【e6m18】破壊
「知っているだろうが、再確認な? ユーザーインターフェイスの光源や音源のメーターには注意しろよ。例えば、暗闇が無い場合、光源である電源スイッチを切るか――」
「破壊する」
「ええ。そして、それは絶対にするなと言いたかった」
南校舎は電力を入れておらず、暗闇が辺りを包む。時折、動物警備員とすれ違うが、連中のフラッシュライトの外で、しゃがんでじっとしていれば見つからない。
「チッ、やっぱここにもいるじゃん」
階段の側から、2年の廊下を覗き込む。自分たちF組から明かりが漏れていた。スニークしながら扉前まで進む。中を覗くと、パンダ警備員が1人、机間巡視をしていた。
「どうやって誘き出そう?」
カレンは周囲を見渡す。ゲームの進行で、行き詰まったら周りを見ろという黄金律だ。給水機に目を付けた奴は、ヘルスを1回復して、それを思いっきり蹴っ飛ばす!
「ちょw 今、壊すなって言っただろ」
「うっさい。隠れろ」
奴に引っ張られる形で、階段の側まで引き下がる。案の定、!マークを頭上に浮かべたパンダ警備員が、スタンガンをバチバチ鳴らしながら、教室から出て来た。
「あ〜異常ありません。給水機が壊れたようです、交信終了」
と、水の止まらないその前に立つ。普通さ、そんな異変が起こると、近くに怪しい奴がいるんだよなぁ。パンダさんは、スタンガンを収めてしゃがみ込み、律儀にも給水機を修理し始めた。
「ねえ、やっていい? やっちゃっていい?」
目をキラキラさせながら、警備員を指さすカレン。いかにも後ろから羽交い締めにして、テイクダウンしろとばかりの無防備さだ。
「バカ、さっさとノート回収するぞ」
俺は開けっ放しの教室扉を目で示した。中に侵入して、難なくカレンのロッカーから同好会のノートパソコンを入手。速やかに脱出し、修理に手間取っているパンダの後ろをパスする。
「ささみ、回収完了。今起動して、校内ネットワークに接続した」
『確認。遠隔操作開始……校内ネットワークにはアクセスできるけど、だめね。そのパソコンでは、職員用ネットワークまで、入る権限がない。ファイヤウォールで蹴られている』
「次はそれを切ればいいわけね」
『問題は、正副2つある。職員室に向かって』
「了解」
とりあえずパソコン回収は、難なくクリアできたが、これからが厳重な警備が敷かれている北校舎に向かうことになった。それにしてもカレンの楽しそうな表情よ。危険伴うミッションだと、イキイキしてやがる。