルジャーの蜂起を思い出したわ。クラス集団が戦闘集団になってんじゃん。いまだ座って呆れている俺を取り残し、一目散に駆け出していく。
「待てぇい!」
と制止するカレン。
「まずはミッションのイントロムービ見んのよっ!」
余りにもバカ過ぎて、俺は机に頭をぶつけた。カレンはプロジェクタースクリーンを力一杯下ろす。教卓の手前で、鹿島がパソコンとプロジェクターをせっせと設置している。
あのーせっかく定時前に切ったんだから、さっさと購買部に駆け込んで、それこそ買い占めればいいんじゃん。けど、ドンパチやる気満々の連中を前にして、そんなこと言うに言い出せない。もはやリターンマッチが目的になっているからな。
「設置終わったよ」
「シンイチィ! 刮目してよーく見ときなさいよぉ! それじゃスタート!」
某巨匠作曲家が手がけたような、壮大でアップテンポのBGMが流れ始めた。3Dモデリングされたウチの校章が、クルクルと回転し、その下に2-F SHINICHI OMIYAと表示。
「はぁ⁉︎」
俺が主人公扱いなんかい⁉︎ いやいやいやおかしいでしょカレンさん! どう考えてもアンタが事を起こしているのに、なぜ俺なんだよ! ミッション終了時に酷い最期を遂げるフラグじゃん!
そんな不満をよそに、スクリーンには、人工衛星から地球を捉えた映像が出て、徐々にズームインしつつ、我が校を真上から見下ろしている青写真に切り替わった。
桜 :唐揚げパンは、勝者によって食されるべきだ。
鹿島 :あんまりハメを外さないでね?
桜 :よく聞いて。我々は唐揚げパン買い占めのため、神速の殴り込みをかける! 知っての通り、購買部は南北校舎を接続する昇降口隣にあり、F組から40秒かかっちゃう。一方、A組は30秒を切る距離にある。つい先ほど、我がFカンパニーは、GとHと共にブルーフォーを組んだ。AからEは対戦勢力と認定。
鹿島 :オプフォーさんたち、私たちの動きを知っているの?
桜 :さあね。けど、こちらが予定通りに動けば負けないっしょ? ただ彼我戦力差はざっと6対10なので注意すること。正面切って殴り合うとジリ貧になるから。
鹿島 :他の人は?
カレン:他学年、教職員、事務員、用務員、保護者、その他来客はシビリアンと認定。誤射は絶対に許されない。加えて、職員室や校長室が連なる北校舎1階廊下は、進入禁止区域に指定。いい? これは道義と信念の戦いであり、決して卑劣な食欲のみに動かされる戦いじゃない。節度ある振る舞いを守って!
菅 :桜、聞こえるか? 今ゴルフは、北校舎3階の講義室にいる。授業終了後、予定通り売店に急行し、抵抗線を張る。拡声器で他学年を追い払いつつ、VIPワン到着までオプフォーを撃退、お金を渡したら、パッケージを台車に乗せ、北校舎2階の渡り廊下経由で撤収する。
桜 :フォックスはアルファとブラボーに分け、アルファはその渡り廊下で、ゴルフの援護に回りつつ、退路の確保を行う。回収班がパッケージを手に入れたら、援護しつつ撤収し、F組まで持ち帰ること。
鹿島 :ブラボーさんは?
桜 :F組の廊下で、売店に出るオプフォーを背中から討つ。ホテルの授業終了がかなり遅いとの報告あり。ブラボーと行動し、売店の前でゴルフと競り合う部隊を後ろから挟撃し撃滅する。通信終わりっ!
大変申し訳ないが、ムービーのテンポが速すぎて理解が追いつかなかった。カレンらの淀みない台詞、写真、図版、アニメーションなどが高速でコラージュし、頭から情報があぶれたからだ。最近のAAAシューターにありがちな演出だったが、俺はテキストをゆっくり読んで状況把握したいよ……。
ともかく、学校を巻き込んだ壮大な戦いが始まろうとしていた――主人公と担ぎ上げられてる俺は、全然やる気ないけど……。
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