【e6m13】及第(1)
そんなわけで、鹿島に事情を話すと、彼女は二つ返事で了承。放課後俺の家に集まり、3人一緒に試験勉強をすることになった。もちろん辻さんには願い出て、一時の暇を申し出ている。
しかしな、せっかく学年最優秀者の1人で、全国模試上位者が親身になって教えてくれるというのに、この度し難き愚か者ときたら――
「ダッッッッッッル」
この態である。
「ウチの学校の成績算出は、テスト7に対し平常点3ってのは知ってるな? テスト内訳は(中間+期末)÷2×0.7という式で弾き出し、平常点は0.3をかける。それら2つを足した結果が0~39の場合、評定は1となって、単位の習得は認められない、つまり留年だ」
カレンの中間テストの得点を参照すると……早くも絶望感が漂ってきた。
「終わったのを嘆いても、どうしようもないっしょ? アタシ平常点は、全教科満点取れてると思うから、後どんだけ期末取ればいいの? 計算してよ」
鹿島は慎み深いので、言葉にこそ出さないが、『平常点は、提出物と授業態度(他、実技テスト)なんだよ? 本当、カレンちゃんに付けるメディキットはないね』と閉口している。確かに、バカという基礎疾患は、どうしようもない。
「大丈夫大丈夫。仮に評定が1だったとしても、進級認定会議で校長センセが認定してくれたら、3年いけるって。そう教務内規に書いてあるし」
「流石経験者だな。時々、お前の“なんとかなるっしょ”精神には、見習うべきものがあるよ。俺がお前だったら、絶望しか感じない」
まあ、今の優しい校長先生だったら、おそらく留年はないだろう。けど、今年もそれに懸けようとするのが図々しいので、学年主任らに問題視されたのだ。
「とにかくやろうぜ。国語は後で秘蔵のチートツールを教えてやる。化学はホーキンス博士だろ、補習とか追試とか絶対やりたがらないし、課題は提出したから大丈夫(多分)。社会は担任だし、採点甘くつけてくれるだろ。保健体育は、こいつの数少ない得意分野だから1人でできる。芸術も丸暗記だからここでやる必要はない」
「つまり英語と数学だね」
「お前数学苦手だろ? 鹿島にしっかり教わっとけ。さもないとまた“タダーッ!”だぞ?」
「“タダーッ!”、マジダッッッル!」
試験勉強を始める前というのに、もうコイツは気が立ってやがる。及第点まで伸ばせるか、正直俺には自信がない。