【e6m26】O2
俺は窓際に向かい、CTSサバイバルスーツを脱ぎ捨てた。もう変装はバレているので、こんな動きにくくて、暑苦しくて、視界も遮られるのは御免だ。とは言え、ここは無酸素状態。窓の外から、酸素を入る分だけ肺の中に押し込んだ。
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「いない⁉︎ 探せ探せ!」
「窓から逃げた?」
「ロッカーの中かもしれん」
CTSサバイバルスーツを着た動物警備員が、ドヤドヤと乗り込んで探索し始める。その後は、お決まりのように巡回警備を開始。俺は、しゃがんで机と机の間を縫うように行き来する。しかし、出入口に立っている奴がどうしても邪魔だ。しばらく待って観察するが、やっぱり奴は動きそうにない。
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何とかしないと、酸欠になってフラグだぞ。いい案はないか? 小早川氏のロッカーから回収したアイテムを確認するが、焦っているせいか何も閃かない。とりあえず落ち着け。差し当たり、教室を真っ暗にすれば連中の視界はなくなる……。暗闇……電気を消す……停電……ふとカレンから借りたヘアピンを思い出した。それを曲げて、パソコン机のコンセントに深く差し込む。
「!」
そこから火花が散り、暗闇が教室を覆う。巡回していた警備員が、何事と騒ぎ出す。
「おい、何やっている⁉︎」
「いや、何も……」
「いいから、早く電気を点けろ! くそ、フラッシュライトはスーツの中だ」
入り口に立っていた奴が、スイッチの所に向かった。オンオフに切り替えるが、ブレーカーごと落ちているので、しばらくは点かない。
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奴が途方に暮れて、頭を掻いている。俺はそいつの後ろをこっそり抜けた。そのまま、ドアをわずかに開け、身を横に捻り込んで外に出た。
「プファァ!」
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常田先輩のおっぱいによって、何度も無酸素フラグになっていたのせいか、俺の肺活量が増えた気がする。さて、俺の一難は去ったわけだが、カレンが気掛かりだ。まだあいつは職員室で徒競走しているのか。絶対自分一人じゃ解決できなさそうなので、助けてやらないと。