【e6m41】のんたんに負けないよ
アメ車の4気筒エコモードで、こっそり学校を抜けるつもりが、うっかり8発で回してしまい、職員室内どころか北校舎中の職員に、外出を知らせた俺たち。そのまま逃げるように爆音鳴らし、近所の小さな蕎麦屋に到着した。
「……めっちゃ人並んでるじゃないですか。これ間に合いませんよ。弁当買って帰りません?」
「(*´ヮ`) おそばは回転りついいから、だいじょうぶだよ」
と、全く帰る気は露ほどもない常田先輩。そして列にいる最中、いつの間にかがっしりと俺の腕組んでいるし。
「(๑´∀`๑) えへへ。ひさしぶりのデートだね」
「はぁ……あ、そういえば辻さんの写真、わざわざありがとうございます。めっちゃ喜んでましたよ」
「(❍ʻ◡ʻ❍) いいえ〜」
あの裳着の日、先輩は記録係だった。帰宅後、彼女はパソコンで画像編集をし、プロ用プリンターとプロ用光沢紙で、A1サイズまで引き伸ばして印刷。力作の1枚なんかは、額縁に入れて贈ってきた。
本人は無論、めでまどふ叔父さん叔母さんも電話口で感謝を述べ、誇らしげに寝室に掲げている。そして、俺のスマホにも写真のデータを送ってくれた。先輩って撮影上手だな。辻さんの艶かしさを余す所なく切り取っている。
「( ¯꒳¯ ) それにしても、のんたんオンパレードだったね」
「え?」
「(`ェ´) これでもかと言うくらい、おーみやくんにアピールしてたよ。まいたちにも、これ見よがしに自まんしてたし」
「それ窺った見方じゃないです?」
「(`ェ´) あのね、も着は、配ぐ者が決まったか見こみのある場合に行われるんだよ? のんたん、このままおーみやくんを、かっさらうつもりだよ」
このまま黙って取られてたまるかと言わんばかりに、俺と組んでいる腕に力を込める。そういえば、先輩とはしょっちゅう触れ合っていたので、最近は全然ドギマギしないよな。
「(¯―¯ ) けどまい、のんたんに勝てるかな?」
「何も比較する必要は――」
「(´•ω•`) ううん。だっておーみやくん、のんたんのおどりに、すっっっっごくうっとりしてたでしょ?」
胸内に矢が刺さる。前のエピソードでは、熱にうなされたように先輩に夢中だったのに、それが引けば、ご覧の有り様だ。返す言葉もない。
「(´•ω•`) けど仕方ないよね。だってのんたんは、本当にきれいで、だれもがみりょうされてたから。それに、みんなの前でおどっていたけど、本当はおーみやくんのためだけにおどっていたんだよ」
『まさか、そんなわけ』と反論できなかった。なぜなら、あの日舞の最中、辻さんと目が何度も合ったから。
「(´•ω•`) まいわかるの。写真撮ってたから。と言うか、みんなわかってたと思う」
「……」
「ε-(´д`o) は〜まいったなー。よく考えたら、まい、のんたんに勝っている所、おっぱいぐらいしかないよ〜」
「まあ……おっぱいは全てを超越するからいいじゃないですか」
「₍ ⸝⸝› ̫‹⸝⸝₎っ¶」
「あの……そのマイクと録音機は?」
「ꉂꉂ(*ˊᗜˋ*) おっぱいは全てを超越する……確かに言ちもらいましたぁ」
「wwwwwwwww」
冗談半分で言ったつもりだが、早くも後悔した。この音声データ、ウェディング写真みたく、後の隠し玉として使われること必須だ。もう先輩の前で、軽々しく口をきくまい。