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大宮伸一は桜カレンにフラグされた。  作者: 海堂ユンイッヒ
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【e1m19】聞き取り調査

ちょっと問題行動発生から対処までの流れを調べていました。

 職員室に入ると、俺と鹿島は別々に連行された。俺の法廷は応接室ですか……。校史が刻まれた記念碑や、優勝カップ・盾などが、ずらりならんで誇らしげだ。検察官は学年主任と担任。鹿島の対応は……体育教師がやるのか。

 ということは、やんごとなき上席の先生らは、まだカレンと共にいるのか? 連中が、金魚のフンだった俺を責めずして、鹿島に行くとは考えられんからな。

「失礼します……」

 シンとした部屋に、パイプ椅子が軋む音がやけに大きい。

「大宮くん、これから質問に正直に答えなさい」

 無表情の主任は、冷静且つ事務的に切り出した。彼は去年国語を担当した人だ。冗談が全く通用せず、生徒からあまり好かれていない。そして、俺はもとより正直に答えるつもりだ。彼女らと口裏を合わせていないので、嘘をついた所で破綻するのは火を見るより明らかだ。それを重ねて事を悪化させるつもりはない。

「昨日の2校時目終わりからの経過を話しなさい」

 言われた通り、事実のみを話した。思惑や感情は廃して、ただ事柄のみ。カレンを擁護することも非難することもしなかった。梅本先生は、既にびっしり書き込まれた生徒問題行動記録用紙に、俺の供述を加えていった。なるほど、問題行動対応マニュアルに従って、カレンの事情聴取の検証ですか。ということは、鹿島にも同じことが行われているな。あいつは別働隊だったが、全体把握をするためには好人物か。

「大宮君」

 一通り陳述し終わってから、主任がメモに目を落としながらポツリと言った。

「君も唐揚げパンが食べたかったのかね?」

 こんな張り詰めた状況で、唐揚げパンとか言われると吹き出しそうになる。

「どういう意味ですか?」

 探りを入れるために聞き返した。“食べたかった”とは、ウォーフェアを企画した、つまり俺がカレン同等の処分に相当するか否かを、推し量るためだろうか?

「いや……先ほど桜さんから聞いたが、君もすごく意欲的だった、と」

「…………」

 あぶねぇ、今一瞬精神フラグしかけたぞ! あのバカ適当に話繕っているのかよ! 心証が悪化するだけだろ! どうする? 俺さっきカレンを止めたと言ったんで、もう破綻しかけているぞ。視線を下に苦々しい顔をしていたので、梅本先生がじっと見ているのに気づくまで数秒かかった。そこに主任も催促してくる。

「大宮君?」

「ええ、正直言うと食べたかったです。けど、カ……桜さんのやり方は不味いと思って止めました」

 主任と梅本は側目を合わせた。

「ただ食べたかったのは、僕だけじゃくて、みんなそうだったと思います。F組とかG組とかは、売店から離れているんで、残り物しか買えないのは知っているでしょう? カレンは生徒総会でも訴えてましたし。だから、あんな形で不満が爆発したんだと思います」

 主任は口をへの字にした。

「では、次に昨日の掃除の時間について――」

 話がゲット&ランに移った。俺は同様に淡々と話すのみだった。

今回も読んでくれてありがとうございました。

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