【e6m47】『休息できません』
「キャハハハッ!!! マジマジィ⁉︎」
隣の席のクソ女が、馬鹿デカい声で笑うので、思わず目が覚めてしまった。チプカシを見ると、まだ5限目の休み時間。誰とも話さず、寝ては起きの繰り返しで、放課後まで過ごすのだ。油っぽい顔を手で拭う。あーマジでしんどい。なぜこう不運が立て続けに起こるんだ……。
「2年も経たずに壊れるか普通? ゴミじゃん」
かすれ声でひとりごちた。昨夜、ネットに必要な終端装置が、熱暴走で停止したのだ。通電すらしないので、もうお手上げである。サポートに連絡して、対応してもらったが――
『新品交換となりますが、現在品切れになっておりまして……』
こんな体たらく。つまり、俺はマルチプレーはおろかネットからも隔離されたわけだ。冗談じゃねぇ、ゴミ企業め。ろくに速度も出さずに高い金ぼったくりやがって。何がベストエフォートだ、詐欺じゃねーか。試合負けたのは、こいつらのせいだろマジで。
「アタシも行く行くぅ! キャハハハハハ!!!」
「……ハァ」
ため息が重い。加えてこの騒音……公害だろコレ。今度の席替えは、とんでもないハズレだったな。名前すら知らないし、知りたくもないこの女……頭おかしいのではないか? チラと横目で見ると、何かの弾みで目線が合ってしまった。
「!」
「……なんなのコイツ、キモ」
それは俺の台詞だバカ。キッと睨みつけた時、後ろから声をかけられた。
「あ、あの……大宮くん……」
「あ?」
「新しい保健だよりができたから渡しておくね……。私がなぞなぞを作っ――」
「んなモン、勝手に置いとけ!!!」
「っ⁉︎」
「バカかオメー⁉︎ 誰が好き好んで読むんだよ、そんなモン。ガキじゃあるめーし!」
「ご、ごめんなさい……」
俺はその女子からザラ紙を半ば奪い取ると、怒りに任せて丸めて捨てた。
「くだらねーことで話しかけんな!!!」
と怒鳴って、また机に臥した。そいつがどうなったか知らんが、小走りで逃げていったと思う。
「コイツやっば……暴れて逮捕されそう」
さっきのうるさい馬鹿女が、好き勝手言ってやがる。んなことするかバカ。虫ケラ以下のゴミどもを殴って何になるってんだ。
クラスの連中がドン引きする中、どす黒い感情が胸を渦巻き、気分が悪くなる。あーもうやめやめ。さっさとまた寝よう。幸運なことに、あの女もビビって鳴りを潜めてしまった。ザマァねえな。