【e6m6】朱紐
「もうやめましょうぜ、お奉行様。全て日の元に晒しました。もう夜だけど……」
「宮どの、小指をこち」
「なぜ?」
「四の五の申さず、ただ出されよ」
「嫌です。だってお前の手には、小刀が握られているから」
「さあらば首でも良い」
「小指でオナシャス」
白く細やかな柔手が、俺の手首を取ると、小刀を指先へわずかに入れた。小さく血溜まりが膨れ上がる。すると辻さんは、自分の小指にも同じように入れ、朱の露を置く。そして、自分の小指と俺の小指をしっかりと結んだ。血と血が混じり交わす。
「冀はくは、そもじが乳の山超えず、乳の川渡らず、紅の紐で妾が元に手繰り帰らんことを……」
目を瞑り、小さくまじないめいた呪文を唱えた。
『無理で〜すwwwwww 巨乳大ちゅきで〜すwwwwww』
巫山戯て、こんなこと言ったらどうなるだろう? 考えるだけでも背筋が凍る。
「はて面妖な…? そもじの指から、邪な念が流れ入る気がいたしまする……こはいかに?」
「き、き、気のせいだろ(汗)」
そうなんだよ。子どもの頃から、やけに勘が鋭いというか、俺の考えを見透かしてくるんだよ。鹿島とこいつを騙す自信はないね。
「あのぉ……そろそろ離して――」
「まな」
そういう辻さんは、ご機嫌麗しう様子だった。そんな中、指切りをしたのはホトトギス。突如暗闇の中美しく鳴いたので、彼女は縁側に出て、しばしその美声に聞き惚れていた。