【e6m42】ロマンスシーン即終了
「(人´∀`) いただきますっ!」
「……」
「( ੭||˙꒳˙)੭ どうしたの?」
俺の浮かない理由は2つ。1つは、昼休み終了まであと7分。目の前の十割そばとミニ天丼を、ゲームの如く一瞬で消費した挙句、フルスロットルで帰らなければ間に合わない。
もう1つは値段。大衆食堂のそば程度に考えていたが、ここはビバンガイドにも載った三つ星店で、安くはない……てか高い。それどころか、俺は財布を持ってきていない。
「先輩……俺財布忘れたっす」
「(ˊᗜˋ*) なんだ。元々まいがおごるつもりだったよ?」
「それはそれで、なんか……」
「ꉂꉂ(ˊᗜˋ*)ʬʬ じゃあ、プランBで行く?」
「あ? ねぇよンなもん」
「(ー̀֊ー́)✧ じゃあ、まいに1つ“かし”ね? それだと引け目ないよ?」
先輩って、どこかしたたかだよな。この借りってのが、後々フラグに――ってやめておこう。思えば思うほどでかい釣り針になって、致命的になりそうだ。
「わかりました、じゃあそれで。いただきます」
ゆっくりと完食・精算し、チプカシを見ると、とっくに授業は始まっていた。幸い、次の先生はおおらかで、頭下げるぐらいで許してくれそうではあったが。
「(*´◒`*) あ〜おいしかったね」
「ですね。ご馳走になりました」
「(*´ヮ`)ノ いいえ〜。あのね、このまま――」
「どこかに遊びに行こうってのはナシです」
「(;-`д-´)」
満腹で気が緩くなった先輩に釘を刺す。気持ちはわからないでもないが、さすがに欠課はやばい。
「(੭ ᐕ)੭ ちょっとぐらい大じょう夫だよ。まい、もう先生から何も言われないし。ね? ねぇ?」
「それは先輩だからです」
「(`ε´๑) ぶ〜もうデート終わりなんて、早すぎるモン。もっとお話ししたいのにぃ」
「いやいや、前のエピソードで十分イチャついたじゃないですか」
「٩(◦`꒳´◦)۶ 前は前、今は今だよ〜」
やばいぞ。先輩の空模様が怪しくなってきている。このままゴネると、また遊んでくれなきゃ大声あげるとか、無理やり遊びに行くとか言い出しかねん。それに、さっきの先輩への“借り”が頭をよぎった。それにつけ込まれては、どうしようもない。
「じゃ先輩……今からチューします。それでさっきの借りも帳消しでいいですか?」
「(´⊙ω⊙`)!!」
こんな真っ昼間から、何を熱上げているんだと、自分でもアホらしい。けどな、ぐずつく先輩に即効性があって、且つ後々のフラグに成りかねない“借り”を、今ここで回収するのは悪くないだろ?
駐車場へ向かう道端で止まり、先輩の肩を寄せ――
「先輩、今でも気持ちは変わっていないっす」
とクサ過ぎるセリフを選択し、軽く唇を奪う。すると先輩が呼応するように抱きついてくる。
「⁄(⁄ ⁄•⁄ω⁄•⁄ ⁄)⁄」
「はい終わりです。ロマンスシーン終わり。さあ帰りましょう」
「Σ(-᷅_-᷄๑) えっ⁉︎ なんかラブラブから遠くない? 事む的じゃない?」
「んなわけないです。さあさあ行きましょう」
「(¯꒳¯)℥」
微妙に納得していない先輩をせっつき、帰路を飛ばすのであった。よかった、無事に思惑通りに動いてくれた。俺の正面から車が一台通り過ぎたようだが、誰にも見られていないと思う。立ったフラグも見事な手腕で回収というわけだ。